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第182話 愛おしさ(拓真)

ガチャ.ガチャ… ピンポン.ピンポン♪♪~ 「拓真、居ない?大学に行った?」 動く気も起きなくって、暫く拓真の部屋の前で座って待っていた。 10分程待ってるとカンカンカン…誰か?上がって来る靴音がした。 「変な人だと思われるから、帰ろうかな?」 落ち込んだまま立ち上がって、これから自分の部屋に戻るか?大学に行くか?悩んだ。 「和樹?」 名前を呼ばれて顔を上げると、拓真がコンビニに行ったのか?片手に、ビニール袋をぶら下げて立っていた 拓真の顔を見てドォ~と我慢してた気持ちの何かが出て、拓真に抱き着いた。 「拓真ぁ~」 涙まで出てきた。 「ど.どうした?何かあったのか?」 「拓真ぁ~.拓真ぁ~」 「取り敢えず、ここじゃあ話しが出来ない。部屋に入ろう」 和樹を部屋入れソファに座らせ、隣に座って話しを聞く事にした。 「どうした? 」 「んっく…えっく…初めて…うっく…就職面接…うぅ…落ちたぁ~…わぁ~ん」 そう言って俺に跨り抱き着いてきた。 和樹が面接したとは聞いて無かったから驚いた、俺には話して無い。 そう思ったが、落ち込んで泣いてる和樹にその事は言わなかった。 俺にしがみつき肩口に顔を埋め、わんわん泣く和樹が愛おしく感じたからだ。 落ちたと言って落ち込み、俺を頼りに縋り付く和樹が可愛く愛おしい。 小さな体で、必死に抱き着き縋り付く体を抱きしめ背中を撫でて励ましやる。 「本命なのか?」 頭を振り「うぅ…違うけど…えっく…うぅ俺のどこが悪かった…ひっく.ひっく…」 「そうか、始めから上手くいくわけもないし和樹はどこも悪く無い。たまたま運が無かったんだ」 「で、でも…うっく…OB訪問の…ひっくひっく…先輩にも…うぅ…落ちる奴は何回受けても落ちるし、受かる奴は全て受かる奴もいるって…うぅ…先輩の知り合いが…15回受けて全部落ちた奴居るっで…ひっく.ひっく…俺もそうなったら…うわぁ~ん」 確かに運が悪い奴もいる。 たった1回受けて、この落ち込みようはかなり精神的にキテルんだな。 「1回落ちたからって、全てこれから落ちる事になる訳ないだろう?縁が無かった会社なんだって、気持ち切り替えて次頑張るしか無いだろ?な、和樹」 「うっ…うぅ…解ってる…けど…今だけ…えっく…」 「解った。落ち込むだけ落ち込んで、後は這い上がるだけだ。落ち着くまで泣いていいぞ」 「拓真ぁ~」 ギュッとしがみつき抱き着く和樹。 庇護欲とまた落ちたら俺を頼って来るなら、こんな愛おしい和樹なら……また落ちても良いと悪い考えも浮かんでいた。 そんな気持ちを持ってるとは知らない和樹を励ます。 「泣くなって。次もチャンスはあるんだ。それにまだ就活始まったばっかりだろ?他の奴らも落ちても次って頑張ってるんだし、和樹だけじゃないから。受かった奴も1社だけで決める訳じゃないし。まだまだこれからだ。和樹の良さが解らない会社なんか放っておけ! 絶対、その内受かるから、な」 「うん、ありがとう」 「落ちる度泣いてちゃあ~ずっと目が腫れてブスになるぞ」 くっくっくっ… 「んもう、拓真ったら。励ましてんだか揶揄ってるんだか~」 「いや、ピーピー泣いて拓真ぁ~って抱き着いてくる和樹が可愛い~と思ってな」 「もう、こっちは落ち込んでるって言うのに~」 「大丈夫だ。まだ何社か受けるんだろう?本命もあるんだし、和樹の良さが絶対解ってくれる会社がある」 頭を撫で励ます。 「うん。1社落ちたくらいで落ち込んでられないね。うん、頑張る」 泣いて気が晴れたんだろう、笑い顔も出始めた。 良かった、俺なりに励ましたつもりだった。 「頑張れ!」 軽く唇を合わす。 「うん!」 和樹からもお返しのキス。 ここ最近、就活で会えない日が続き久し振りの触れ合いだった。 俺を頼り.縋り付く和樹が愛おしく、唇を離す和樹の後頭部に手を当て唇を追いかけ軽いキスから深いキスへ クチュクチュ…チュパチュパ…クチュクチュ… 久し振りの和樹とのキスに興奮してきた。 唇を離し「和樹、いいか?」 こんな時だが、俺は和樹を抱きたかった。 コクンと頭を縦に振り意思表示をするのを確認して、ゆっくりソファから床に移動した。 寝室まで待てない。

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