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第195話 約束(和樹)
“明日から2週間位、叔父さんの所でバイト。暫く会えないな。お盆は和樹は実家帰るのか?”
拓真からのLineがきた。
“8月の前半は面接が1社ある。日には決めて無いけど、夏休み中に3日ぐらい実家に顔を出そうかなって思ってるけど”
“だったら、俺が戻ってきたらまた連絡するから、また花火大会行こうぜ。その後、俺の所に何日間泊まれる?”
“うん。花火大会楽しみ~♪ 今年も拓真と見れるんだね😀その後3日位なら泊まろうかな?後半に、また面接入ってるから”
“じゃあ、そうしよう。また連絡する”
“うん、待ってる。バイト頑張ってね👍”
"OK”
Lineの遣り取りを見直してた。
拓真と今年も花火大会行けるんだ。
忘れて無かったんだ。
花火を見上げて「また、来年も一緒に来ような」と約束した事覚えてくれてた。
そんな些細な事でも、今の俺は凄く嬉しかった。
あの日、誰も知らないバ-で、初めは店の中の雰囲気に圧倒されて、場違いな所に来たと後悔したけど、どうせ2度来ない所だと開き直りカウンターの端で、1番安いお酒を飲み程よい騒つきと店に流れるBGMのjazzが心地良く、日々の喧騒を忘れさせてくれるようだった
メニューを見た時は余りの高いお酒ばっかりで驚き、帰りの電車賃を考えて1番安いお酒にしたら、マスターもそんな頼み方する人居ないのか?少しびっくりしてたなぁ。
安いお酒をチビチビ飲んで、あの日拓真の事をずっと考えて涙が出てるのも気が付かなかった。
拓真、どうして?俺と別れたいの?なぜ、浮気?違うかも…本気なのかも。
そんな事がぐるぐると頭を回ってた。
問い詰める?噂じゃ無い実際に現場に居て女の子とセックスしてる喘ぎ声を聞いてる。
どうしたらいい。
別れたく無い!
俺は……拓真が好きだ。
どうしたら良いんだろう?
1人静かに考えてると、周りの事が気にならなくなった。
まるで、ここに俺だけが居て他の人は誰も居ない様な錯覚さえした。
グタグタ考えても、結局は拓真次第だと思った。
俺からは別れない、好きだから。
問い詰めてウザがれて「そんなウザい事言うなら別れる!」って言われるのが怖い。
何も見てない.聞いてない事にする事にした。
そう結論を出した所で、目の前におしぼりをマスターから手渡され「拭いた方が良い」そう言って仕事に戻って行った。
考え事に集中してて、そこで初めて涙が出ていた事に気付いた。
1杯だけ飲んだ安いお酒のお金を払って、一緒に入店した人は知り合いと話し中だったから、お礼も言わずに店を出て、自分のアパートに帰ってから声を出して泣いた。
お礼も言わず失礼だったかな。
優しく大人の雰囲気で、背も高くガッチリした体でス-ツをカッコ良く着こなし、目鼻立ちがはっきりしてて俳優さんみたいだった。
あの人みたいな人を美丈夫って言うんだなぁ~と、今更だけど思い出した。
あの時はそんな余裕無かったから。
泣いて.泣いて泣き疲れた。
一気に色んな事があって追いついていけない。
でも、拓真から“別れる”と言われない限り、俺からは絶対言わない事だけは決めた。
それからも疑わしい時があったけど……言わずに居る
何度か電話しても携帯の電源が切っていて通じない日もあった。
次の日に折り返し電話くれたけど…。
「寝てた~。携帯のバッテリーが無かった。ごめんな」
そう言ってたけど……疑わしい。
そんな事が何度かあって電話はし辛くなって、Lineにしても既読がなかなか付かない事もある。
何してるの?
誰といるの?
問い詰めたい気持ちと黙っていれば、このまま拓真と付き合って居られると狡く考えた。
拓真とどうなるか解らない不安で、拓真には内緒で遠くの会社も1社受ける事にした。
前々から気になっていた会社で、拓真の勤める会社からは遠く諦めていたけど……受けるだけなら良いかと思い始めた。
こんな状況の中で、拓真からの嬉しいLineがあった、それだけで俺は浮かれているのが自分でも解った。
お手軽な奴と自分でも思う。
でも、この花火大会が今の俺達の突破口になればと密かに期待してる。
花火大会、楽しみ♪
拓真、覚えていてくれて、ありがと。
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