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第228話 確信(和樹)

卒論も何とか目処がつきそうだ。 後は…構成を確認して、パソコンに打ち込めば大体終了だと思う。 朝倉さんとの話しも多いに参考になった。 あの日から「きちんとご飯食べてるか?」「卒論は捗ってるか?」と朝倉さんからLineや電話でさり気なく気に掛けてくれる。 最初は、俺が車の前に倒れたのを責任を感じて連絡くれてると思ったけど……。 それから、実際にIT企業で仕事をしてる話しを聞きたかったから、初めて食事に誘われた時に行く事にした その時に、卒論の事を話したら仕事面の話しやこれからのIT企業で生き残る為の問題点と、やはり現場じゃないと解らない事が聞けて卒論の役に立った。 食事は中華だった。 初めて食卓が回る本格中華に緊張した。 前よりは少し食べるようにはしてるけど、まだ胃が受け付けないからお粥とか軽めの物を選んで食べたけど……途中で席を外してトイレで吐いてしまった。 申し訳なく思い何も言わずにいた。 デザートはゆっくりと少しずつ食べた。 全部美味しそうなのに勿体無い事をした。 そんな事もあったけど、それからは朝倉さんは時々俺のバイト先にも食事をしに来るようになった。 「朝倉さんが来るような所じゃ無い」と話したけど 「どうせ、食事しなきゃいけないし接待とかで良いもんは食べてるから。たまには良い」 社長ともなるとそんなものなのか?と思ったけど、朝倉さんの庶民的な所は好感が持てた。 たまに、俺のバイトが終わる時間に車で送ってくれたりした。 その時に、駐車場で1時間ぐらい話し込んだ事もあった バイトの事.卒論の事.そして拓真の事。 拓真とは最近卒論も目処がつきそうだから、時間がある時はマメに俺から会うようにしてると話した。 今まで卒論.バイトと時間が無いと思ってたけど……時間は、自分で作れば良かったんだと反省した。 バイトで遅くなって昼まで寝て、それから卒論を考え夕方か9時頃にバイトに行く生活だったけど、夕方からのバイトは11時頃に終わってた、その後に、拓真の所に行くとか9時からなら夕方から少しでも一緒に過ごして、そのままバイトに行けば良かったんだ。 今になって…少し時間に余裕出来てから考えつくなんて……俺ってバカだ。 朝倉さんが話し易い雰囲気を作ってくれるから、つい俺は弱音や愚痴を言ってしまう。 「私の事は、お地蔵さんか壁だと思って1人で抱え込まないで辛い時には吐き出しなさい。和樹君より歳いってる分、黙って聞いてあげられるし時には良いアドバイスもしてあげられるよ。自分の体を労わりなさい」 そんな風に言ってくれた。 やはり大人だなっと思った。 拓真とは不審に思う事もあるけど、俺が努力すれば会う時間も前より増えて、少し気持ち的にも前よりは安心していた。 そんな時だった。 その日はバイトは無かった。 卒論も順調に進み、昼過ぎに気分転換も兼ねて拓真の部屋に行こうかと思った。 そうだ、夕飯を作って、その日は泊まっちゃおうと思ったら無性に拓真に会いたくなった。 一応、拓真にLineを入れた。 “夕飯、一緒に食べよう。今から買い物して行くね” たまに、バイト行く前の数時間夕飯だけでも食べて過ごす時もあるしと、同じようなLineをした。 俺は会いたい気持ちが強くって、返信も待たずに準備して出掛けた。 拓真の最寄り駅で降りて、いつも利用するス-パ-に寄って買い物袋をぶら下げて、拓真のアパートを目指していた。 もう少しで、拓真のアパートが見えてきた。 居るかなぁ~。 立ち止まりスマホのLineをチェックした。 既読になって無かった。 居ないのかも……それとも……不安が広がった。 その時、アパートの階段を拓真が降りて来た。 あっ、居た~。 階段を降りた拓真に、先に降りてた派手な服を着た女人が待って居て腕を組み始めた。 そのまま駅方面に2人で話しながら向かった後ろ姿を隠れて見て居た。 女の人が下で待ってたのは、拓真だけ見てたから気付かなかった。 何で? 今からどこかに行くの? 出掛ける時とは違って、拓真の格好は部屋着だった。 ……と言う事は昨日から泊まった? ボ-然としてた。 頭をガツンッと叩かれた気がした。 涙も出なかった。 それでも真意を確かめたい気持ちもあり、拓真の部屋の前で待ってた。 15分程でカンカン…と上がってきた靴の音。 ハッとし、普段通りを装った。 部屋の前に居る俺に驚いた顔をした拓真に、俺は笑顔を見せ話した。 「拓真ぁ~。どこ行ってたの?Line見た~?」 「和樹……コンビニ。行ったら、財布忘れてた事に気付いて戻って来た。Line見てねぇ~。ごめん。どうした?バイトは?」 本当はバイトは無かったけど……。 「夜からだから、夕飯一緒に食べようと思ってスーパー行って来た~」 「そうか。サンキュー」 玄関ドアを開け、部屋に入って直ぐに拓真は窓を開けた。 換気した? 知らない振りして、冷蔵庫に買ってきた物を仕舞う。 寝室に向かう拓真はどこか慌ててる様な気がした。 「拓真ぁ~、お腹空いて無い?どうする。早いけどご飯作る?」 寝室の方から声が聞こえた。 「腹減ったから和樹作ってよ」 「うん。解った」 寝室から出てきた拓真は「俺、ずっと寝てたから和樹が作ってる間にシャワー浴びてくる」と言って浴室に向かった。 作るって言っても直ぐに出来るものだし…。 シャワーの音が聞こえ、俺は寝室に向かった。 ベットは綺麗に整えられていた。 そっと枕に顔を近づけ匂いを嗅ぐ。 香水と化粧が混じった匂いがした。 やっぱり……泊まったんだ。 派手な服だったし年上っぽかったけど……。 ダメだ.ダメだ。 これ以上詮索したら……現実を見てしまう。 頭の中で警報が鳴る。 けど……俺は寝室にあるゴミ箱を手にした。 ティッシュがある他に使用済で結ばれたゴムがあった 拓真の精液もゴムの中で溜まっていた。 浮気の証拠だった。 疑惑から確信に変わった時だった。 俺はそぉっと元に戻してショックと、やっぱりと言う気持ちでこんがらがって居た。 やっぱり見なきゃ良かった。 でも……見ずには居られなかった。 そぉっと寝室を出てキッチンに戻った。 涙は出て無い。 拓真の前では泣けない。 俺は事務的な作業で夕飯作りを始めた。 15分程で拓真は髪をタオルで拭きながら浴室から出てきた。 「すっげぇ~良い匂い♪」 そう言って窓を閉めた。 「豚の生姜焼きと野菜のス-プだよ。ご飯はチンで良いよね?」 「充分だ。腹減った~」 「もう直ぐ出来るから」 手を止めずに作業をし、拓真の顔が見れないのは幸いだ。 ご飯を食べる時には、見た事は忘れるんだ。 普段通りに.普通に! それから直ぐ出来上がりテ-ブルに並べた。 拓真と向い合いあって夕飯を食べる。 「いただきます。美味そう♪」 「どうぞ」 生姜焼きをかぶりつき笑って話す。 「和樹~。美味い! すげえ美味しい~♪」 何で普通なの? そんな美味しい笑って話せるの? 心の中では思ってても口には出さずに居た。 「そんなに美味しいなら、もう1枚あげる」 俺の生姜焼きを拓真の皿に乗せた。 「えっ、良いの?和樹の減るじゃん」 「俺はこれからバイトで食べるかもしれないから。店長が廃棄のとかくれる時あるし」 「じゃあ、貰う♪ 美味い.美味い♪」 美味しそうに食べる拓真の姿が嬉しいのと、少し冷めた目でも見ていた。 俺はやはりショックが大きかったらしく、食欲は無かったけど……食べた。 後で、こっそりトイレで吐いていた。 食事が終わり片付けをして寛ぐ拓真の隣に座った。 いつもここからバイトに出て行く時間まで後2時間程あった。 普段通りにしなきゃ! 俺には苦痛の2時間だった。 拓真にゲ-ムしようと持ち掛け時間を潰す事にした。 いつもなら心から笑って騒ぐゲ-ムも真剣にするからっと言って笑う事を避け、どうにか時間間際になった。 「拓真、ごめん。バイト行かなきゃ」 「えっ、もうそんな時間か?和樹、夕飯サンキュー。美味かった」 そう言って顔を近づけてキスをされた。 背ける事も出来ずにそのまま受け入れた。 あの人ともキスしたの? 顔はニコニコしてたが、心の中はグヂャグヂャだった 舌を入れようとする拓真に「これ以上はダメ。バイト行けなくなる。また、ゆっくり泊まりに来るから」そう言って避けた。 拓真も不審には思わなかったようだ。 「じゃあ、その時は朝まで寝かせないからな」 「…うん。もう行かなきゃ」 「無理するなよ。頑張れ」 そう言って、玄関まで送ってくれた。 最近は、俺も時間を作ってた事もありバイトも煩く言わなくなったし優しかったのに……。 いつも通りの拓真の行動だけど、優しさも何もかも疑ってしまう。 それから俺は駅に走った。

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