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暗愚の導き手 3

「ああ、摩峰子の件で協力している。手を出すなよ」 「分かっています……」 「憂刃にも言っておけ。アイツが一番危ない」 「はい……。と言っても、俺の言う事なんて聞かないかもしれませんが」 「ハハッ、そりゃそうだ!」 沈痛な面持ちで口を開くナギリを、エンジュが容赦なく笑い飛ばす。 憂刃も不用意に手を出すような真似はしないだろうが、恐らく一瞬で事態は変わる。 漸の隣に立つ誰もが気に入らない、アイツはそういう人間だ。 それは此処に集う者も同じで、何を切欠に憂刃が牙を剥くかは分からない。 だが上手く使えば、意のままに動かす事は容易いだろう。 「その、ヒズルさんが遭遇した奴等についてですが……」 「ああ、お前達に関わりがありそうだと思ってな」 「どうして、そう思うんですか……?」 「お前達が陥れようとしていた女は無事だ」 「え……?」 「まんまと逃げおおせたぞ」 「そんな事が……、有り得るんですか……?」 「それで、お前はこの事を憂刃に言うのか」 「あ……、それは……」 「烈火の如く怒り狂う様が目に浮かぶな」 「あァ~、くっだらねえ。気に入らねえならテメエでカタつけろや」 目に見えて動揺したナギリが、冷や汗を浮かべながら落ち着かない様子で呟いている。 彼が気にしているのは果たして、女が無事であった事か、それとも憂刃の思い通りにならなかった事なのか。 これもこれで、厄介な呪縛だな。 哀れな青年に手を差し伸べようとも思わないが、見ていて不憫に感じる事はある。 しかし傍目からはそう映っても、当人にとっては必ずしも不幸ではないようだ。 「憂刃が手を出したら、もっと酷い事になりかねないですよ」 「確かに酷ェことしてるもんなァ、テメエらは。お偉方はどう思ってんだか」 「漸がやめろと言えば止めるのか」 「それは……、たぶん」 表面上は言う事を聞くだろうが、憂刃が納得出来なければ分からない。 そもそも白銀の青年が、自ら関わってくるとも思えない。 「あの女を追っていた男が、お前達とも関わりがありそうだと思ってな」 「そうかもしれないです……。でもなんで、どうやって……?」 「逃げられるわけがないと」 「分からないけど……、そう簡単にはいかないと思います……。彼等に隙はなかった。ただ、金髪の男はちょっと違ったかな……」 「裏切りそうだったか」 「何というか彼だけは、納得いっていないように見えました……。なんであそこに居たのか不思議ですけど……」 少しの間ではあったが、あの場に居た者達がたった一人を取り逃がすとは思えない。 エンジュのような男ならともかく、相手は自分すら満足に守れぬような非力な人間だ。 協力者がいると考えるのが妥当か。 それでいて、泳がせる理由があった。 「そいつらと連絡取れねえのかよ」 「俺は、全然知らなくて……。そもそも彼等が来る事も聞いてなかったですから……」 「ン~だよ、使えねえなァ。結局あのクソ野郎じゃねえと分かんねえじゃねえか」 「すみません……」 憂刃に聞くのが手っ取り早いだろうが、ナキツ達のその後も気に掛かる。 当事者がいる分、詳細な情報を引き出せているかもしれない。 「厄介なものと関わったかもな」 「あの、摩峰子さんのほうはどうなってるんですか……?」 「ああ、薬の使用者は見つかった。お前達が油を売っている間にな」 「う……、耳が痛いです」 ばつが悪そうなナギリを余所に、エンジュは飽きたのか寝る体勢に入っている。 何処を突いても関係者を引き摺り出せそうだが、より大物を引き当てるなら釣り糸は慎重に選ばなければならない。 女を引き渡すのが一番早い気がするが、アイツがそれを許すはずもないか。 ナキツの顔を思い浮かべ、そんな事をすればますます嫌われそうだなという感想が淡々と湧いてくる。

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