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Digitalis※

口元を傷付けても、相変わらず見目麗しい青年が目の前には居り、うっすらと汗を浮かべながら微笑んでいる。 白銀の髪を揺らし、熱を帯びているかのような視線を注がれ、いつまでも此の身を捉えて離そうとはしない。 着衣には殆ど乱れがなく、それでもいつの間にか上着を脱ぎ捨てており、シャツのボタンも幾つか外されている。 余裕を湛えていながらも、彼なりに幾らかは情欲を孕んでいるのだろうか。 真意は読み取れず、散らばる思考では最早何も考えられないけれど、得も言われぬ悦びに晒されて繋がりが深まっていく。 「はぁ、はっ、あ、あぁっ……」 喉元をさらけ出してのけ反れば、噛み付くように軽く歯を立てられ、次いで舌を晒して舐め上げてくる。 特有のざらつきにより、ねっとりと丹念に這わされていくだけでたまらず、涙で頬を濡らしながらふしだらな声を漏らしている。 「んっ、ん……、はぁ、あっ」 「可哀想に、また泣いちゃった。いつまでも抗ってないで、いい加減全て受け入れたら楽になれるのに」 「あっ……、やめ、耳……、舐めるの、や、あ、あぁっ……」 絶えず溢れようとする涙を掬われ、耳元で艶っぽく囁いてから舌を差し出され、耳朶を食んだり舐めたりしては刺激をもたらす。 何処も彼処も過敏に反応を示し、身体はとうに受け入れてしまっているものの、それでもまだ拒むような言葉を紡いでいる。 耳を嬲られ、やがて気が済んだのか彼が離れていき、再び欲を滴らせている自身を愛でてくる。 嫌でも受け入れさせてやるとばかりに、止めどなく悦楽をもたらしては溺れさせ、息をも出来ないくらいに攻め立ててくる。 泣いているかのような、弱々しくも甘美なる嬌声が零れ落ち、抑えきれなくても口元へと手を添える。 「ん、はぁ、あっ……、やめ、も……、出るっ、ん、うっ……」 「出しちゃえば……? そのほうが気持ちいいだろ。何を我慢する必要があるんだよ。さっきはあんなに素直に感じていたくせに、今更何を躊躇うの……?」 「あ、うっ、はぁ、あっ……、ちが、あ、ち、がうっ……」 「それ何度目……? 泣きながら悦んでるくせに、ホント強情な奴」 時おり目蓋を下ろしては、しどけなく唇を開いたまま吐息を漏らし、敷布をぎゅっと掴んで感じ入る。 とうに陥落していても、堕ちきれない心が立ちはだかって苦しく、どうしようもなく感じているのに逃げ出したくてたまらない。 今更投げ出されたところで、欲望に塗れた身体を持て余してしまうだけであるというのに、子供のようにいやいやと頭を振っては見え透いた嘘を繰り返している。 身体はもう、やめてほしいなんて僅かにも思っておらず、狂おしい程の快感を欲している。 いい加減に認めて、全てを委ねてしまえば一気に楽になれるのに、とうに拒みきれないのにまだ何処かで躊躇している。 「あ、あぁっ、う、あ、もう、も……、やめ、あぁっ」 「いつまでもそんな事ばかり言ってると、また痕付けちゃうよ……?」 「ん、はぁ、あ、いや……、いやだっ……、あ、あぁっ」 「それとも何……? またナキツにお仕置きされたいの? どうせ迫られたら拒みきれないんだろうなァ……。真宮ちゃんてばえっちだもんなァ……、拒むつもりもないんだろ」 「あっ、ちが……、おれは……、そ、なこと……、ん、はぁ、あ、なきつ……あっ」 「切なそうに他の男の名前呼ぶのやめてくれる……? お前アイツのこと好きなの?」 「う、あっ、ちがう……、ちがっ、あ、あいつ、は……、だいじ、な……、はぁ、なかま……あ、あっ」 「ヘェ……、そうなんだ。真宮ちゃんて、大事な仲間と寝るんだ。ナキツ以外とも関係持ってんの? お前の地位って、そういう事で築かれてるの?」 「あっ、く……、んっ、やめ、あ、あぁっ、そ、なこと、しな、い、あ、あぅっ、んっ……!」 「信じられないなァ……、真宮ちゃんは嘘つきだから。まあ、それは俺もおんなじだけど」 そう言ってからふっと微笑み、容赦無く腰を進めて悦楽を煽り、どれだけ制止されようとも構わずに追い立てていく。 拒む言葉すら紡げず、執拗に行き来されては中を擦られ、激しく揺さぶられてたまらず涙が零れる。 敷布を掴んでいた手を浚われ、未だうっすらと浮かんでいる痣を見つめられ、静かに漸が口付けをする。 手首を擦られ、じっくりと深く繋がりながら快感を煽られていた其処は、すっかり蕩けて漸を好んで受け入れている。 ぐちゅりとふしだらな奏では止まず、それがまた新たな快楽を呼び起こして止まらず、いじめられて泣いて身体が悦んでいる。 「あ、あっ、し、ない、はぁ、あっ……、しない……、はぁ、ん、おれ、はっ……」 「本当かなァ……。それなら嘘つきじゃない証拠を見せてよ」 「はぁ、あ、しょう、こ……あっ」 「今、嘘ついてるだろ……? こんなにダラダラ溢してるのに」 「あ、うっ……んんっ」 自身をゆると扱かれ、すでに先走りで濡れている其れは快感に酔いしれ、感じて仕方がない事をこれ以上ない程に証明している。 抗わず、躊躇わず、全てを受け入れて従順に溺れ、昇り詰めたらきっとたまらなく気持ちがいい。 とうに見透かされているのなら、今更もう何を隠そうとする必要があるのだろう。 自分は今嘘をついている、感じているのにそうではないふりをしていると、彼に指摘されてぼんやりと反芻し、更なる悦を求めて腰が揺らいでいく。 「あ、あぁっ、ん、んんっ……!」 「少しは素直になれたかな。ねぇ……、気持ちいいの……?」 「はっ、ん……、あ」 「真宮……」 「あっ……、はぁ、あっ……、い、い……」 「なんて……?」 「あぁっ、あっ……、き、もち、いいっ……、んっ、ぜんっ……」 「ちゃんと言えるじゃん。いい子だね」 「あ、あっ、も……、い、く、いっちゃ……、あ、あ、ぜ、ん……、ぜんっ」 「そんなに呼ばないでよ、照れるじゃん。俺としてるのに気持ちいいの……? 咥え込んで離してくれないね」 「ん、うっ……、あぁ、あっ、きもち、いっ……、なか、もっとこすって……、あ、はぁっ、ああぁ」

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