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第175話 ジェラシィ一(拓真)
隣で疲れて寝ている和樹の寝顔を見て、帰り際の光景を思い出していた。
「大野達也…か。」
何度か合コンで面識はあったが、言葉を交わしたのは数える程度だ。
顔も爽やかイケメンで、あいつ目当てで来てた女共も居たくらい女にはモテていた。
俺と同じく合コンの人数集めの為に呼ばれたんだろうが、俺と違って雰囲気を壊す事無く皆んなに気を使い特に女には優しく評判は良かった。
「大野君って爽やかイケメンでモテるのに、お持ち帰りしないし彼女いる時は一筋らしいよ~。拓真も見習いなさいよぉ~。拓真はヤッたら捨てて最悪なのにね~。何でモテるのか?」
「知らねぇ~よ。俺からは何も言ってない、勝手に言い寄って来るから相手してやってるだけ」
「本当、最低な男なのにね~。でも、そう言う靡(なびか)ない所が魅力なのよねぇ~。彼氏にするなら大野君遊びなら拓真ね」
そんな話を女とした事を思い出した。
結局、その女もなんやかんや言いながらも、最終的には俺に股を開いてた。
女なんて所詮そんなもんだ。
爽やかイケメンで誰にも評判が良い大野、俺とは合わないと思った。
いや嫉妬したんだ、俺に無いものを持ってるあいつに
自分の行いを棚に上げて、爽やかイケメン好青年のあいつが羨ましかった。
何だか、あいつに負けた様な気持ちになって、あいつが参加する合コンには行かない様にもしていた。
それからは大学でも滅多に見かけ無かったし、さっきまで存在すら忘れていたくらいだったのに。
「和樹」と呼び、自然な仕草で頭を撫で、親しげなその光景を苦々しく思いながら見ていた。
何より気に食わなかったのは最後に、チラッと俺を見て‘居たのか?’って、雰囲気を醸し出していた事だ。
俺の存在を無視していた態度に、何が爽やかイケメンだ! と怒りが沸いた。
和樹があいつを褒めるのも気に食わなかった。
アパートに来てから直ぐに大野に渡された資料を見てまた大野の事を褒めていたのにムカついて「資料は後で良いだろ?和樹、今は俺との時間だ」と言って、何も言わさずベットに押し倒して、俺のグジャグジャの気持ちを和樹にぶつけ激しく抱いた。
俺の知らないうちに、和樹が大野と親しくなっていた事や就活で和樹が離れていきそうで……。
和樹が離れていかない様に、その体に思いをぶつけた
和樹の寝顔を見て呟いた。
「早く、就職決めてくれよ」
既に、内々定を決めてる者も少数派だが居たが、本番はこれからだ。
俺は直ぐに和樹も決まるだろうとタカを括っていた。
俺の周りでは就職試験の準備や情報交換と騒がしくなったが、既に就職が決まっている俺には関係ない。
和樹も他の奴らと同じく忙しそうだ。
和樹にとっても正念場だと解ってはいたが、学内で大野や同じ学部の奴らと立ち話しや親しそうに話す姿を良く見かける様になるとイライラする。
前は、毎日の様に会って当たり前の様に一緒に居たしセックスもしていたのが、1週間に1~2回となり日を追う事に会う回数も減り始めた。
周りも同じ状況だからと理解し、そんな時はLineや大学で話す事でも良いかと、我慢もしていた。
後、少しだ。後、もう少しだ。
和樹の就職内定するまでだと。
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