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Digitalis※
眉を寄せ、止めどなく涙を溢していながらも、悦楽を受け入れて頬を染める。
情欲を宿し、口元に手を添えていても何ら意味を成さず、普段の様相とはかけ離れた声を漏らしている。
堪えようとするだけ無駄であり、呼吸すらままならない程に攻め立てられ、ゆっくりと着実に自我を奪われていく。
「あ、あぁっ、う……、くっ、はぁ、はっ……」
鳴かされ過ぎて喉が嗄れ、掠れながらも何処と無く色艶を孕んでおり、誘っているかのように舌が見え隠れしている。
扇情的な身躯 を前に、漸は相変わらず微笑を湛えており、満足そうに見下ろしながら腰を進めている。
いやいやと、子供のように頭を振りながら抵抗を試みるも、取り合ってすらもらえずに自身をうずめられていく。
「あ、あぁっ、はいって……、く、るなっ、あ、んっ、くっ……」
「お前が嬉しそうに招き入れてくれてるんだけど……? ナキツのも、さぞや美味そうに呑み込んじまったんだろうなァ」
「ん、くっ……、はぁ、あっ、ちが……、ちがう……、あ、あぁっ」
「別にいいんだぜ……? 一度くらい、ナキツ君がいい思いしたって。もう随分と前からお前の事が好きだったんだろ? 大変だよなァ……、鈍いヘッド様に恋すると、気苦労が絶えなくて……」
玉のような汗を浮かべ、淡い照明の下で肢体を彩らせ、これ以上ない程に熱情を煽っている。
髪は乱れ、強き青年の姿は今や何処にも無く、凄絶な色香を放ってはだらしなく身を投げ出している。
均整の取れた体躯をくねらせ、ズズと腰を進められる度に色っぽく喘ぎ、もっと咥え込もうとふしだらに足が開いていく。
堕落しきった身体から目を背け、舌を見せて笑う漸もまた熱情を宿し、抗えるはずもない猛りを少しずつ押し進められている。
「ナキツに縋って、喘いで、滅茶苦茶にされた……? それとも優しく抱いてくれたのかな? なァ……、どんな風に乱れたの。アイツにもそんな蕩けた表情見せたんだろ」
「あ、あ、んっ……、ちがっ……、もう、や、め……あ、あぁっ、ぜ、んっ……」
「分かりきってるんだから、そろそろ白状しちゃえよ。いつまでも我慢しているなんて、本当に真宮ちゃんは自分をいじめるのが好きだよなァ……。事実であったとして、その程度で俺は怒ったりしないよ」
か弱くも、阻もうと伸ばされた手は脆くも絡め取られ、漸の掌が重ねられる。
そのまま敷布へと縫い付けられ、彼の体温を直に感じながら支配され、指を絡められて動かせない。
当初の目的すら翳り、どうして自分はこんなところに居るのだろうとぼんやり考え、耐えきれない現実に思考が逃避していく。
大切な誰かを、守ろうとしている。
このような真似をして、守ろうとしている。
こんな手に守られて、一体誰が笑ってくれる。
どんな顔をして会う、けがれた秘め事を背負いながら、後どれだけ信頼を裏切り、周囲を騙し、何事も無かったかのように一員であり続ける。
「あ、ぅっ……、だまれっ……、あ、あぁっ、も……、い、や……、いやだ、あ……、やだ……、やだっ、あっ、あぁっ」
「そんな顔……、誰にも見せちゃ駄目。駄目だぜ、真宮……。ナキツとも、誰とも……、二度とするな。分かったな、約束。破ったら酷いよ……?」
「はぁっ、あぁっ、ん……! や、ぁっ……、ま、た出ちゃ、あ、うっ……んんっ」
「いいよ。素直ないい子になってきたから、沢山甘やかしてあげる。這い上がる気も起きないくらいに溺れちまえよ。誰もお前を責めたりしない。苦しまなくていいんだよ」
毒だと分かっているはずなのに、虚ろな思考がその手を取ろうか迷っている。
身を守る術も無く、とうに心をも打ち砕かれ、全てを快楽の波へと浚わせて漸は微笑み、牙をへし折って掌握した現在をいたく満足そうに過ごしている。
慈しむような手付きで肌を擦り、最早自分しか見えていない現状にて組み敷いて、彼もまた掌握されている側であることにはまだ気付かずに、次第に互いの熱をただ素直に求めるようになっていく。
「あっ、ん、はぁっ……、あっ」
「真宮……」
「んっ……、あっ」
未だ繋がり合ったまま、静かに名を紡がれたかと思えば、前傾して顔を近付けてくる。
首筋へと舌を這わされ、何を言うこともなく丹念に舐めては、時おり軽く噛んで微かな刺激をもたらす。
「ん、んっ……、はぁ」
「首が感じやすいと不都合ない……?」
「あっ……、ん、べ、つに……」
「そっか」
ふ、と見えないところで微笑み、口付けながら緩やかに腰を動かし、先程までとは一転して激しさがなりを潜めている。
甘さすら湛えているような雰囲気で、ゆっくりとではあるが確実にいやらしい欲望を煽って、くちくちと下腹部からは繋がり合う音が漏れている。
ちゅ、ちゅ、とキスが下へと移動していき、胸元に達したかと思えば尖りを舐められ、次いで含まれて噛まれる。
「あっ……、う」
「乳首勃ってる。張り詰めてピンと尖ってんの。こんなところで感じちゃうなんて、真宮ちゃんたらホントいけない子。ほら……、自分でも触ってごらん」
「あっ……、んっ、はぁ、かたく……、はぁ、なって、る……」
「ん……、こんなに熟れちゃって、早く弄られたくてたまらないんだろ」
「はぁ、んっ、あぁっ……、あっ、じんじん、する……」
「暫くそうしてろよ。片方はやってあげるから」
優しげに声を掛けられ、此の身を抉るような言動が遠のいており、台詞の後にもう一方の乳首を指で摘まんでくる。
思考を遮られ、突如として甘やかな空気に包まれていながらも違和感すら無く、言い付けを守って胸の尖りを押し潰したりして刺激を与えていく。
指の腹で捏ねくり回したりして、熱っぽく吐息を溢れさせながら涙ぐみ、淡い快感に晒されて行為を止めようとも思わない。
「ん……、んぅっ、はぁ、あっ……」
「気持ちいい……?」
「はぁ、ん、あ、あぁ……、き、もちい……、もっと……、し、て……、あっ、あ……」
淫らな情欲にとろかされ、両の尖りへともたらされる甘い痺れは、悩ましい吐息となって唇から零れていく。
「此処だけでいいの……? こっちのほうが好きなんじゃない……?」
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