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庇護者 24※
「あ……」
自分は今、どんな表情をしているのだろう。
様々な感情がせめぎ合い、怒りや罪悪感が渦を巻き、どれが本当の気持ちか分からない。
枕に凭れながら上体を起こし、頬から血を滲ませる漸を見て、目の前が暗くなるような衝撃を受ける。
気にするような間柄でもないというのに、傷付けたという現実だけが頭にこびりついて離れない。
「なんで急に大人しくなってんの?」
「うっ……」
「まさかたったこれだけの事で気に病んでんの? そんなつもりなかったのにって?」
「あっ……、はぁ、う」
「真宮ちゃん、いつの間にそんなに優しくなっちゃったの? 俺の顔ぶん殴ったの、もう忘れちゃった?」
「うっ……、く」
漸が喋っている間にも、彼の手によって自身を追い立てられ、乱暴に扱かれる度に溢れ出す白濁が淫猥な音を響かせる。
歯を食い縛って耐え忍んでも、零れ出る吐息と共に上擦った声が溢れ、とても我慢出来るような快感ではない。
触れられる程に快楽が増し、貪欲な身体は際限なく悦楽を求め、終わりが見えないくらいに猛々しく享楽へと沈んでいく。
すんでのところで堪えながらも、昂ぶる肉体はどうしようもなく刺激を待ち焦がれ、鎮める術をこの手は持っていない。
「俺のこと少しは気に入ってくれたとか?」
「あっ……、誰が、テメエなん、か……」
「そういうこと言う元気はあるんだ。てことは、無意識にあんな顔してたってこと?」
「あぁっ、う……」
「そっちのほうが重症な気がするよな。お前にはまだ難しいか」
言葉を紡がれても頭の中でまとまらず、それどころではない理性が懸命に足掻くも、舌先で嬲られる自身は快楽へと酔いしれていく。
幾重にも皺を刻みながら敷布を掴み、どうしようもないと頭では分かっていても彼の好きにはさせられず、苦しみもがきながらも着実に劣情は増している。
「あっ……、やめ」
「暴れたらダメだって、さっき身をもって知ったんだろ? 大人しくしなきゃ」
「うっ……、ふ、ざけんな……あ、あぁっ」
「なァ、分かる? 中がうねってんの。物欲しそうに吸い付いて離れない」
「あっ……、はぁ、あ」
内部へと指を押し込まれ、無遠慮に掻き混ぜられているというのに、悦ぶかのように自身からは淫らな蜜が溢れていく。
縋るように掴んだ枕へと顔をうずめるも、言葉を封じられた代わりにいやらしい声ばかりが溢れ、息も絶え絶えな中で熱情は果てしなく募る。
汗ばんだ身体はこの上ない劣情を宿し、掠めるだけでも狂おしい程の刺激となり、絶望にひれ伏しそうになりながらも高揚感だけは途切れずに此の身を苛んでいく。
「真宮……」
甘く囁くように名を紡がれるも、そこにどんな感情が含まれているのかは分からない。
太股に口付け、彼の指が再び内部を行き交い、待ち焦がれるような快感を植え付けていきながら、ぐちゅぐちゅと音を立てて淫猥に中を拡げていく。
咎める余裕もなく、夢うつつを彷徨うような感覚を味わい、ぼんやりとした頭の中にいやらしい音がこびりついて離れない。
それは更なる刺激を求め、満たされるのを今か今かと待っているような心地であり、いけない事だと説得を試みる己の思考さえ塞がれる。
何が真実で、正解で、従うべき事かが徐々に分からなくなり、あるのは抗い難き強烈な欲望だけであり、他に手に取るべきものなど見つからない。
「手ェ出さなきゃ良かったのにな」
「あっ……、うぅ、ん」
何に対してなのか分からぬまま、彼の言葉が脳裏を掠める。
そうして内部へと侵入してきた存在に息が詰まり、すぐにも狂おしい程の熱情が身体中を駆け巡る。
感覚は鋭敏になるも、対照的に思考は鈍っていき、繋がり合うそこからもたらされる快感に酔いしれ、それだけで自身が果てへと昂ぶっていく。
どうしようもなく背徳的で、救いようがない程に気持ちが良く、手放すにはあまりにも惜しい多幸感がのし掛かる。
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