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庇護者 23※

「ん……」 感触を確かめるようにじっくりと肌を撫で回され、甘やかな痺れが纏わり付いて離れない。 僅かな刺激に声が漏れ、今すぐ起き上がって殴り掛かろうと思うのに、貼り付いたように身体が重く動かない。 いつまでも快楽の波間を漂いたい気持ちが、まっとうな思考を奪いながら心身へとのし掛かり、抵抗力を徐々に奪っていく。 甘美な劣情が理性を浸食し、してやられた己を悔やんでも時すでに遅く、悩ましい熱情が絶え間なく湧いてくる。 「必死に抵抗する真宮ちゃんていいよね。可愛くて」 「あっ……ふ、ざけんな、テメ……」 「ここまできてさァ、気力でどうにかなるとでも思ってんの? 吐き出さなきゃいつまでも納まんねえ事くらい、鈍いお前だって分かるだろ?」 「ンなこと……」 分かってはいるが、彼の思惑通りに従属する現実に耐えられない。 「あっ……、うぅっ」 「スゲェ敏感。ちょっと触っただけでイキそうになった? 楽しませてくれるよなァ、真宮ちゃんは」 「はぁ……、やめ……」 「いつでも逃げられる隙は与えてやってるつもりなんだけど、それを選ばねえのはお前だろ?」 「あ、あぁっ……」 「ほら、どうすんの? お前が決めろよ」 投げ掛けられる言葉が、繭へと包まれるようにくぐもって聞こえ、熱情に流されていく。 抗っているつもりでも、彼にとっては何てことなく、漸の思うがままに身体を蹂躙される。 自身を乱暴に扱かれ、汗ばんだ太股へと這う舌のざらつきが心地好く、熱に支配されゆく視界は何処か遠くの景色を映しているように思えてしまう。 混濁する意識の狭間で、太股に口付けていた彼が下腹部に顔をうずめ、程なくして強烈な快感が大波となって襲い掛かってくる。 「あっ、あぁぁっ……う」 それはあまりにも凶悪で抗い難く、彼の口で愛撫されている事実から逃れたいのに、身体はこの上ない快楽とばかりに受け入れている。 なけなしの力で身を捩っても離れる事は叶わず、彷徨う手が頭部に触れて髪を掴むも、大した抵抗も出来ないままにずるずると淫らな痺れに負けて落ちていく。 「あっ……、やめ……、やめ、ろ……」 やっとの想いで吐露するも、すんなりと言う事を聞いてくれるような男ではない。 寧ろもっと深く自身を包まれ、生暖かい空気に触れるだけでも高揚し、唾液が纏わり付いて淫らな音が情欲を刺激する。 縋り付くように彷徨う手が彼を捉えても、白銀の男は構う事なく此の身を弄び、着実に死地へと追い詰めていく。 「く、うぅっ……、はぁ、あ」 「コレ、あっつくなってる。あんなにイッたのに、まァだ足りねえの?」 「あっ……、しゃ、べるな……」 「そんな冷たいこと言われたら傷付くな。こんなに慰めてるのに」 「あっ、あぁっ……」 「しゃぶってるだけでコレかァ……。素質あり過ぎでしょ、真宮ちゃん。おくすりと相性いいんじゃねえの?」 反論したくても許されず、耳を塞ぎたくなるような声ばかりが溢れ、それなのに身体は淫らな快感を延々と求めている。 魘されるように首を振って抗うも、青年からもたらされる行為に魅了され、快楽で思わず腰が動いてしまう。 泥沼に嵌まるような絶望感を味わいながらも、引き摺り込まれる快感が思考を麻痺させ、何もかも手放したくなるような欲望で満たしていく。 苦しくて仕方がなく、何とか抗おうと無我夢中な手が漸の頬の傷口を引っ掻いて血を滴らせても、それを悟る事もなく夢うつつのような狭間で淫らな声を漏らす。 息も絶え絶えで、ふとした瞬間に転げ落ちてしまいそうで、そんな自分を必死に繋ぎ止めている。 「いって。せっかく血ィ止まったのに」 「はぁっ……、は……」 「お前のせいで血が出ちゃった。どうしてくれんの?」 咎めるような言葉を並べるも、彼の声音は穏やかなままであり、愛撫を再開して情欲を煽っていく。 しかしそれだけで動きを止めるには十分で、頬から血を滲ませる漸と目が合い、するりと手が顔から離れてしまう。
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