217 / 379

第218話 (和樹)

その頃の俺は拓真に話した通り、就活がやっと終わったと思ったら、今度は卒論で……大学最後の洗礼を受けて居た。 でも、それは俺だけに限らず大学4年生になれば誰でも通る道だし、卒論提出しなければ、あんなに苦労した就活もパア-になってしまう。 12月までは卒論とバイトを頑張ろうと目標を立てていた。 卒論は12月の初めに提出する予定だ。 バイトは拓真に卒業旅行費と電化製品とか就職後の為に貯めておきたいと話したのは本当だけど……。 実は、クリスマスにビジネスバックを拓真に送りたいと思っていた。 仕事でも使って貰えるし、以前にフラっと入ったお店で見た時に凄く良いビジネスバックがあった。 俺は一目で気に入ったけど、良い品らしく値段も凄くた高かった。 大学生の俺には5万は大金だ。 でも、長く使って貰える物を渡したかった。 鞄の裏側にネ-ムも入れてくれると言うし、拓真もきっと喜んでくれると思う。 数的に少なそうだったから売れちゃうと嫌だなと思って、この間お店に行って予約して来た。 後は、クリスマス近くになったら代金と商品引き換えにした。 その為にもバイトも頑張るつもりだ。 それからの俺は忙しい日々を送って居た。 大学に行かなくて良い日でも大学の図書館に行き資料集めや調べ物をしたり、夜にはバイトとし帰って来てからも卒論の事を考えたりと、寝る間も惜しんで頑張った。 拓真の部屋に週1泊まりに行き、それ以外では大学の図書館に拓真が暇な時来てくれたり、そんな2人の生活が続いていた。 けど……俺がバイトの時、休憩中とかにLineや電話しても電源が切ってる時がある。 また? 2時間後に返信あったり、次の日に返信があったりとマチマチだった。 いつも言い訳は充電切れてたとか、電源切ってたの気が付かなかったとか言ってるけど……。 この間、部屋に行った時にコ-ヒ-を入れようとしたらマグカップの縁に落ち切れなかった口紅が薄っすらと残っていた。 部屋に、女の人を入れたんだ? 誰? どうして? 何してたの? 不信感でいっぱいだった。 拓真に求められてもその気になれず、拓真がシャワー浴びてる間に狸寝入りしてしまった。 他にも、図書館で卒論の準備をしてるとやはり同じような人が何人か居て話してると、突然、拓真の話をされた。 「そう言えば、和樹って本郷と仲良かったよな?この間、綺麗系の女の子と腕組んで歩いてたぞ。羨ましいよなぁ~」 「そうなんだ。拓真、卒論も終わってるらしいからね。モテるし女の子が放って置かないんじゃないの~」 無理に笑ってそう答えるのが精一杯だった。 「だよなぁ~。1回で良いから、本郷みたいにモテてぇ~」 「その前に、卒論やっつけちゃおう」 「そりゃそうだ」 話を逸らし、卒論の資料に目を向けたが、全然頭に入ってこなかった。 そんな話しを聞かされ、時々、拓真とは連絡取れず不信感と疑惑が俺の心に広がっていた。 拓真のアパートで見た光景を思い出し……。 俺からは連絡し辛くなっていた。 浮気してるとは思ってる。 でも……問い詰めたりしない。 卒論提出終わったら、クリスマスには……。 そう思う事で、拓真の浮気は考え無い様に卒論とバイトに没頭し、拓真から連絡あった時には何も知らない振りで会っていた。 自分では気がつかなかったが、食べ物もヨ-グルトだけだったり、賄いの軽い食事で済ましたりと食べ物が喉を通らなかった。 どんどん食欲が無くなっていった。 そんな生活をしてた所為で、忙しさで体は悲鳴を上げ心身共にバランスが取れて無かった。 そんな日々が1ケ月近く続いた。 その日は、昼近くに起きて相変わらず食欲が無いからと、何も食べずに卒論を部屋でやっていた。 夕方になりバイトに行く時間が迫っていた。 「ヤバっ、集中し過ぎた~」 急いでバイトに行く準備し、玄関に向かった時にフラっと目眩がした。 少しだけジッと動かずやり過ごすと、目眩も治まった ここ2~3日目眩がする時がある。 卒論の事で頭を使ってるからだ~と、日頃どんだけ頭を使って無いのか~って、自分で思っていた。 「遅刻しそう~」 そのまま急いで部屋を飛び出した。 その日のバイトの時もクラっとする事があったが、バイト先の忙しい時間帯だからだとやり過ごしていた。 バイトが終わった帰り道で、自分の身に大変な事が起きる事になるとは……。

ともだちにシェアしよう!