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孤高のカタルシス※
今にも崩れ落ちそうな身体を、快楽へと浚われながらも懸命に奮い立たせており、なけなしの気力を振り絞ってしがみついている。
それでも吐息には、気持ち良くて仕方がないという感情が織り交ぜられ、すでに後戻り出来ないところまで流されている。
抗い難い熱を孕み、控えめながらも媚びるような声を漏らし、眼前にて甘ったるく息づいている。
このような痴態を、一体誰が想像出来るだろう。
群れを統べているだけあり、拳を交える荒事には長けており、生半可な気持ちで挑もうものならまず確実に天を仰がされるだろう。
精神的にも、肉体的にも頑強で、窮地に陥っても決して怯まず、そして見捨てずに何ものにも躊躇わず手を差し伸べる。
優しく、慈愛に満ち溢れているからこそ、出会えば誰もが彼に惹かれていく。
「あっ……、はぁ、う」
「いつまで頑張るつもり……? 終わるまでこのままでいたいの?」
「はぁ、あ、ちが……、さっさと、終わらせろっ……、あっ、はぁ、あっ、んんっ……!」
「口の聞き方がなってねえなァ。おまけに態度も悪い」
「あ、あぁっ、や……、そ、な……、やめっ、なか、あ、あぁっ」
「付き合わされてるみてえに言ってるけど、コレは一体なんなんだよ。だらしなく涎 垂らしてるのバレてねえとでも思ってんの? 本当に嫌ならこんな風にならねえよな……?」
「はぁっ、あ、ちがっ……、あ、あ、やっ……、だ、め、だめだっ、あっ……、こえがっ……、あ、あぁっ」
「好きなんだろ……? さっきよりもいやらしい声が出てる。いい加減に認めちゃえよ。もっといい子になれるだろ……?」
「あ、あぁっ……、や、いやだ……、もう、も……、おまえなんかっ……、う、あぁっ」
ぐちぐちと、わざとらしく音を立てながら指を行き来させ、可愛いげのない言葉を並べている真宮へと仕置きする。
手荒に中を掻き混ぜると、先程まで懸命に堪えていた声が瞬時に溢れていき、嫌がりながらも明らかに感じて腰をくねらせている。
自身からは止めどなく涎を垂らし、触れてみるとしとどに溢れて伝い落ちており、ぬるりと激しく擦れば泣いているかのような声を漏らして悦ぶ。
「はぁ、は、あっ……、やめ、それは……」
「なあに……? お前が一番欲しがってるのはコレだろ」
「あっ、ちがう……、ちが、だめ、も……、こんな、ぜんっ、やめっ……、あ、あぁっ」
「このまま放り出したらお前どうするの? 何にもしないで収まるわけねえだろ……? 誰に続きしてもらおうと思ってんの」
「はぁ、そんな、こと……、思ってな、あぁっ、う……」
「じゃあ何……? 一人でするの? ああ、お前さァ……、玩具挿れられんのも好きそうだよね。今度やってみようか」
「あ、はぁ、うっ……、あ、や、やめ……、あ、あぁ、なか、はいって、ん、んんっ……!」
真宮が振り返り、熱っぽく潤んだ瞳を向けながら制止を試みるも、そのようなか弱き言動なんて何の枷にもならない。
欲情に塗れた表情をしておいて、今更投げ出されるほうが困るくせに、彼は弱々しくやめろと紡いでは縋るような視線を注いでいる。
誰も知らない、彼がこのようなことになっているなんて誰も。
「あ、あぁぁっ……、はぁ、くっ……、ん」
「嬉しそうな声出てる。欲しくてたまらなかったの……?」
「あっ、ちがう、て、いって……、あっ、や……、うごくの、やめ……」
「動かないでほしいの……? ずっと咥えてたいわけ?」
「ちが、あっ、う……、だめっ……、だれか、きたら……、はぁ、あっ」
「そんなの今更だろ? ここまできてやめれんの? 抜いていいわけ……?」
「あっ、やめ……、ぜん……」
「なに……? それはどっちのやめてなの」
腰を押さえ付け、つい先程まで美味そうに指を咥え込んでいた其処へと、ずぶずぶと自身を沈ませる。
快楽に蕩け、拒絶を紡いではいても何の効力もなく、自身から零れ落ちる白濁がやがて床へと触れる。
解れた其処は熱く、難なく受け入れては食らいつき、感じ入るように収縮しながら味わっている。
腰から脇腹へと指を滑らせ、後ろから胸元を弄ればひくりと身を震わせて応え、子供のように首を横に振りながら耐えている。
良いようにされて、今にも陥落してしまいそうな青年を前に、無意識に唇が笑みをかたどっていく。
ずり落ちそうな身体を必死に支え、熱量を呑み込みながら淫らに悶え、大事な存在であろう彼は泥沼の快楽に堕落しかけている。
何度も何度も繰り返し、穿たれる悦びを知ってしまった身体は容易には這い上がれず、こうして今も色艶を孕む吐息を延々と漏らしている。
呂律が回らず、辿々しく懇願するも聞き入れず、胸の尖りを乱暴に捏ね回せば途端にふしだらな声を溢れさせる。
「はぁ、は……、あ、あ、やめ、も……」
「お前はいつもそればっかり。思ってもいないくせにやめろ違うの繰り返し。そういうプレイなの? まあお前、激しくされるほうが好きだもんなァ」
「あ、あ、はぁ、んぅ……、ふっ」
「声我慢してるの……? 可愛いね。誰か来ちゃうかもね、どうしようか」
「はぁ、はっ……、あ、ん、ん……」
「真宮……」
「うっ……、や、舐め、あ、ぅ」
抱き寄せてから耳を舐めれば、過敏に反応を示され、乱れた息が鼓膜をくすぐってくる。
離れてから腰へと手を添え、一度ずるりと先まで引き抜いてから再び突き入れ、緩やかに打ち付けていくと目前の彼からはいじらしく耐える声が漏れていく。
あまりにも普段の姿からかけ離れている姿に、堪えようという気持ちすら起きないくらいに滅茶苦茶にしてやりたい衝動が湧いてくるのはどうしてだろう。
情欲に塗れさせて、泣かせて縋らせて、他に何も見えないくらいに支配してもまだ足りない。
全てを粉々に打ち砕いて、何もかもを失って、一人になってしまえばいいのに。
此の身にしか縋れない程に。
「はぁ、あっ……」
思いもよらない感情がちらついてハッとするも、振り払うように彼を攻め立てる。
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