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第148話 絆の鍵(和希)

「まだかな?」 時計は10時過ぎていた。 LINEも無い。 7時から始まって飲み放題で3時間って言ってたから、まだ帰って来る訳無いのは解ってるのに何度も時計を見て、進まない時間に寂しさと不安が募っていく。 拓真が出掛ける前の事を思い出して不安を消し去ってまた不安になりを繰り返していた。 昼前に拓真のアパートに着き、昼御飯を一緒に食べ合コンに行かせたく無いからベタベタとして過ごしていた。 出掛ける用意を始出した拓真の背中に抱き着き 「どうした?今日はヤケに甘えてるな」 「何か、拓真がずっと断ってた合コンとか飲み会に行くの寂しいよ」 「成るべく早く帰って来るけど 3時間飲み放題だからな。早くって11時頃か」 「そっかぁ、アパート着いたらLINEして」 「はっ、和希。帰るつもりか?部屋で待ってろよ」 「えっ、いいの?部屋で待ってて」 「どうせ、明日、休みで会うんだし、また来るの面倒だろ」 「うん。じゃあ、待ってる。暇だから明日の食べる物作ってるよ」 「この間の豚の角煮、美味かったな」 「角煮にするかは分からないよ」 話しながらも拓真は合コンに行く用意をしてどんどん支度が進んで行く。 それを見て行かないでと声に出してしまいそうになる 「あっ、そうだ。和希、これやるよ」 手に渡されたのは銀の鍵。 「拓真、これって」 「今日、俺出掛けてから買物とか外行くだろう。それに、いつ来ても良いように待ってろ」 涙が出そうになった。 鍵を握り締め「拓真、ありがと。嬉しい……拓真の趣味?何か以外なんだけど」 鍵に付いているキ-ホルダ-が気になった。 「ああ、俺の趣味じゃねぇよ。和希と付き合う前に映画行った事あっただろう。その時、そのリスが餌頬張って膨らんでるのが和希っぽくって思わず買った」 「何ぃ、それぇ」 プクッと頬を膨らませてしまった。 「ほらな」くっくっくっと笑って頬を突っつかれた。 「もう、俺は小動物じゃ無いよぉ」 「似たようなもんだろう。ほら、そっくり」 リスのキ-ホルダ-を俺の顔の横で掲げて話す。 「じゃあ、拓真はライオンだね」 「おっ、良いねえ。百獣の王ってカッコいい。まさに俺って感じ」 「何言ってんの?外見はカッコいいけど、面倒くさがりで怠け者って事」 「結局、カッコいいのは変わんないんだ」 くっくっくっと楽しそう。 「ん~、確かに」 拓真に負けた感じがしたけど、こんな遣り取りも楽しい。 そうこうしてる内に支度が整った。 「じゃあ、1次会で帰って来るから、待ってろよ」 軽いキスをされ出掛けて行った。 それから少しの間、ボ-と鍵を握り締めて過ごし、このまま何もしないで待ってるのも時間が長く感じると部屋とお風呂場を掃除し食材を買いにスーパー行き、また時間が掛かる料理を選んで作り始めた。 下拵(ごしら)えして、後はコトコト煮込めば終わりだ。 煮込めぼ煮込むだけ柔らかくなる肉に待ってる時間だけ柔らかくなるなと感じた。 2時間程煮込んで火を止め、味見をする。 「う~ん、メッチャ柔らかくって美味しい。これで1晩置いたら尚更美味しくなるかも。拓真に食べさせたいな。早く帰って来ないかな」 上手くいった料理に満足して、サラダ用に茹で卵を作り、冷蔵庫に入れおく。 手持ち無沙汰に他も作ろうかと考えデザ-ト?と思って、この間の生クリームを思い出し赤くなる。 また、デザ-ト作ったら期待してると思われるかも……今日は止めておこう。 料理も出来、ダラダラとテレビを見てる内にウトウトする。 早く帰って来てと頭の中で心の声がした。

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