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第172話 (拓真)
和希が作った夕飯は美味かった。
洗い物を済ましてコ-ヒ-を入れて俺の隣に座り、テレビを見ている和希に就職の件を聞こうと口を開く。
「なあ、和希。就職どうするんだ?希望の就職先あるのか?」
「えっ、急にどうしたの?」
「いや、年明けて就職の話が多くなってるし周りで騒いでるだろ?そう言えば、和希と就職の話してなかったなって思って。俺は決まってるから関係無ぇ~けど」
「気に掛けてくれたんだ。ありがとう。希望の職種は決まってる。IT企業。大きくなくっても良いから、仕事を任せて貰えるような所が良いかなって。大企業だと分散したり最後までやり遂げられ無いような気がして」
「都内?」
「都内にしようと思ってるけど……」
「じゃあ、俺の就職先の近くにしろよ」
「……良いの?」
「良いに決まってる。そうして欲しいから言ったし」
「拓真……嬉しい。俺、就職活動するのどうしようか迷ってて。拓真と一緒に居たいから近くを探そうかそれとも……。就職の話もしたかったけど、言い出せなかった。俺の気持ちだけ押し付けても迷惑かな?とか色々考えて」
「そうだったのか。俺はてっきり近くに就活するとばっかり思ってたからな。もっと早く話せば良かったな」
「ううん。自分の事なのに、俺が意気地が無いから……」
「でも、これで就活出来るな。早く決めて残りの大学生活楽しもうぜ」
「うん。頑張る。ちょっと就活するの遅れとったけど。これから巻き返していく」
「頑張れ」
「これから少し就活で忙しくなるけど……頑張って、早く決まるようにする」
「早い奴は内々定貰ってる奴もいるからな。焦って早く決めようとして、変な所就職するなよ」
「うん。就職決まった人がいるって聞いて、俺もちょっと焦ってたけど大半がこれからだから。資料集めから企業説明会にも参加しなきゃ。悩んでた事が決まったら就活やる気が出てきた」
「無理するなよ。程々にな」
「ありがとう」
和希が就活の事で悩んでたとは解らなかった。
俺は早々に叔父さんの所に決まってたから、言い出せなかったかも知れない。
もしかして就職先が決まってる俺には言っても仕方ないって思ってたのかも。
いや、和希に限ってそれは無いな、この間も俺の事誤解されないように庇ってくれたしな。
確かに、皆んなが言うように俺には就活は関係無い。
これからは、和希の就活の相談にも乗ってやるようにするか。
何だか安心したような穏やかな顔の和希を見てそう思った。
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