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儚き星々 19

まだまだ感謝の気持ちを伝えたかったが、ばつが悪そうな芦谷に遮られてしまう。 「まだ話している途中なのに、どうして止めるんですか? 芦谷さん」 「お前の気持ちは十分分かった。俺なんかの為にありがとな。もう、いいだろ」 「いえ、まだまだ全然言い足りません。伝えたい事が沢山あります」 「おい、ナキツ」 ここぞとばかりに彼の良いところを連ねようと思ったが、やはり芦谷に阻まれてしまう。 咲に視線を向けると、自然と來が視界に入り、項垂れて塞ぎ込んだ様子が窺える。 何の反応も無かったが、兄との会話は聞こえているだろうから、一つでも彼の心を素通りしない言葉が残っていてくれていたらと思う。 二人の間に何があったかは分からないが、こうして再び会えて本当に良かった。 今は、それだけで十分なのだと言い聞かせ、余計な不安を心に近寄らせないよう努める。 來を気遣いながらゆっくり歩いてきたが、いつの間にか目的地が近付いており、軒先で莉々香が此方を見つめて佇んでいる。 龍妃の姿は見えず、先に中へと入っているのだろうかと思いながら歩を進め、辿り着くのを待っていた莉々香と程なくして合流する。 「お待たせしました。龍妃さんは?」 「分かんない。何にも言わずに入ってったし、本当にいけ好かない男。アイツ絶対モテないわ」 仲が良さそうに見えた、なんて口走れば恐ろしい事になる気がして、莉々香の言葉に愛想笑いを浮かべてやり過ごす。 何となく辺りを見遣れば、気を張る必要もないくらいに平和な日常が広がっていて、此方に目もくれず人々が過ぎ去っていく。 大丈夫だと、何故か心に言い聞かせながら向き直り、此処まで来たものの入っていいものかと二の足を踏んでしまう。 「おい、お前ら。何やってんだよ。早く来い」 入り口を見つめながら立ち尽くし、声を上げようとしたところで龍妃が顔を出し、待ちくたびれたとばかりに顎で中へと促される。 「アンタね~! マジでそういうとこ、どうにかなんないの!?」 「あ? お前は文句しか言えねえのかよ、めんどくせえ女だなあ」 「めんどくさいのはアンタだから! さっきだって一人でさっさと中入ってくし!」 「おい。二階使えっつってから、とっとと入れよ」 「聞いてんの、ねえ!? 無視すんな!!」 どうやら話をつけてくれたようであり、彼なりの気遣いを察して有り難く感じる。 一方で莉々香といえば、第一印象の悪さを未だに引き摺っており、龍妃のぶっきらぼうな言動も相俟って抗議が止めどなく溢れている。 それがまた端から見れば不思議と息が合っているようにも見えてくるのだが、微笑ましく思おうものなら睨まれかねないので、此処は大人しく龍妃の言葉に従う。 店内に足を踏み入れれば、談笑を楽しむ客の姿が見え、芦谷と共に目立たないよう息を潜めながら龍妃の後を追い、二階へと続く階段を上がっていく。 そうして案内された部屋に入ると、椅子とテーブルが並べられた休憩室が視界に映り込む。 「適当に使ってろ。寝かせんなら奥に行け」 指し示された方向を見ると扉があり、伝え終えた龍妃はさっさと立ち去ってしまう。 「奥って?」 莉々香が首を傾げ、龍妃が指し示していた扉へと近付くと、真意を探るべくそっと扉を開ける。 「え、ベッドあるじゃん! 此処に寝かせよう!」 仮眠室と思わしき部屋があり、扉を開けた莉々香が興奮気味に手招きをすると、部屋に入っていく。 「何から何まで、有り難いですね」 「ああ」 來と共に歩き、簡素な寝台へ辿り着くと、彼を気遣いながら端に座らせる。 そうして目前へと跪き、來の表情を見上げながら様子を窺う。 「來」 咲が呼び掛けると、僅かに反応がある。 密やかに肩が動いて、覇気のない視線が兄へと降り掛かる。

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