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Digitalis※
拳を握り締め、視線を逸らして唇を閉ざし、熱を纏う身体をゆっくりと動かしていく。
双眸から逃れようと俯けば、すでに乱れている髪が額へと掛かり、淡い照らしによって鮮やかに色付いている。
火照る身を抑えられず、ふとした拍子に気だるげな息が漏れていき、自身は萎えることもなく解き放たれる時を待ちわびている。
これ以上ない程に無様で、情けない醜態を晒していながらも逃れられず、事を収めるには忠実に仕えるより他はない。
分かっている、そんなことはとうに分かっている。
だがあまりにも惨く、到底受け入れられないような事ばかりを求められ、覚悟を決めているはずなのに心が折れそうになる。
こんな事をするくらいなら、血反吐を吐き尽くすまで殴られたほうがマシであり、何故そうしてくれないのだと考えてしまう。
膝をつき、引き摺るようにして床を這い、手負いの獣は心の準備もままならぬままに距離を詰め、余裕を湛えている漸へと近付いていく。
容易く静まらない程度には、淫らな一人遊びによって追い詰められており、後もう一息で達せられるところまで昂っている。
それだけに思考は鈍り、考えなくてはいけない事柄が山程あるはずなのに、物欲しそうですらある表情を浮かべてか弱く呼吸を繰り返している。
違う、そんなはずはない、俺はこんな事を望んでいない。
幾度となく巡りつつも、虚しく響いては掻き消えていき、何一つとして場面が好転する要素にはなり得ない。
「別に逃げてもいいんだぜ……? まあ、そんな状態じゃ何処にも行けないだろうけど。いい加減ガキなんて見捨てちゃえば……? 別に守る必要もないんじゃねえの」
目前へ辿り着くと、柔らかな笑みを浮かべている漸に声を掛けられ、心の隙間に入り込んでくる。
我が身が可愛いだろう……?
枷にしかならないものなど捨て置いてしまえと、暗にそう告げられているような気がしてならず、灰我を突き放すなんて初めから頭にない。
件の少年ではなくても、それが誰であったとしても、守ろうと決めたからには覆すなんて有り得ない。
漸にとっては心を揺さぶるつもりで声を掛けたのだろうが、改めてなすべきことを見極める良い機会となり、無理矢理にでも腹を括って銀髪の青年を見上げる。
「テメエ……、いつか殺してやる……」
「いいよ。でも一人じゃ寂しいから、いつか一緒に死のうか」
「テメエと心中なんてごめんだっ……。消えるのはテメエだけでいい」
「残念。それで……? 結局は大人しく言い付けを守って、灰我君の為に尽くしてくれるってわけ?」
意思を殺し、両の膝をついて漸へと迫り、覚悟を決めても躊躇いがちに下腹部へ手を伸ばす。
「へェ……、お前ってつくづく馬鹿なんだ。それともやらしいことしたいだけ……? お前の秘密を知ったら、皆どんな反応するのかな」
「黙れっ……」
「はいはい、悪かったよ。頑張って俺をその気にさせてね。良く出来たらちゃんとご褒美あげるよ……」
「いらねえんだよ……」
「いつまでそう言ってられんのかな。まあ、精々楽しませろよ。早くしてくれない……? 待ってるんだけど」
反発していながらも、ベルトに手を掛けてから一向に進まず、促されても視線が泳いでしまう。
覚束無い手付きで外そうと試みるも、気が進まないだけになかなか解けず苦戦し、そこへ漸の片手が割って入ってくる。
すんなりと留め金を外し、ベルトを解いて前を寛げると、此処からはお前がやれと言わんばかりに彼の手が引いていく。
終わらぬ葛藤を捩じ伏せ、恐る恐る手を伸ばして下腹部へと触れ、気まずさに時おり視線を逸らしながらも少しずつ自身を外気へと晒す。
何をどうしたらいいのか分からず、戸惑いに暮れてまともに見ていられず、なかなかその先に進むことが出来ない。
「恥ずかしいの……? 顔赤いけど」
「うるせえよ……」
視線を注がれ、漸の手に頬を撫でられてから髪を弄ばれ、楽しそうに言葉を紡がれる。
じっとしていても仕方がない、やらない事には先へと進めず、忌まわしき彼との時間をいつまで経っても終えられない。
全てを振り払うように、程無くしてからゆっくりと顔を近付け、遠慮がちに舌を差し出していく。
「ん……」
息を漏らしつつ、慣れない行為にどうしたらいいのか分からないけれど、おずおずと自身へ舌を這わせていく。
指を絡めて緩やかに扱き、口付けを施しながら少しずつ淫らな熱を孕ませ、無心を心掛けて奉仕する。
「んぅっ……、ん、はぁっ」
「俺の言う事ちゃんと聞いてえらいね。こんな事までしてくれるなんて、本当にご立派なヘッド様だよなァ……」
「ん、んっ……」
視線を感じていながらも、とても見上げるなんて出来ず、漸の言葉を聞き流すように徹して奉仕し、一刻も早く終わらせるべく大人しく舌を這わせていく。
唾液が絡み、くちゅりと音を上げて自身へ纏わりつき、辿々しくも先端に舌先を滑らせる。
唇を重ねては舐め、手でも扱いていきながら彼をもてなし、ねっとりと唾液を絡めては愛撫を繰り返す。
そうしている間に髪を撫でられ、構うことなく漸の自身に舌を這わせて丹念に愛で、徐々に彼の其処が熱を孕んでいく。
口内へと誘い入れては舌を這わせ、淫らな音が鼓膜へとこびりついてもやめられず、ひたすらに愛撫を続ける。
「物欲しそうだね。舐めながら感じてるの……? 触ってないのに零れてきてる」
「んっ、あ……、はぁっ、ん……」
「しゃぶりながらおっ勃てて興奮してるなんて、俺のこと少しも責められないね。このまま舐めながらイク……?」
「あっ、はぁ……、やめ、んっ……」
「止まってる。ちゃんとご奉仕しろよ」
熱に感化されて思考が蕩けていくにつれ、己の下腹部もまた昂りを増してしまい、目敏く見破られて靴の爪先が自身へと触れてくる。
つう、と下から上へと刺激をもたらされるだけでたまらず、頭では拒んでいるはずなのに身体は求めて止まず、荒く息を吐いて堪えようとするも無駄である。
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