384 / 384

儚き星々 18

「辺りはすっかり元通りですね」 いつの間にか人集りは消え、周りは賑やかな日常を取り戻している。 時折、道行く人の視線を感じるも、今や立ち止まってまで來を気にする者は誰もいない。 來といえば、未だ虚ろな視線を向けていて、覚束ない足取りで前へと進んでいる。 支えなければ今にも崩れ落ちそうで、彼は何処まで状況を呑み込めているのだろうか。 そして、あのまま誰も駆け付けていなければ、今頃どうなってしまっていたのだろうか。 会えて良かったが、会って良かったのだろうかと、どうしても不安感が付きまとう。 会えて良かったに決まっているが、手放しで喜べない状況に立たされていると感じ、共に歩む咲の心情が気に掛かる。 再会を喜ぶ気持ちと、拭い去れない懸念がきっと、彼の中にも存在しているはずなのだ。 「ああ。アイツらが怖くて誰も近寄らない」 少し先を歩く男女が映り、端から見れば仲が良さそうに見えなくもない。 「二人のお陰で、だいぶ風通しが良くなりました」 「そうだな」 「芦谷さんは、この事をどう感じていますか? 今ここで言うべき事ではないと分かってはいますが……、どうしても気になって……」 來を交えて語る事ではないが、咲の気持ちがどうしても気になった。 「安心と、不安が半分ずつだな」 「やっぱり……、そうですよね」 「コイツが戻ってきて手放しで喜びたいが、そうも言ってられない。今も何処かで見張ってるんじゃないかって、気が気じゃないのが正直なところだ」 「同感です……」 聞いてみたものの、内心はぐらかされるのではないかと思っていたが、意外にもすんなりとした答えが返ってくる。 そうして彼もまた、喜びと共に不穏な影を感じている事が分かり、同じ気持ちであるという事実に少なからず安堵する。 今の時点ではどうする事も出来ず、何に気を付けたらいいのかも分からなかったが、まずは來を安全なところに連れて行くのが先決である。 「一体、何があったんでしょうか」 「その辺の話を聞けたらいいんだけどな。まあ、俺が居ると話したがらないかもな。そいつ」 「そんな事は無いです。きっと」 「まさかお前に励まされるとは。俺が励ましてやらねえとと思ってたのに」 「え?」 「ずっと落ち込んでんだろ。真宮の事で」 「あ……、えっと、それは……」 「事情はよく分かんねえけど、アイツらと関係が良くねえのは理解した。ただ、味方にすると心強いのを嫌でも感じていて、何とも言えねえ気分だよな」 「そうですね……。複雑な心境です」 一気に気恥ずかしくなるも、咲の心遣いに嬉しくもなり、動揺してしまう。 確かに彼等、ヴェルフェは、側に置いておけば心強くなる一面もあると知ってしまった。 だが、だからといって彼等と友好的になれるとは思えず、あの男がいる限り無理なのだ。 「無鉄砲な奴だけど、お前らを裏切るような真似はしないと思う。たぶんな」 「それ……、真宮さんにも伝えておきます」 「おい、やめろ。アイツを付け上がらせるな」 「芦谷さんの気持ちを知ったら、真宮さんも喜ぶと思います」 「おい、ナキツ。絶対に」 「言いませんよ。ありがとうございます。芦谷さんが居てくれて良かったです」 少し気恥ずかしそうな咲が映るも、彼が居てくれた事で得られた安心感は大きい。 仲間の安否は気に掛かるが、今は自分に出来る事をするべく、來の背を支えながら歩いて行くうちに店舗が見えてくる。 今のやり取りを聞いていたのだろうか、相変わらず彼には反応が無く、何を考えているのかも分からなかったが、解決する糸口が此処には咲と莉々香、二人も居る。 「急におかしなこと言うなよ」 「そんな事ありませんよ。感謝を述べたまでです。芦谷さんが居てくれたから此処まで安心していられましたし、芦谷さんの助けがなければ俺もどうなっていたか分かりませんし、芦谷さんが居たから」 「もう、いい。もう、いいって。分かったから」

ともだちにシェアしよう!