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第149話 手の甲と不安(和希)

拓真に貰った合鍵をジッと見て、拓真の優しさと愛を感じた。 俺が不安に思ってる事が解って、渡してくれたんだろう。 そして、このリスのキ-ホルダ-も付き合う前に買ったと言ってた。 その時はまだ拓真は俺の事気になり出した頃なはず、まだ、好きになるかどうか解らないのに、それでも俺の事考えて買ってくれた拓真の気持ちが嬉しく涙が出てしまう。 頬に嬉しい涙が伝い、リスのキ-ホルダ-付きの合鍵を何度も握り締め、拓真が必ず帰って来ると信じ待つ。 そんな事を考えているといつの間にか時間が過ぎ11時30近くになり不安が募る。 ずっと握り締めてた合鍵を見て 「大丈夫、大丈夫。絶対帰って来る。信じてる」言い聞かせていた。 ガチャッ。 「和希、いる?」 拓真の声に帰って来たと安堵し、直ぐ駆け寄り抱き着く。 「お帰り。疲れた?お腹は?」 「ああ、腹は空いてねぇ。食べてきたから。んでぇ、すんげぇ疲れた」 「お疲れ。そうだと思って、お風呂沸かして置いたから、入れるよ」 前もそうだったけど、化粧と香水が寄り濃く匂う、それに酒の匂いが混ざっていた。 拓真から見えない所で、俺は拓真の匂いに顔を歪ませていた。 「サンキュ、助かる。幹事だから気遣ってメチャクチャ疲れた。ゆっくり風呂入ってサッパリしたい」 「そんなに疲れたの?じゃあ、一緒に入る?また、体洗ってあげるよ」 拓真は前回の事を思い出しのかニヤニヤして俺の頬に手を当て親指で唇をなぞる。 「ん、頼もうかな?」 「……ん」 拓真が俺の頬に手を当てた時、その手の甲に薄っすらとピンク色の口紅の線が付いているのが見えた。 何で、口紅?手の甲に?なぜ?と頭の中には色々浮かぶ。 キスした?それともぶつかった? どう見てもキスして拭ってできた跡だと思った。 合コンで有りがちなゲ-ムでの事か?それとも……。 拓真が何も言わないなら俺からは聞けないと考えていた時、俺の腕を引っ張って風呂場に行く、俺は黙って着いていく。 何も解らず、一抹の不安だけが心の底に残った。 ただ、拓真が帰って来たという事実だけで信じようと言い聞かせていた。

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