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儚き星々 7

三人の男に取り囲まれ、じりじりと間合いを詰められながら、機会を窺われている。 前方を見つめ、左右の気配に細心の注意を払い、緊迫した空気が漂う。 一方では、芦谷が二井谷と交戦しており、一進一退の攻防を続けていく最中で時おり声が聞こえてくる。 「へえ。やるなあ、兄ちゃん。てっきり身の程知らずが引っ込み付かなくなっただけだと思ってたぜ」 「よく喋る奴だな。俺もてっきり、秒で片付くかと思ってた」 「それにしてもお前……、何処かで会った事あるか?」 「お前みてえなろくでもない知り合いはいねえよ。人違いだろ」 「酷ェこと言うよなぁ。まあ、でも確かにな。勘違いかもしれねえわ」 誰を思い浮かべているのか、二井谷が気に掛かる事を口にする。 しかし芦谷は、気に留める事もなく受け流し、二井谷も深追いせずに切り替えていく。 そうして再び戦いの火蓋が切られたところで、間合いを取っていた彼等も次々に襲い掛かってくる。 「お前達は一体、なんだ!? 彼女に何の因縁があって……!」 迫り来る輩に声を掛けるも、応じる者は一人もいない。 一言も発さず、任務を遂行するべく立ちはだかり、情に訴えたところできっと響かない。 素早い拳を躱せば、息つく間もなく追撃が走り、防戦一方で動きを封じられる。 一人一人の戦闘力が高く、前方だけに気を取られるわけにはいかないので、辺りを警戒すればする程に注意力が散漫になる。 足払いに気付いて避けるも、待ち構えていたように顔面へと拳が迫り、避けられないと悟って咄嗟に掌で受け止める。 一撃は避けられたものの、それで生じた隙を突かれて腹部に衝撃が走り、呻き声と同時に前のめりになってしまう。 痛みに藻掻く暇はなく、腹部に打撃を与えた者が前傾姿勢で突進し、腰に腕を回して動きを封じてくる。 振り解こうとしても叶わず、背中を殴打するも引き剥がせず、そうこうしているうちに羽交い締めにされてハッとする。 目前に意識を奪われている間に背後を取られ、しまったと思っても迫り来る拳を躱す手段はなく、まともに一撃を喰らってビリビリとした衝撃が駆け抜けていく。 「ナキツ!」 声が聞こえるも、芦谷へと顔を向ける余裕はなく、身体を動かそうと足掻いている間にもう一発頬へと重たい衝撃をぶつけられる。 意識が揺らぎ、視界の端にもう一撃喰らわせんと構える様子を捉え、渾身の力を込めて前から覆い被さる輩へと膝を叩き入れる。 そうして背後に頭突きを叩き込み、両者の拘束が緩んだところで押し退けると、繰り出された一撃をすんでのところで躱しながら何とか脱する。 前方を見遣れば、由布は未だ人質の側で佇んでおり、三者は再び間合いを取りながら取り囲んでいく。 動きを封じられたら終わりだと身構え、動向を窺っていると、一人が刃物を携えて突進する。 双方から邪魔はさせないとばかりに二人が襲い掛かり、そちらに気を取られている間に刃との距離が狭まっていく。 「く……!」 避けられない、と思った時に影が立ちはだかり、迫り来る男の動向が見えなくなる。 次いで取り落とした刃物が地面に転がる音が聞こえ、殴り付けられた輩が体勢を崩してよろめく。 「お前……」 思わぬ出来事に敵対者の二人が離れ、目前にて背を向ける男をまじまじと見つめる。 「探したぞ、ナキツ。随分と手こずっているな」 「ヒズル……。どうして、お前が此処に……」 援軍、と言って良いものか分からぬ存在が目の前に居り、複雑な表情を浮かべてしまう。 どうしてこんなところに、とは思うも、今の状況では素直に喜べないものの有り難い気持ちが多少なりともある。 「お前のところに行くと言っただろう」 「許可した覚えはない」 「そうか。少しはマシになると思うが」 現に助けられたのだが、素直にありがとうとはとても言えず、口を開くも言葉に迷って時が過ぎていく。

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