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第215話 卒論(拓真)

「拓真って、卒論やってる?」 「はあ?何で、今その話?」 なぜ、卒論の話が出てくるのか?解らなかった。 「ん、この間、達也達と飲んだ時に就活終わったら、今度は卒論か~って話しが出て」 大野達と飲んだ時に、そんな話しになったのか? ふ~ん。 「俺は夏休み中に叔父さん所でバイトしながら、実家で卒論は少しずつやってたからな。ほぼ終わってるな後は、手直しして提出するだけ」 驚いた顔をして見てる和樹。 は~ん、さては、就活で忙しくって卒論の事は頭に無かったみたいだな。 俺はこう見えて計画性はある方だ。 「……拓真って凄い! 俺……全然頭に無かった。この間卒論の話が出て焦った。でも、他の人もやっと就活終わって、まだ手を付けて無いって人が多かったから……ちょっと安心してたのに~」 「卒論って1週間や2週間じゃ出来ないぞ」 「マジ~、ヤバっ! 俺…就活終わって安心してたから…バイト結構入れちゃった」 何で?就活終わって安心してバイト沢山入れるんたよぉ~! そこは俺と一緒に過ごすんじゃねぇ~の? 不満に思った。 「はあ?何で、バイトそんなに入れるんだよ?」 「だってぇ~、大学も単位殆ど取れてるし、週1~2行けば良いから……時間出来ると思って。あと、就職したら引っ越し代は会社が出してくれるとは思うけど……電化製品も古いのは捨てて新しいのを買おうかなって…他にもお金掛かるかも知れないから今の内にバイトして貯めておこうと思って……」 金が必要な事は解ったが……納得いかなかった。 「そんなの親が出してくれるんじゃねぇ?」 「えっ、親には大学費用とか仕送りもして貰ってるから、これ以上は言えないよぉ~」 親思いだな。 和樹の優しさが解る。  「じゃあ、どうすんだよ?」 「ん~、昼は大学か図書館に行って資料集めて卒論やる! バイトは夜だけだから」 はあ~! また~? 溜息をついた。 「だったら、また時間ねぇ~じゃん。俺、和樹が就活終わったら、やっと一緒に過ごせると思ったのに~」 顔の前に手を合わせて謝る和樹。 「本当に、ごめん! 俺もそのつもりだったけど……卒論が終わるまで……ごめん! あとね、バイトは自分の為もあるんだけど、卒業旅行の費用も貯めたいと思って……前に、皆んなと一緒に卒業旅行行きたいって話ししてたし、拓真とも2人で卒業旅行行きたいから……ごめんね。12月の頭には卒論出さないと……就職ダメになっちゃう」 後2ヶ月弱か~。 仕方ねぇ~か。 和樹が話す卒業旅行の費用とか言われたら、俺も密かに楽しみにしてるしな。 「解った。なるべく早く卒論終わらせろよ。俺も手伝える所は手伝うから」 そう話すとパアッと明るい顔になり、抱き着いてきた 可愛い~な。 「拓真ぁ~、ありがとう。俺、なるべく早く卒論終わらせるように頑張る! 」 ったく、俺も和樹には甘いと思いながら抱きしめた。 それから、また暫く和樹の忙しい日々が続く様になった。 俺も昼には大学の図書館での調べものや資料集めに付き合ったりしたが、学部が違う為に協力出来る範囲も限られていた。 昼に会えていたが、夜にはバイトに行き忙しそうな和樹に我儘を言えずに、また鬱憤を晴らすように夜の街に出歩き始めた。

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