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儚き星々 18
「辺りはすっかり元通りですね」
いつの間にか人集りは消え、周りは賑やかな日常を取り戻している。
時折、道行く人の視線を感じるも、今や立ち止まってまで來を気にする者は誰もいない。
來といえば、未だ虚ろな視線を向けていて、覚束ない足取りで前へと進んでいる。
支えなければ今にも崩れ落ちそうで、彼は何処まで状況を呑み込めているのだろうか。
そして、あのまま誰も駆け付けていなければ、今頃どうなってしまっていたのだろうか。
会えて良かったが、会って良かったのだろうかと、どうしても不安感が付きまとう。
会えて良かったに決まっているが、手放しで喜べない状況に立たされていると感じ、共に歩む咲の心情が気に掛かる。
再会を喜ぶ気持ちと、拭い去れない懸念がきっと、彼の中にも存在しているはずなのだ。
「ああ。アイツらが怖くて誰も近寄らない」
少し先を歩く男女が映り、端から見れば仲が良さそうに見えなくもない。
「二人のお陰で、だいぶ風通しが良くなりました」
「そうだな」
「芦谷さんは、この事をどう感じていますか? 今ここで言うべき事ではないと分かってはいますが……、どうしても気になって……」
來を交えて語る事ではないが、咲の気持ちがどうしても気になった。
「安心と、不安が半分ずつだな」
「やっぱり……、そうですよね」
「コイツが戻ってきて手放しで喜びたいが、そうも言ってられない。今も何処かで見張ってるんじゃないかって、気が気じゃないのが正直なところだ」
「同感です……」
聞いてみたものの、内心はぐらかされるのではないかと思っていたが、意外にもすんなりとした答えが返ってくる。
そうして彼もまた、喜びと共に不穏な影を感じている事が分かり、同じ気持ちであるという事実に少なからず安堵する。
今の時点ではどうする事も出来ず、何に気を付けたらいいのかも分からなかったが、まずは來を安全なところに連れて行くのが先決である。
「一体、何があったんでしょうか」
「その辺の話を聞けたらいいんだけどな。まあ、俺が居ると話したがらないかもな。そいつ」
「そんな事は無いです。きっと」
「まさかお前に励まされるとは。俺が励ましてやらねえとと思ってたのに」
「え?」
「ずっと落ち込んでんだろ。真宮の事で」
「あ……、えっと、それは……」
「事情はよく分かんねえけど、アイツらと関係が良くねえのは理解した。ただ、味方にすると心強いのを嫌でも感じていて、何とも言えねえ気分だよな」
「そうですね……。複雑な心境です」
一気に気恥ずかしくなるも、咲の心遣いに嬉しくもなり、動揺してしまう。
確かに彼等、ヴェルフェは、側に置いておけば心強くなる一面もあると知ってしまった。
だが、だからといって彼等と友好的になれるとは思えず、あの男がいる限り無理なのだ。
「無鉄砲な奴だけど、お前らを裏切るような真似はしないと思う。たぶんな」
「それ……、真宮さんにも伝えておきます」
「おい、やめろ。アイツを付け上がらせるな」
「芦谷さんの気持ちを知ったら、真宮さんも喜ぶと思います」
「おい、ナキツ。絶対に」
「言いませんよ。ありがとうございます。芦谷さんが居てくれて良かったです」
少し気恥ずかしそうな咲が映るも、彼が居てくれた事で得られた安心感は大きい。
仲間の安否は気に掛かるが、今は自分に出来る事をするべく、來の背を支えながら歩いて行くうちに店舗が見えてくる。
今のやり取りを聞いていたのだろうか、相変わらず彼には反応が無く、何を考えているのかも分からなかったが、解決する糸口が此処には咲と莉々香、二人も居る。
「急におかしなこと言うなよ」
「そんな事ありませんよ。感謝を述べたまでです。芦谷さんが居てくれたから此処まで安心していられましたし、芦谷さんの助けがなければ俺もどうなっていたか分かりませんし、芦谷さんが居たから」
「もう、いい。もう、いいって。分かったから」
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