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第174話 (和樹)
「和樹~」
俺を呼ぶ声の方に振り向くと、達也が手を振って走って来た。
「どうしたの?」
今まで大学の構内で会った事が無かったから驚いた。
「和樹に会えたら、これ渡そうと思って」
リュックの中から資料らしき封筒を渡された。
「何?」
「去年のうちの大学の就職先とか、面接の時のノウハウが書いてる資料とか、役に立てばっと思って。もしかして、既に持ってるかも知れないけど…」
「うわあ~、ありがと。助かるよ、Lineくれれば達也の学部に取りに行ったのに、わざわざありがとう」
「ま、急ぐ訳じゃ無かったけど。会えたら渡そうと思って持ち歩いてた」
「ありがと」
「和樹の方は、どんな感じ?」
「う~ん、何ヶ所か絞り込んでるけど……検討中」
「そうか。ま、俺も似た感じだ。じゃあ、お互い就職戦線頑張ろ-な。何か情報あったらLineくれよ」
「うん!」
「んじゃあ、またな」
俺の頭を撫で、少し離れた所に居た拓真に会釈して去って行った。
やっぱり爽やか青年って感じだ。
「あいつって…確か、大野達也?」
「うん、そうだよ。就職説明会の時に偶然会って話したんだ。色々、就職情報教えてくれたりこうやって資料持って来てくれたり優しい人だよ」
「ふ~ん。で、Line交換もしたんだ」
「うん。説明会の時に、お互い就職情報あったら教え合おうって。でも、まだLineした事無いけど」
「そうか。……この後、俺のアパ-ト来るよな?」
「うん」
並んで、拓真のアパートに着くまで、達也の話しや就職説明会の時の話を拓真に話した。
拓真は黙って聞いていた。
俺は達也の優しさに感謝し、これからの就職戦線を乗り切る意欲が沸き起こっていた。
皆んなも頑張ってるんだ、俺も頑張らなきゃ。
そんな俺を不満顔で見てた拓真の事は気づきもしなかった。
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