196 / 379

第197話 花火大会②(拓真)

屋台でたこ焼き.唐揚げ.ポテトと飲み物を買って、去年見た土手に行った。 会場から少し離れてるのもあり、人は疎らだった。 「拓真、レジャーシート持って来たから敷こう」 「おっ、偉いな。学習してんな」 「まあね」 2人用の小さなレジャーシートに座り、屋台で買って来た物を置いた。 時間を見ると、あと少しで花火大会が開催される時間だ。 「もう直ぐ始まるぞ。腹減ったから食べながら見ようぜ」 「うん。そうだ、お握り持って来たからそれも食べよう。屋台で買うとは思ったけど」 鞄から4つ小さめのお握りを出してきた。 こういう所好きなんだよなぁ~。 さり気ない気遣いって言うか、優しさで感激だ。 「サンキュー。気が効くな」 「中身はマヨシーチキン.たらこだよ」 「マジ、俺どっちも好き!」 「良かった~。じゃあ食べよう」 和樹の握ったお握りを一口食べると、会場にアナウンスが流れた。 「おっ、始まるみたいだ」 「楽しみ~♪」 ドッド一一一バ一ン! バン.バン! 🎆 「うわぁ! 綺麗~」 打ち上げ花火を見上げ喜んでる姿を見て、今年も一緒に来れて良かったと思った。 幾ら就活で忙しかったりなかなか会えない日が続いたとしても、この花火大会だけは一緒に過ごしたかった 去年の花火大会の時は、和樹を気になり始めていた所だった。 俺的には、まだ和樹を好きだと言う認識はなかったが気になっていた時点で、既に好きだったのかも知れない。 それから和樹と付き合う為に、俺なりに努力しアピールし躍起になってた。 そのかいもあって、今年もこうして一緒に花火大会を見てられるんだ。 鮮やかな色の花火の光を浴びてる和樹の横顔を見て、去年の事を思い出してた。 一緒に花火を見上げ和樹の作ってくれたお握りを頬張り、何だか気持ちが洗われるようだ。 初心に帰るって、こう言う事を言うんだな。 忘れてた気持ちを思い出した。 バンッ.バンッ.バン! 🎆 ヒュー一一一ドンッドンッド一ン! 🎇 次々と打ち上がる花火。 「やっぱ会場で見ると音とか凄い迫力だね? 凄~い綺麗!」 「去年より凄くねえ?」 「そうかも~」 レジャーシートに座り両足を伸ばし、両手をレジャーシートに付けて同じ方向を向き、打ち上げ花火を見上げていた。 俺は少し手を晒し、俺の指先と和樹の指先が重なる様にした。 ロマンチックな雰囲気の中で、和樹に触れていたかった。 「拓真?」 「誰も見てない。皆んな花火に夢中だ」 「うん、そうだね」 嬉しそうに微笑んで、和樹からも少し指先に力を込めたのが解った。 指先から手の甲全体を俺の手で包み重ね、そのまま黙って、次々上がる花火を見ていた。 最後の花火は圧巻だった。 ヒュー一一一ドンッドンッドン! バリバリバリ……ドンドン.ドン! バン.バン.バン! バリバリバリ…… ヒュー一一バン.バン.バン! ドン.ドン.ドン! 「うわぁ~、凄~い」 「すげぇ~な。最後か?」 「そうかも。綺麗.綺麗~」 ヒュー一一一バンバンバン! バリバリバリ… 最後の花火が終わると、何だか寂しさが湧き起こった 花火終了のアナウンスが流れ、帰る人やそのままの人とごった返す会場。 俺達はそのまま少し余韻に浸っていた。 「何だか、夏も終わりって感じだね?」 「そうだな」 「でも、今年も一緒に花火見れて良かった。ありがと拓真」 「来年の今頃は働いてるんだな。でも、お互い忙しくっても、また花火大会来ような」 「うん! 絶対来る! どんな用事があっても、この花火大会は一緒に見たい!」 「おっ、力入ってんな。俺もこの花火大会は絶対に一緒に見る! 約束な!」 「うん! うん!」 何度も頷き嬉しいって顔を素直に出す。 今日、来て良かった。 俺の中のギスギスしてたりイライラしてた暗い気持ちが穏やかになった。

ともだちにシェアしよう!