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第222話 庇護欲(海都)

静かに泣く姿を見て健気(けなげ)だと、心の中で思って話しを聞いていた。 この小さな体で……辛い思いをさせてる男の事何か ‘別れてしまえ’ と言いたいのを堪えた。 ‘なぜ、何も言わないんだ’ ‘1人で悩んでも仕方無いだろう’ と、言いたい事は山程ある。 話しを聞いてるだけで、なぜか?イラつく。 俺には、何も言う権利も無いし関係無い。 この子の話しだけで、本当の事は解らないし。 俺に出来る事はずっと誰にも言えずに、我慢してた話しを黙って聞いてやる事だけだ。  お粥を半分も食べずに、泣き疲れてまた眠ってしまった。 涙の跡が残る寝顔を暫く側で見ていた。 こんなになるまで……。 今時の若い子の恋愛は、もっとドライで相手なんか次から次へと乗り換えてると思っていた。 多くの若者はそうだろう。 そう思うと、この子の健気さが貴重に思えた。 もっと楽な恋愛はたくさんあるはずだ……。 今は何も考えずに、ゆっくり休んで欲しい。 ベットから立ち去り、寝室のドアをそぉっと閉めた。 それから俺は書斎じゃなく、リビングにノ-トパソコンを持込み仕事をしていた。 あの子がいつ起きて来ても解るように。 夕方近くに寝室から出で来た時には、顔色もだいぶ良くなって安心した。 「すみません。大変お世話になりました。見ず知らずの俺に良くして貰って、何てお礼言ったらいいか……」 そうか、‘R’moneの階段で会ってる事に気付いて無いのか。 そう言う俺も直ぐには、思い出せ無かったからな。 「見ず知らずって……。思い出せないか?1度、会ってるんだが…」 首を傾げ考え込んでるが、やはり思い出せないようだ ヒントを与える事にした。 「‘R’mone!」 「‘R’mone?………あっ、あの時の」 暫く考えて、やっと思い出したらしく俺の顔を見て驚いていた。 「思い出したか?私も直ぐには気付かなかったが、どこかで見た覚えがあると思っていた」 「すみません。1度ならともかく2度も助けて頂いて。ありがとうございました」 「礼はいい。そこに突っ立って無いでソファに座りなさい」 ソファに座るのを確認して、俺もノ-トパソコンを閉じコ-ヒ-を片手にソファに移動した。 「何か、飲むか?」 頭を横に振り「大丈夫です」と返事が返ってきた。 「改めて自己紹介しよう。私は朝倉海都だ。一応、会社経営をしてる」 「俺は明石和樹です。大学4年生です」 「和樹君か~。少しは、気分は良くなったかな?」 「はい。ふかふかの布団とベットで良く寝れました。気分もスッキリです」 「そうか、良かったな。夕飯どうかな?」 このまま帰しても、また何も食べないのだろうと夕飯に誘った。 なぜ、誘う気持ちになったのかは、良く解らないが放っておけなかった。 昨日の大人びた泣き顔と違い、笑って話す顔が可愛らしく幼さが見え隠れした。 こう言うのって、庇護欲が唆るって事何だろうか? 初めての感情で戸惑う。 「夕飯?えっ、もうそんな時間ですか?ヤバいッ! バイトに行かなきゃ」 焦って話すが、こんな体調を崩してまだバイトに行こうと言うのか? 「今日はバイト行くのは止めた方が良い。何のバイトしてる?」 「居酒屋です。でも、急に休むなんて迷惑掛けてしまう」 「居酒屋か。また具合が悪くなって、倒れたらどうするんだ?そっちの方が、店にも迷惑掛けてしまうと思うんだが」 正当な言い分に考え込んだようだ。 「……そうですね。今日は止めておきます。電話して休み貰います」 俯いて話す姿に、幼い子供を叱ってしまったような後味が悪い。 そんなにキツくは言って無いが……。 「言い辛かったら、保護者代わりに私から電話しようか?」 少しの冗談を交えて話す。 俯いた顔を上げ、俺を見て拗ねる顔で話す。 「俺、小学生じゃありませんから。自分で電話ぐらい出来ます」 泣いたり笑ったり拗ねたりと、表情がコロコロ変わる この年代ならではの感情が表情に出るんだろうか? 俺ぐらいの年齢になると周りには居ない。 話しをしてて自分も若返ったような不思議な感覚だった。 「悪い.悪い。流石に、小学生には見えないが高校生には見える」 「……高校生に見られても嬉しく無い」 ジト~っと見る顔が可愛いらしい。 「ほら、直ぐに電話しなさい。それで食事には付き合ってくれ」 「……はい。あの…食事まで……ご迷惑じゃ」 「どうせ、私も食べるんだ。1人で食べるより誰かと食べた方が楽しい」 「それなら」 ソファの所に置いてあった鞄を見つけ、スマホを探し電話を掛け話し始めた。 さて、どこに行くか? まだ、普通の食事はいきなりは無理か? そうだなぁ~、あの女将が営んでる小料理屋にするか。 年齢は結構いってるが人の良い女将だし、店もこじんまりとしてるし、女将の人柄が溢れてる様な家庭的な料理と店の雰囲気も良い。 話しをして体に負担の無い料理をお願いしよう。 ‘R’moneの他に、俺が隠れ家としてる小料理屋だ。 ‘R‘moneは、静かに飲みたい時や仕事が上手くいった時に祝杯を1人であげたい時に行く場所だ。 声をかけられ良い相手が見つかった時には…ま、たまには摘み食いもするが。 それとは別に、月に何度か家庭的な雰囲気を感じたい時や癒しを求めて、女将の居る小料理屋にも行く。 謝ってるのか?頭を縦に振り、話しをしてる和樹君を見ながら考えていた。 「すみません。具合悪いからって話したら、昨日も顔色が良く無かったから早く治す様に言われ、お休み頂きました」 「そうか。少し経ったら出よう」 「はい」 こうして2人で、食事に行く事になった。

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