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庇護者 2

「なんで嫌がるの? 僕のこと嫌い?」 「そういう事じゃなくてだな……」 「じゃあ、何? 教えてよ。嫌いじゃないならいいでしょ」 「う、う~ん……、どうすりゃいいんだ。とりあえず一旦落ち着こうぜ? な?」 「凌司くんが手を離してくれたらね!」 咄嗟に肩を押さえたまま、雛姫とは一定の距離を保っている。 しかし彼は、不満そうに口を尖らせており、恨めしそうに視線を注いで抗っている。 そんな顔されても今離すわけにはいかねえんだよなあ……。 苦笑いを浮かべるも、力を緩める事なく雛姫を押さえ、華奢な身体に腕を掴まれたところでビクともしない。 一体何がどうなっているのか、思考は混乱するばかりでまとまらず、目前の美少年が何を思ってこんな事をしているのかも分からない。 とにかく今は落ち着かせなければと躍起になるも、逆効果のような気にもなってますます手に負えなくなっていく。 「もしかして、付き合ってる人がいるとか?」 「いや、いねえけど……」 「なら、いいじゃん! 何も問題ない!」 「良くはねえような……」 「なんでなんでなんで~! 僕じゃ不満!? こう見えて上手いんだから!」 「いや……、なんつうか……、ほら……。まだ俺達会ったばっかりだし……。こういうのは……、良くないよな。うん」 「肌を合わせればもっとお互いの事が分かるようになるよ」 「う~ん……、逆効果だった……」 何とか気を逸らせようとするも、目の前の相手はなかなかに手強く、説得を試みても今のところ聞く耳を持たない。 「言ったよね? 凌司くんのこと好みだって」 「言ったっけ……」 「あ~! もう忘れてる! ひど~い! 冗談だと思ってたんでしょ」 「思うだろ、そりゃ」 「ホントにホントなんだから! さっきだって、すぐに助けに来てくれて嬉しかった!」 「それは……、当たり前のことだろ」 「会ったばっかとか関係ないよ。僕は君の事が気に入ったの。きっとそう思ってる人はいっぱいいるよね。だからのんびりなんてしてられない」 真摯に言葉を紡がれ、どんな顔をしたらいいのか分からなくなる。 それと同時に大事な事を思い出し、未だに雛姫の肩を押さえながらも居ても立ってもいられなくなってしまう。 「そういえば……、この部屋の会話って筒抜けだったよな……。俺とアイツだけか?」 「そうだよ」 「マジか……」 「流石にそんな遠くまでは聞こえないって。ていうか、漸くんに聞こえたら何か不都合な事でもあるの?」 「アイツに限った話じゃなくて、話してんの聞かれんのは嫌だろ」 「さっきまで僕のえっちな音声聞こうとしてたのになあ」 「うっ、それは……。仕方ねえだろ! お前を守る為だ」 「分かってるよ。可愛いんだから」 「からかうな。もう必要ねえから本体の電源切ったっていいだろ」 「そうだね。じゃあ、離してくれる? 凌司くん、何処にあるか分かんないでしょ」 にこりと微笑まれ、仕方がない事とはいえ気が進まなかったが、大人しく離れればアッサリと雛姫がベッドから降りていく。 他愛ない会話を漸に聞かれたところで、問題になるような事など何もない。 そう思ってはいるが、この焦燥感が何処から現れているのか分からない。 何に焦り、気遣って、不安を抱えているのか、自分でもずっと答えが見つからないでいる。 思い詰めている間に、ふと視線を向ければ雛姫が寝台の端へと腕を伸ばし、影から小型の機器を取り出している。 思い出したように衣服の物入れへと触れ、イヤホンを取り出してから耳に当てるも、雛姫が電源を切ってからは何も聞こえなかった。 「これで安心?」 「ああ……、ありがとな」 「じゃあ、これで心置きなく凌司くんの事を愛せるね」 「え……? いや、そろそろアイツ戻ってくるんじゃないか?」 「その時は、その時ってことで」 「ダメだろ! 考え直そうぜ……? よく見ろ。お前にいい事なんて一つもないぞ?」 「そんなのいいからさ。嫌なら僕の顔、力いっぱい殴ってよ。できる……?」

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