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儚き星々 14

ジャリ、と地を踏み締める音が鳴り、人気の無い薄暗い道を三人で歩いていく。 脅威は去ったが、気を緩めればまた彼等が目の前に現れそうで、周囲の警戒を怠らずに神経を研ぎ澄ませる。 「それにしても、酷い目に遭いましたね。大丈夫ですか? 怪我をしているようですし、早く手当てしないと」 「アタシは平気。それよりも……、はぐれた仲間の事が気になる」 「仲間……? 一緒に行動していた人がいるんですか」 ずっと一人で逃げているようだったが、どうやら行動を共にしていた仲間がいるらしい。 「アタシと一緒に逃げてくれた奴が一人いるの」 「此処には、その人と一緒に?」 「だいぶ前にはぐれちゃって……、というより、彼のお陰でアタシは逃げられたの」 「はぐれた場所は覚えていますか?」 「分からない……。さっきの奴等に山の中まで連れて行かれて、逃がしてくれた奴っていうのも、元はそいつらの仲間だったんだよね」 通り抜けていく風を、いつもよりも冷たく感じる。 まばらに続く足音を耳にしながら、元来た道を三人で戻り、次第に街の灯が遠くに見えてくる。 彼女は、一人ではなかった。 共に逃れようと足掻いていた仲間が居て、彼女を逃がす為に自らを囮にしたのだろうか。 「彼等を裏切って、貴女を逃がしてくれようとしたんですか」 「仲間、だったのかな……。アイツずっと苦しそうだったから。上手く逃げてくれてたらいいんだけど……」 視線を向けると、芦谷は会話に入る事もなく、静かにやり取りを聞きながら傍らを歩いている。 莉々香の話を聞いていると、彼女を逃がしてくれた人物には、何かしら複雑な事情が絡んでいるような気もする。 それを紐解くには手掛かりが足りず、彼女もまだ混乱しているのだろう。 しかし、先程の二人を前にしていたならば、逃げ切るのは難しいのではないかと思え、不穏な気配を振り払おうとする。 彼女を逃がせるくらいなのだから、抗える力があったのかもしれない。 だが、絶望的な状況で莉々香を逃がす事が精一杯であったとしたならば、その先は考えたくもない。 「何か、彼についての情報はありませんか? 些細な事でもいいので」 「たった数時間の事だから、あんまりアタシもよく知らないんだけどさ……。名前は來っていうの。いい奴だったよ」 静かに笑う彼女から紡がれた名前を聞いて、咄嗟に芦谷へと視線を向けてしまう。 「來……? まさか、本当か?」 「え? 來のこと知ってるの?」 「もしかしたら、俺達が探している人物かもしれません」 「え? どういうこと……?」 それまで黙って話を聞いていた芦谷が視線を向け、莉々香を食い入るように見つめている。 彼女は状況を呑み込めず、交互に顔を向けては先を促している。 「もし、そうなら……、芦谷さんは來さんの」 言い掛けたところで、莉々香がハッとした表情を浮かべてから芦谷の腕を掴み、勢い良く引っ張って走り出す。 「え、おい!」 芦谷も後に続くも、戸惑いの表情を浮かべながら莉々香へと声を掛けている。 そんな二人を追い、何処へ行くのかと思えば街灯の下へと辿り着き、振り向いた彼女が芦谷をまじまじと見つめている。 伸ばされた手に前髪を上げられ、唐突な出来事に困惑しながらも、彼女の好きにさせながら視線を交わしている。 「似てる……。來にそっくり。嘘でしょ……、貴方お兄ちゃんなの!?」 「お兄ちゃんって……」 「名前は!? 咲!?」 「そうだけど……」 「こんなところにいた……。何やってんのよ、アイツ……。ねえ、來を助けて!」 「そんなこと、言われるまでもない。あと、そろそろ手ェ離せ」 どうやら彼女の知る來は、同一人物であったらしい。 安堵すると同時に、纏わり付くような不安に包まれる。 芦谷の前髪を払った手を額に押し付け、莉々香は興奮気味に咲の顔をまじまじと見つめている。 記憶に残る來の表情を重ね合わせるように、彼との一時を思い出すかのように。

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