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第155話 偽彼氏(拓真)
「…くま…拓真ってば、聞いてんの?」
「ああ、悪りぃ。考え事してた」
「何、ボ-として考え事してんのよ。そんなの後にしてよ。何の為に呼んだと思ってるのよ」
「ああ、解ってるよ。んで、どうする?」
「いつもの様に付き合いたての恋人同士って設定で彼氏役ね。付き合いたてなんだからイチャイチャしてよ」
「解ったよ。面倒くせぇな」
「何よ、あんたが頼んできた時、私も彼女役してるでしょ!こっちだって面倒だけど、やってあげてんだから、あんたも協力しなさいよ」
「はい、はい」
「んもう、自分の時は泣きつく癖に。ったく、どうしようも無い男ね。ほんと、あんたと従姉妹って恥ずかしいわ」
「そこまで、言う事ねぇだろう。俺だって別に何もして無いし勝手に勘違いする女がバカなんだろうが」
「はあ、何もして無いって?どの口で言ってんのよ。やる事やって後は無視して捨てる男がよく言うわよ。ほんと、最低!」
「はあ、それを言うならその気にさせといて、やっぱり何か違うとか我儘言って、付き合っては直ぐ別れる奴が良く言うよ」
「ええ、そんな人いるの?へえ」
惚けてんのか?俺の事バカにしてんのか解んねぇけど由香には口で勝てねぇから言っても疲れるだけだ。
「ま、いい。で、この後どうする?」
「今、コソコソ話てるのもイチャイチャしてる様に見えてるはずだから、この後はショップ何軒か見て、イチャイチャする感じで」
「解った」
それからはお互い狐と狸の化かし合いの様に演技する
テ-ブルの上で手を握り、コソコソ耳元で話す。
話しの内容は「叔父さんと叔母さん元気か?」
「社会人になってどう?」「あんたもいい加減フラフラしないで、しっかりしなさい」とかテレビの話しとか内容の無い下らない話をしていた。
それでも、周りからはイチャイチャしてる様に見えるんだから不思議だ。
暫くそんな事をして、カフェを出て腕を組んで歩きだす。
由香の髪を撫でる振りして、後ろをチラッと見ると青い服着た男が距離を置きながら、ジッと見て歩いて着いてくる。
「由香、まだ、着いて来てる。諦めの悪い奴だな」
「ほんと、シツコイ。予定通りショップ行こう」
「解った」
それから由香が好きなブランドの服屋に行き、由香に服を選ぶ振りしたり、耳元で話したりベタベタし男に見せ付ける。
2店舗めはアクセサリ-売り場で、由香はあっちこっち見て回り、俺も後を着いて時々ネックレスを当ててみたりと演技する。
俺も見て回り「あっ、これいいな」
LION HEARTのネックレスだ。
チェ-ンにダブルリングが付いていてリングの彫刻がカッコいい。
値段はまあ、この位するだろうなと思っていた。
「そのネックレス、カッコいいでしょ?ユニセックスのデザインだからペアでもOKだから、クリスマスプレゼントする人もいるよ」
定員の話で和希とペアもいいな。
まだ、クリスマスプレゼント決めてなかったから丁度良い。
「すみません。これペアで1つはプレゼント用に包んで下さい。カ-ドで支払いします」
「はい、こちらで。3万円です。カ-ド何回払い?」
「1回で」
「今、包みますから少々お待ち下さい」
思いがけず良い買い物した、和希喜んでくれるかな?
違う所を見ていた由香が隣に来て
「何か買ったの?」
「ああ、カッコいいネックレスあったから買った。あの男には、由香へのプレゼントと勘違いするだろうから、良い演出じゃねえ?」
「拓真にしては気が効くじゃん、じゃあ、私知らない振りであっち見てるわ」
「そうしろ」
煩い由香を追い払い、その間にプレゼント用と自分用の商品を貰う。
和希が喜ぶ顔が目に浮かぶ、思わず笑顔になる。
その店を出て、3店舗めに向かうつもりで歩き出しチラッと後ろを見る。
あの青い服の男は見当たらない。
「由香、あの男見当たらないけど、諦めたか?」
「そうかもね。さっきの演出が効いたのかも、でも、一応、そこら辺歩いて見よう。それで居なかったら、家、送って。パパとママ久しぶりに会いたがってたから夕飯食べて行けば」
「面倒だけど、一応念の為、家まで送って家族にも紹介済みって演出しておくか。叔母さんの手料理久しぶりに食べたいし」
「じゃあ、そうしよう」
念には念を入れて、俺達はイチャイチャして歩き、時間を見て由香の家に向かった。
もう、男の姿は無く諦めたようだ。
これで俺の任務も終了した。
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