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第217話 過ち②(拓真)
それから和樹とは俺が大学に行った時に図書館で会ったりしてた。
和樹は大学の図書館で資料集めに必死になり、俺も手伝う事もあった。
夜にバイトが無い日は和樹を俺のアパートに呼んで過ごし、次の日には夕方からバイトに行った。
和樹と会ってる時には楽しいし、俺の気持ちも穏やかになるが、何日間か会わない日が続くと寂しくなり鬱憤が溜まってくる。
そう言う時は、俺はあの店に行くようになった。
週1~2回の割合で顔を出す様になった。
あれから何度か店に飲みに来ていた。
今日も飲みに来た俺はカウンター席に座り、マスターとも顔馴染みになり話しもする様になっていた。
マスターはマッチョな癖に、オネェ言葉をチラホラ使うのが笑えた。
今までは誘われても断って居たが……ここに来ると周りでは駆引きを楽しんだりイチャイチャしてるのを見せられると感覚が麻痺してきそうだ。
店の雰囲気がそうさせるのかも知れない。
「あれ?拓真?」
俺の名前を呼び驚く声のする方に振り向いた。
あの日、和樹と間違えて寝たあいつが居た。
今まで、この店で会った事が無かったから忘れつつあった。
「あっ、何で居るんだ?」
「はあ?それはこっちの台詞だよ~」
まだ、9時だと言うのにかなり飲んでる様だ。
フラフラとし勝手に俺の隣に座った。
「あら~莉っちゃん、知り合い?」
マスターが話すと「うん。ここじゃ無いけどね~♪」と上機嫌に笑って話す。
マスターに酒を頼み俺と向き合う。
「僕、莉久(りく)って言うんだ~。莉っちゃんでも莉久でもどっちでも良いよ~♪」
「いつ来たんだ?全然知らなかった」
マスターが酒を置き立ち去り、グビグビ…酒を飲む莉久。
「ん~さっきかなぁ~。ここの前に飲んでたから~」
「結構、飲んでんなぁ~」
「ん~楽しい~♪ 拓真も飲もう~よ♪」
マスターに俺の分も勝手に酒を頼んでた。
置かれた酒は強く、カ-ッと胸が焼けるようだった。
「すっげぇ~、強え~酒だな」
「拓真ぁ~バカだねぇ~。強い酒はチビチビ氷溶かしながら飲むんだよぉ~。酔いも早いから安上がり~♪」
「ったく。酔っ払いに絡まれた気分だ」
悪態を吐くと体を寄せて来て耳元で囁かれた。
「誰が酔っ払い~♪ そんな事言ってぇ~。お互い熱い一夜を共にした仲じゃ~ん♪」
あの日を思い起こさせる様に、俺の太腿から際どいところを数回撫でてきた。
俺も顔を寄せ、この駆引きの遊びに付き合った。
「そんなに、忘れられないのか?」
プイっと顔を背けて口を尖らせる。
「まあね。今日も彼氏と喧嘩して~、頭にきて飲んでたんだ~♪ 拓真と会う時って、いつも俺が落ち込んでる時だよねぇ~♪ 変な巡り合わせ♪」
「だな」
また、振り返り俺を誘う目で見る。
コロコロ表情が変わる奴だ。
そんな所が和樹に似てると思った。
「拓真ぁ~、慰めてよぉ~♪」
そうくると思ったが……どうするか?迷って居た。
この間は、俺もしこたま飲んでたからな。
暗闇って事もあったが、背格好と顔が和樹に似て酔っ払って和樹だと思い込んで抱いたが……実際には、似てるのは背格好だけだった。
この前とは状況が違う。
和樹じゃないと解ってる状況に俺は迷う。
「拓真ぁ~良いじゃん♪ 1回も2回も一緒だよぉ~♪」
甘える莉久が可愛い~と、俺も酔い始めてたのかも知れない。
面倒な事に巻き込まれるのは勘弁だと、先に牽制しておいた。
「ん~、そうだなぁ」
「ね.ね。良い~じゃん♪」
「彼氏居るんだろ?バレたら厄介じゃん」
「バレ無いから大丈夫♪ それにあっちも浮気してんだから~」
「莉久、これっきりでもう抱かないぞ。今回だけだ。今後は、どんなに言われても慰めたりしないからな?なあなあになって、セックスフレンドにされるのは御免だからな」
酔っ払いに言っても仕方ないが、念の為に話すと莉久も軽く返事をする。
「良いよぉ~♪ 拓真の言う通りにするぅ♪ 拓真の気が変わらないうちに出よう♪」
腕をグイグイ…引っ張る。
残りの強い酒をグッと飲み干して会計をし、店を出た
莉久が知ってるラブホにそのまま引っ張られるように入って行った。
妖艶な莉久に誘われるように、俺は莉久の中に激しく突き挿れていた。
今度は和樹じゃ無いと認識して……。
また、俺は間違いを犯してしまった。
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