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第171話 優しさと臆病(和希)
いつものように拓真のアパートで夕飯を作っていると、拓真が後ろにいて俺の肩から覗き込んでくる。
「今日は、何?」
「拓真が好きだから、ハンバーグにしようかなって」
玉葱のみじん切りをして涙目で話す。
「うわぁ、やっぱ玉葱のみじん切りって泣くんだな」
「玉葱にもよるけど……。目痛い~」
袖で拭こうと思って手を動かすと、拓真が唇で涙を吸い取ってくれて自分の袖で目に押し付けてきた。
「擦るより少しの間、こうしてた方がいい」
なんやかんや言っても優しい拓真。
「ありがと」
「もう、みじん切りは終わりか?」
「うん。もう終わりだよ」
「もう、大丈夫か?」
「うん」
手を退けて顔を覗き込んで、目にチュッチュとキスしてくれた。
「少し、赤いな。痛く無らない、おまじないだ」
自分でやって照れてるのが可愛い。
「サンキュ。もう少し掛かるから、テレビでも見てて」
「ん、解った」
アパートだから数歩でテレビの前のソファに座る拓真をキッチンから見てた。
ずっと、こんな風にしていたいなぁ。
拓真はたまに凄~く優しい。
多分、基本は優しいんだと思うけど虚勢張って、わざと冷たくしてる部分がある。
拓真なりに自分を守ってる事なのかも知れない。
だから、たまに優しくされると凄~く嬉しくなる。
付き合う前より付き合ってからの方が拓真の優しさが良く解るようになったな。
もっと皆んなに誤解されないようにすれば良いのに、勿体無い。
そんな事を考えながら夕飯作りを再開した。
「出来たよぉ~」
「や、マジ美味そう。和希、腕上げだよなぁ」
「食べよぉ~。お腹空いたでしょ?」
「「いただきます」」
拓真がハンバーグに口をつけるのを待って
「どう?」
「うん、美味い。味付けも良い」
「良かったぁ~。じゃあ、俺も食べよぉ」
ハンバーグに口をつけて自分でも中々上手くいったと思った。
メインの和風ハンバーグと付け合わせの温野菜、ご飯、味噌汁って感じだ。
「やっぱ、腕上げた?」
「そうかな?バイトで少し教えて貰ったり、賄い食べたり作ったりしてるからかなぁ、まぁ、料理出来ないより出来た方が良いしねぇ」
「ま、俺は和希が出来るなら料理しなくっても良いから楽だ」
今のって…どう言う意味かな?
大学卒業しても付き合っていくって事?
俺の願望でそう聞こえたのかも……。
「んもう、頼りないなぁ。拓真が全然しないなら飢え死にしないように、もっとレパートリー増やさないとね」
聞いてみたいけど……夕飯位は楽しく食べたいから冗談で返した。
意気地の無い自分が情けない。
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