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庇護者 30※

「自分で何言ったか分かってる……?」 ぼやけた視界に、形の良い唇が映り込む。 何事か話しているが、言葉として理解する前に鼓膜を通り過ぎていく。 現実味を帯びず、感覚が薄れ、全てが遠い出来事であるかのように思考力を鈍らせる。 それでも、強烈な快感だけがいつまでも残っていて、奥を穿たれる度に狂おしい程の快楽でおかしくなりそうになる。 「あっ……、う、なに、が……」 「やっぱ、分かってねえんだ。重症だな」 「はぁ、あ、あぁっ、ちが……、なに、も、おれは……」 「こんなになっても、まだごまかそうなんて頭が回るんだ。悪い奴だよなァ、真宮ちゃんは」 頬を擦られるだけで、電流のように甘やかな痺れが駆け抜ける。 頭の片隅では逃れなければと思うのに、身体はどっぷりと情欲に嵌まって抜け出せない。 触れられる箇所が何処も彼処も気持ち良くて、抗う意思などとっくにねじ伏せられている。 普段の取り澄ました姿からはかけ離れた様相にも当てられ、欲望をぶつけられて憤らなければいけないのに身体は大人しく快楽に打ち震えている。 「あ、あぁ、ん、んんっ……」 「真宮ちゃんは、乳首弄られんのも大好きだもんな」 「あ、はぁっ、は……、い、い……」 胸元の尖りを捏ね回され、爪で引っ掻かれる度に、得も言われぬ快楽が込み上げる。 だらしなく開かれた唇から唾液を零しながら、堪えようもない熱情が溢れ出し、快感を吐露する度に爆発的に感度が増していく。 理性の箍が外れ、間近に迫った青年から口付けをされる事で、いよいよ後戻りの出来ない縁へと叩き落とされる。 舌を何度も絡み付かせ、触れ合う度に下腹部が疼き、奥を貫かれる快楽に支配される。 どうしようもない熱を抱き、幾度となく求められながら、いつしかそれに応えてしまっている浅はかな自分にも気が付けない。 「あ、はぁ、また……、また、でる……」 「真宮ちゃんてば、何度目? そんなに俺とえっちすんの気持ちいい?」 「あ、あぁ、い……、気持ちい……」 「素直に言えるじゃん。いい子だね」 「ん、んんっ……」 首筋に口付けを降らされ、それだけでまた抱えきれない程の快楽が駆け巡る。 「俺もイキそ……。全部出していい? 真宮ちゃんの腹ン中」 「はぁ、あっ……、い……、ちくび、や、め……」 「やなの? 気持ちいいくせに」 「い、いから、もうっ……、や、め、あ、あぁっ」 無遠慮に胸を掴まれ、乳頭を嬲るように舌で舐め上げられる。 それだけで自身から零れる白濁が増し、達したかのようにひくつきながら快感に翻弄される。 やがて内部に熱情をたっぷりと注ぎ込まれ、それすらも最早新たな劣情を生み出す切欠にしかならず、どうしようもなく堕ちていくと分かっていても止められない。 何処までも果てしなく沈み込んで、どうしてか彼の背に腕を回す。 好意も、敵意すらも感じられない心地の中で、自分が今どういう気持ちで漸と向き合っているのかが分からない。 「あ、あぁっ……」 僅かな身震いと共に白濁が吐き出され、甘ったるく強烈な余韻にのし掛かられて身体が動かない。 朧気な視界に映り込む青年が、どのような表情を浮かべているのかも不明だが、こちらをじっと見つめている事だけは感じ取れる。 「あ……、ぜん……」 知らず知らずのうちに伸ばしていた手に、頬の温もりが触れる。 手を重ねられたように感じるも、曖昧な視界に映り込む光景が夢か現実かも分からない。 「馬鹿だよな、お前……。それに当てられてる俺も同類か」 微かに聞こえてきた声も、遠のいていく意識と共に流されていき、甘ったるい余韻に包まれたまま全身から力が抜けていく。 するりと落ちた手を追い掛けるように敷布へと縫い付けられ、首筋に触れた唇に甘やかな痺れが湧き上がる。 それはどうしようもなく心地好く、抗いがたい甘美な一時であった。

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