206 / 379

第207話 (拓真)

和樹の本命の会社面接も終わって、受かっても落ちても、これで就活は終わりかと俺も喜んだ。 ダメでも何社か受かってるんだし、そこから決めれば良いと考えていた。 夏休み終わりの何日か前にLineがきた。 “内定決定した~🤣” 俺も自分の事の様に喜んだ。 “やったな‼︎ おめでとう🎊” 少し遣り取りして、和樹が凄く喜んでたのが解った。 これで和樹の就活が終わった。 叔父さんの会社でバイトして金も貯まったし、和樹と就職内定祝いにどっか行こうかなと、これからやっとゆっくり和樹と過ごせるんだと喜んだ。 大学始まる前の日にアパートに帰ってきて、和樹に戻ったとLineした。 "お帰り~😃” 返信Lineがあって、可愛い~なと思った。 和樹も実家でゆっくり過ごしたとあったから、就活が終わってホッとしたんだろう。 明日から大学か。 4年になってから、俺の周りの環境が変わった。 就活で、皆んな大人に近づいていく。 俺だけが、学生気分が抜けてないような焦りを感じてたが、もう、そろそろ内定も決まっている学生が多いはずだ。 大学での疎外感は無くなるだろう。 就職したら、気楽な身分でも居られない。 最後の学生生活を和樹と一緒に楽しもうと思った。 そう思っていたのは俺だけだった。 大学が始まって、久し振りに会う人と話したり声を掛けられたりして、和樹になかなか会えずに居た。 学食に行ってもタイミング悪かったりで、会えなかった。 会おうと思うと会えないんだよなぁ~。 帰りにLineしようと構内を歩いてると、大野と大野の友達と和樹の3人で立ち話をしていた。 近くまで行くと、話しの内容が聞こえた。 「和樹、本命の内定貰ったんだって」 「うん。大野君達もでしょ?」 「俺は第1希望はダメだったけど、第2希望は内定貰ったから、そっち行くつもり」 「俺は第1希望受かったから、そこに決めた」 「やっと、就活から解放される~♪」 「和樹は?何社か受かってるんだろ?やっぱ本命に決めてんの?」 「一応、そうしようと思ってるけど…。もう1社だけ受けてみようと思ってる所があるから」 「最後の最後まで頑張るなぁ~」 「でも、一生もんだろ?納得するまでやれば良いじゃん」 大野が和樹の頭を撫でて話すのにムカつく。 それより和樹がもう1社受けるとは聞いて無かったのにもムカついた。 何で、俺に言わないで大野達には話すんだ! 「じゃあ、和樹も決まったら、就活お疲れ会しようぜ」 「え~、俺の事を待って無いでやって良いよ」 「先に、他の奴らともするし和樹ともしたいんだって。ま、お互い労うっつ-か.お疲れ会って言う名目の飲み会しようぜ。頑張った俺達の細やかに楽しもうって事で」 「それなら良いよ」 「そう良かった。和樹の学部の奴も何人か呼ぶし」 「うん」 「じゃあ、あと少し。頑張れ」 肩をポンッと叩き、大野とその友達は歩き始めた。 ボ-ッと大野達を見てる和樹に背後から声を掛けた。 「和樹、ここに居たのか?今、Lineしようかと思ってた」 「拓真」 「今の大野達?」 「うん。今度、皆んなで就活お疲れ会しようって、声を掛けてくれた」 「そう、で、いつなの?」 「まだ、決まってない」 「ふ~ん……和樹って、この後予定は?」 「あっ、ごめん。バイト頼まれてピンチヒッターで入る事になった」 「解った。バイト頑張れ~」 「うん」 大学の帰り道を並んで歩き、駅で別れた。 和樹はバイトへ、俺は暇になり少しフラフラしてから帰る事にした。 何で?和樹、あと1社受ける事を大野達に話して、俺には話さないんだ? もう本命が内定してるから、俺には言っても仕方ないと思ってんのか? 何だかムカつく。 本命が受かって、やっと一緒に過ごせると思ってただけにがっかりし、就活を止めない和樹にイラつく。 イライラした気分で歩いてると、背後から俺の名前を呼ばれた。 「拓真ぁ~、帰り?」 誰だっけ?ま、いいか。 「まあな」 「何か、浮かない顔してるぅ~。久し振りに会えたし、ご飯でも行くぅ?」 アイメイクバッチリで顔を斜めにし、上目遣いで話すぶりっ子さが鼻に付くが……どうするか?と考えた。 「拓真ぁ~、行こうよ~♪」 俺の腕を掴んで左右に振り、可愛さアピールだ。 ま、暇潰しに行くか。 「ああ、いいぜ」 「やった~。じゃあ、ちょっとお洒落なお店知ってるから、そこ行こう」 「高い所なら、無理!」 「大丈夫、お値段はそこそこだよ~♪」 「解った」 名前も知らない女と、飯を食べに行く事にした。 1人でイライラしながらフラフラするよりマシかと思った。

ともだちにシェアしよう!