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庇護者 17※

どうしてこんな事に、とは思うも、それで彼を振り払えたなら苦労しない。 何処に本心が紛れ込んでいるのか、しかしそれは本当に漸の気持ちを表しているのか。 青年の言動から読み取るのは難しく、心情を掴ませる気があるのかすらも分からない。 「はぁっ……、いい加減にしろ」 「真宮ちゃんてば、口ばっかり。こんなに気持ち良さそうにしてるのに」 「う、くっ……」 「俺がこんなだから抵抗できねえの? いつからそんなに優しくなったんだっけ」 「そんな、気はねえっ……。誰がテメエなんかに優しくするかよ……」 「それでこそ真宮ちゃん。安心した」 耳元で甘やかに語り掛けられ、耳朶を食まれてから舌でねっとりと撫でられる。 それだけでまじないでも掛けられるかのように身体が熱を帯びていき、触れられる箇所がより過敏に刺激を追い求めていく。 「なァ、気持ちいい……?」 「う、るせえっ……」 「何それ、止めようとでもしてんの? それともそんな触り方じゃ物足りねえから自分でやるって?」 「あっ……、て、め」 「どうやって触るのが真宮ちゃんは気持ちいいんだっけ。前にも俺の前で見せてくれたよな……?」 自身を擦る手を掴むも、思うように力が入らず触れているだけに留まっていると、いつの間にか熱情を帯びた感触が伝わってきて動揺する。 手を重ねられて主導権を握られ、誘導するように自身を擦られながら、自らの指で快楽を強制的に引き出されていく。 「こんな事で遠慮するなんて、らしくねえよなァ。真宮ちゃん」 「ち、が……、誰が……、お、まえなんか……」 「別に、ほっといてくれて良かったのに」 背を向けている為に、彼の表情を窺う事が出来ず、今しがた紡がれた言葉の真意を読み解く事も難しい。 しかし快楽が押し寄せているせいで、僅かに心情を吐露されたように感じても、一瞬で甘やかな痺れと共に流されていってしまう。 傷を負った彼に遠慮しているなんて、そんな事はない。 けれども放っておけなかった事は真実で、漸を独りにしてはいけないような気がした。 「あっ……、はぁ」 「グチュグチュ言ってんの分かる? こんなにやらしかったっけ」 「はぁ、あっ……。満足かよ、これで……」 「お前は? ちゃんと自分の顔見たほうがいいんじゃねえの?」 理解が追いつかないうちに腕を引っ張られ、鏡の前に突如として晒された自分と目を合わせられる。 「趣味わりぃことしやがって……」 「これで少しは分かったんじゃねえの? 満更でもないって」 咄嗟に目を逸らすも、漸は楽しそうに耳元で笑みを零し、背後から抱き寄せる手がいやらしくぬるついた肌を撫でていく。 睨み付けようとしたところで身体を押され、よろめいて再び壁に手を付くも、鏡に全てを見透かされて窮地へと追い込まれる。 「優しい優しい真宮ちゃんは、俺にまで手を差し伸べてどうするつもりなのかな」 「あっ……、だから、俺はっ……」 「俺は、なに……? そんな事した覚えないって? まあ、お前は誰の事も放っておけないか」 反論を紡ごうとしても、甘ったるい声色にすり替えられそうで、言葉の代わりに弱々しく首を振る。 力ずくで押し退ければいいはずなのに、たったそれだけの事が出来ない。 自分の感情も分からなくなりながら、そうしている間にも自身は快感を引き摺り出され、淫らに溢れた白濁がとろとろと流れ落ちていく。 「相変わらず自分でやんねえの? 俺のこと少しも思い出さない?」 「わざわざお前の事なんて……、考えるわけ、ねえだろ……」 「そういう事じゃなくて、分かんねえかなァ。不意に過ることくらいあるだろ」 「んっ……、それなら……、お前はどうなんだ……」 「おかしいなァ。俺が聞いてるはずなのに、そんなに気になる?」 「そのまま返してやっただけだ……」 「ふうん、そっか。思い出すよ、お前のこと……」
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