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第189話 噂(和樹)
1社内定貰えた事でホッとし、就活にも俄然やる気が出た。
それからも何社か面接や筆記試験などあり落ちたり受かったりと、7月末時点で7社受けて3社内定貰った。
本命は8月で、それまでも何社かまだ受けるつもりだ。
そんな時に、拓真の噂が大学内でも広まり始め、俺の耳にも届いていた。
武史からも忠告されていた。
「拓真が合コンとか飲みに行ってるって、知ってるのか?和樹」
「…うん、知ってる。誘われて仕方なく行ってるみたい。合コン行く時には行くって言ってくれるし」
確かに、前は合コン行く時は行くって言ってくれていたけど、最近は……ない。
けど、武史は拓真の事を余り良く思ってないから言えなかった。
「そうか、なら良いけど。この間も大学の構内で女と言い争ってたって噂になってるし、最近は合コンじゃなく女とデ-トしてるらしいぞ。街で見た奴いるらしい。大丈夫か?和樹」
デ-トしてるかどうかは解らないけど、映画を見たとか買い物に付き合ったとは、聞いた事がある。
「……一応、それも聞いてる」
「そうか、何だか拓真が遊び出してるって噂が広まって、女達が色めきだってるらしい。気をつけたい方が良いぞ。拓真にちゃんと話してるんだろうな」
武史が俺の事を心配して話してくれてるのは解ってる
噂に疎い武史にまで聞こえてくる位だ。
あの構内での事以来、拓真には女の子関係は言えずにいた。
「遊ばないで」「どこ行ってたの?何してたの?」「誰と会ってたの?」「行かないで!」
言いたい事や聞きたい事が山程あるけど、ウザいと思われるのが嫌で噂だけだからと、自分に言い聞かせていた。
「ありがとう、武史。拓真の事……噂だけだから……自分で見た訳じゃないから……拓真を信じる」
「そうか。余計なお世話だったか?でも、和樹。無理するなよ」
「武史が俺の事を思って言ってくれてるのは解ってる武史だけが俺と拓真の事を知ってるしね。ありがとう」
武史との遣り取りを思い出していた。
就活を早く決めれば良いのかも知れないけど……一生の問題だし、拓真の職場の近くに行きたいから少しでも多くの内定を貰って良い所を選びたい。
今だけ我慢すれば良い。
もう少し.もう少しだけ。
それでも悪い事が頭を過る。
もし、拓真が浮気してたら?
そんな事ないと信じたいけど…もし浮気してたら、元々は拓真は女の子だけを相手にしてた……女の子なら我慢も出来る…かも。
拓真は女の子には冷たい。
どうせ俺の事アクセサリー位にしか思ってないって言ってたし。
拓真が女の子を抱いてる姿を妄想すると、心臓がギュッと締め付けられた。
拓真、どうして遊ぶの?
俺だけじゃ不満なの?
俺、拓真と一緒に居たいから、今、頑張ってるのに。
この日の夜は1人で考えて不安で涙が出た。
拓真の気持ちが解らない。
俺……卒業しても、拓真と一緒に居ても良いの?
この先、上手くやっていけるか不安ばかりが胸に広がった。
俺は拓真に内緒で1つ決断した。
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