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儚き星々 17
來の背に腕を回し、歩調を合わせながら足を踏み出し、好奇の視線から逃れようとする。
反対側には咲が居り、彼の腕を肩へと回させ、力ない手を取りながら心配そうに來の様子を窺っている。
莉々香といえば、進行方向へと駆け出しながら声を上げ、未だ群れる人々を散らして道を開けようとしている。
「彼が……。來さん、ですか」
「ああ……。一体何がどうなってんだ」
傍らの様子を窺えば、殴られたであろう頬が傷付いており、虚ろな視線には何が映っているのだろう。
乱れた金髪には砂が混じり、此処へと至るまでの困難な道のりを想像させ、どうやって辿り着いたのだろうかと疑問が湧いてくる。
だが、それを聞ける雰囲気ではなく、茫然とした青年を二人掛かりで抱えながら、当てもなく前へと進もうとしていた。
「おい」
そこへ、どこからともなく降り掛かった声に視線を向けると、見慣れた青年が少し驚いた様子で佇んでいる。
「貴方は……、龍妃さん」
「何やってんだ、お前ら。そいつは?」
「俺の弟だ」
「弟? マジか。傷だらけじゃねえか。どうしたんだよ」
「それが……、俺達にも分からなくて……」
「そうか。まあ、いいや。とりあえず来いよ。店、すぐそこだし」
開けた道の先には龍妃が居り、何事かと立ち止まりながら様子を窺ってくる。
だが、今は答えられる事も無く、困惑した空気を察するように彼が指し示すと、來を休ませる場所を得られて少なからず安堵する。
「何の騒ぎかと思ったけどよ、まさか見知った顔が出てくるとは思わなかったぜ」
「あの、あなたは……?」
「あ? どうでもいいだろ。つうか誰だよコイツ」
「は~!? 何なのよ、この失礼な野郎は!! まさか知り合いじゃないわよね、こんな奴と!」
「キーキー騒ぐなよ、うっせえなあ!」
「アンタが失礼過ぎるからでしょ!?」
おずおずと莉々香が声を掛けるも、ぶっきらぼうな龍妃の言動に殊勝な態度は立ち消え、コイツ何なのよと大騒ぎしている。
「あ~……、どうしたらいいんでしょう」
「どうにもならねえな」
何故か目前で大喧嘩が始まり、剣幕に圧された群衆が少しずつ距離を置き、いつの間にか取り囲んでいた人集りが解消されている。
「あいつらのお陰で歩きやすくなったな」
「そうですね……。これでいいんでしょうか」
「気にしてもしょうがねえからな。今は……、コイツが戻ってきただけでいい」
來を見つめる視線を感じ、今は彼が戻ってきてくれた事を素直に喜ぶべきであると考え直す。
怪我をしているものの、幸い大事に至るような傷は見当たらず、憔悴しながらも自分の足で歩いている。
龍妃が通り掛かったお陰で、一時的にも避難先を得られた事は大きく、隣を気遣いながら一歩ずつ慎重に踏み出していく。
「來さん、大丈夫でしょうか」
「さあな。分からない事だらけだ」
僅かな間に事が起き過ぎていて、情報を整理する余裕もない。
これは偶然なんだろうか、利々香を追っていた影が脳裏でチラつき、意図的に來が放たれたような予感が一瞬通り過ぎていく。
そんなわけないよな、と考え直すも、彼等が漂わせていた不穏な空気を思えば、隣を歩く青年が見逃されたとは思えない。
どうにかして逃げた、そういう事なんだろう。
弱り切った青年を見つめながら、果たして口を開いてくれるのだろうかと心配しつつ、咲と共に身体を支える。
「ひとまずは、休ませられる場所が見つかって良かったです。龍妃さんに感謝ですね」
「ああ、取り込み中みたいだけどな……」
言い争う声が聞こえ、初対面とは思えないくらいに打ち解けているのだが、そんな事を言えば怒られるに違いない。
目まぐるしく事態が変わり、未だ理解が追い付かない状況であったが、今は店舗を目指して來を気遣いながら街を歩いていく。
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