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暗愚の導き手 4

「で? テメエは結局どうすんだよ。ヒズル」 座卓を挟み、向かい側の長椅子で寝転がるエンジュから、ぶっきらぼうに問われる。 「お前はどうしたい」 「俺が聞いてんだよ、ボケ!」 「どうするも何も、今更手を引くわけにはいかないだろう」 「手ェ引きてェとか思ってんの?」 「面倒な事案に発展した。多少はな」 「あァ、そこのお坊ちゃんらのせいなァ~」 どちらかと言えば、薬の件よりも憂刃の暗躍の方が、より面倒な事態を招き入れている。 「退屈はしねンじゃねえのかァ?」 「お前は憂刃を懲らしめたいだけだろう」 「懲らしめるだけじゃ済まねえよ。ぶっ潰す」 「エンジュさん……!」 悲壮感で一杯なナギリは青ざめ、エンジュは意にも介さぬ様子で豪快に笑っている。 「とはいえ、摩峰子の件が最優先だ」 「どっちにしろ、同じとこに繋がってんだろうが」 「まあ、そうだな」 辿る先には彼等が居るのだろうが、その背後に手を伸ばすにはどちらから回るべきか。 いや、答えは出ているが、女を釣り糸として使う事は叶わないだろう。 そこまで考えたところで、女を使えない理由に気が付き、ナキツの顔色を窺うような判断に自分でも不思議がる。 女を餌にした方が食い付きはいいが、あの男はそれを許さないだろう。 許さないところでどうだっていい話だが、何処か引っ掛かる理由までは分からない。 「俺がブツを手に入れに行ってやってもいいぜ? そいつらに会えるかもしンねえだろ」 「そんなところには顔を出さないだろうな。そもそもお前では目立ち過ぎて警戒される」 「なんでだよ。腕試ししてやろうと思ってんのによォ」 「奴等は腕が立つ。売人如きで使い走りにするには勿体ないだろうな」 「腕が立つかは俺が判断してやるよ」 足を投げ出しながら傲慢に笑うエンジュを余所に、ナギリは相変わらず不安そうに縮こまっている。 「憂刃にも話を聞く必要がありそうだな」 「そうですよね……」 「お前が全て答えられるなら見逃してやってもいいが」 「それは……、とても出来そうにありません」 「なら決まりだな」 「あの……、憂刃はどうなりますか?」 「別にどうもしない。話を聞くだけだ」 「そう、ですか……。漸さんにも、報告するんですか……?」 「それはまだ決めていない」 今後の展開次第とも言える。 机上に置かれていたグラスを掴むと、氷が音を立てて琥珀色の液体へと沈み込む。 漸に言ったところで、アイツが興味を示すとも思えないが。 だが、憂刃の視線が向く先によっては、白銀の男を動かす事も容易いのかもしれない。 漸とは正反対の男が脳裏を過りつつ、ある意味で憂刃の一番の天敵になりかねない。 「あのクソ野郎が素直に吐くかァ~?」 「手伝ってくれるか、エンジュ」 「やなこった。誰がクソ野郎の顔なんか好んで見るかよ。奴等の足取りが掴めたら教えろ」 「遠慮しているのか」 「嫌いだっつってんだろうが、日頃から!」 「仲良さそうに見えるけどな。お前はどう思う、ナギリ」 「憂刃と仲良しで羨ましいです……!」 「うるっせえよ、テメエら!!!」 エンジュが大噴火を起こしたところで、グラスの酒を煽りながら次の行動を考える。 あの場にもう少し留まるべきであったかと思いつつ、今ナキツに会えば簡単に解放はしてくれないだろう。 「とっとと親玉引っ張り出して終わりにしろよ、こんなクソ案件」 「俺もそうしたいがな。相手はなかなか狡猾だ」 「言われてみりゃァ統率は取れてんな。テメエらもこれで終わっちまわねえように精々藻掻いてろよ」 ナギリへと視線を向けながら、エンジュが悪巧みするように笑みを浮かべる。 緊張感が漂うも、頼りなげなこの男に今出来る事はないだろう。 だが、事と次第によってはこの先化ける時もあるのかもしれないと思いつつ、グラスへと口を付ける。 何から手を付けるべきか考えながら、エンジュとナギリのやり取りに耳を傾けつつ、物足りないとでも言うように煙草を取り出していた。

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