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第137話 待つ時間(和希)
拓真のアパートで、豚の角煮をコトコト煮て待ってる
なぜ、角煮かと言うと時間が掛かる煮物なら、何でも良かった。
何かしてないと不安で仕方無いからしてるだけで。
今日、拓真が出掛けたら自分のアパートに帰ろうと思っていた。
「和希、俺が帰ってくるまで、待ってて」
「えっ、いいの?」
「うん。鍵置いておくから」
「じゃあ、待ってるね」
「面倒だけど、行ってくる」
グツグツ煮込む鍋を見てボ-と拓真が出掛ける時の事を思い出していた。
待ってて欲しいって言われた事が凄く嬉しかった。
だって、必ず帰って来るって言う事だと思ったから。
俺の不安を感じたのかどうかは解らない。
拓真が帰って来るか来ないかと不安な気持ちで待つなら帰ってしまうおうと思った自分が情け無い。
拓真はきちんと俺の事考えてくれていたんだ。
信じると決めたばかりなのに俺は直ぐに不安になる。
この気持ちはどうしたら消えるんだろう信じたいのに信じきれない。
拓真の前では言葉に出して「信じてるから」と言ってるのは、自分に言い聞かせてるからなんだ。
拓真の事好き過ぎて……不安になるのかな。
拓真が出掛けてから2時間経つ。
今頃は昼御飯食べてるのかな?
どこで食べるのかな?
笑い合って話してるのかな?
その後はどこ行くんだろう?
何時に帰って来るんだろう?
女の子に誘われてないかな?
グルグル頭の中で、考えては消えまた考える。
豚肉に箸を刺してみると柔らかくなっていた。
「よし、1度火を止めて油凄いから捨てて、今度は味付けして煮込もう。序でに大根も煮ちゃえば一石二鳥だ、そうだ、茹で卵も入れよう。よし、やるぞ」
考えたく無いから料理に没頭した。
煮込み料理も出来た、サラダも冷蔵庫入ってるし後はデザートに何か作ろうかなぁ。
「そうだ、この間使った残りある筈」
ガサガサ探すとホットケ-キミックスを見つけた。
「あった、あった。これに生クリーム乗せよう」
生クリームの素をボウルに入れ、ひたすら泡だてる。
時間掛かるのを承知で手で泡立てるから、腕がパンパンになるが考え事をしないから丁度いいと思って、生クリームを作ろうと買ってきて正解だ。
「ああ、疲れたぁ。手でやるもんじゃ無いな」
苦笑し時間を見る。
「まだかな?」
拓真が出掛けてから5時間経つ。
もう、料理は出来たしデザートも作ったし何しよう。
待つ時間と不安が比例していく。
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