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第236話 (和樹)

朝倉さんからの連絡が無くなって、俺はどれだけ朝倉さんを頼って甘えていたか?身に染みていた。 もう、あの辛い気持ちに1人で、また耐えられるかな? どうしよう。 そんな不安の中で、元々無かった食欲が尚更落ちた。 菓子パンを前の日に1個買って来て、それを昼.夜と分けて食べていた。 卒論も仕上げに掛かり、夜はバイトの日々を過ごしていた。 暫く経った日に、朝倉さんがバイト先にひょっこり顔を出した。 「いらっしゃいませ~」 扉が開き、お客様が来店したと思い声を出し席に案内しようと顔を向けると、朝倉さんが入口付近に立っていた。 「和樹君、久しぶり」 前と変わらない態度で接して来る朝倉さんに戸惑ったけど……バイト中と思い接客した。 「お久しぶりです。お一人ですか?カウンターで宜しいですか?」 「ああ」 カウンターに案内して、お冷を入れ注文を待つ。 「ご注文は?」 「そうだなぁ~。車で来てるから酒は無しで。何か、お勧めはあるかな?」 「食事でしたらロ-ストビ-フ丼がお勧めです。後は唐揚げも美味しいですし、ピリ辛きゅうりも良く出ます」 「和樹君が勧めたのを全部頂こう。それと味噌汁も付けてくれるかな?」 「はい」 厨房に注文を言い店内に戻り、他のお客様の対応をしたりバッシングしたりと動き、朝倉さんの側には近づか無いようにしてた。 それでも朝倉さんが気になり、チラッとさり気なく見たりしてた。 もう連絡してこないつもりだったんじゃ無いの? どうして? お会計をしてお客様を送り出し、厨房から声が掛かった。 朝倉さんの所に注文したものを、お盆に乗せ持って行く。 「お待たせしました。ロ-ストビ-フ丼と唐揚げとピリ辛きゅうりと味噌汁になります。全てお揃いでしょうか?」 事務的に話し朝倉さんの前に置いた。 「旨そうだ。和樹君のお勧めだけある」 朝倉さんなら、こんな居酒屋じゃなくもっと高い店で良いものを食べてるだろうにと思ったけど、顔に出さず営業スマイルで答えた。 「ありがとうございます。ごゆっくりお召し上がり下さい」 「ありがとう」 「失礼します」 飽くまでバイト先のお客様として接客した。 それから時間的にも、お客様が出入りする時間で忙しく働いて、朝倉さんの事を気にする事も無くなった。 朝倉さんは1時間弱程でお会計をし、帰り際に俺に話し掛けてきた。 「和樹君、今日は何時にバイト終わるのかな?」 お釣りを渡すと、手が触れ軽く握られ直ぐに離す朝倉さんの行動に驚いた。 「……あと30分で上がります」 「それじゃ、帰り送って行くよ。以前に、駐車していた場所に車置いてるからね。待ってる」 「えっ…でも…」 言うだけ言って、店を出て行ってしまった。 何で? もう俺とは……。 良く解らない朝倉さんの行動に戸惑う。 もう俺と関わらないつもりなら、こんな事しないで欲しい。 また甘えて頼ってしまう。 「和樹~。次、持ってて~」 厨房から声が掛かってハッとし、急いで取りに行く。 それから、また店内を忙しく動き回った。 朝倉さんに会えた事が嬉しいような、そのままフェ-ドアウトした方がお互いの為のような気もして複雑だった。 交換のバイトの子が少し遅れると連絡があり、その子が来るまで働いていた。 「明石~、悪い。ちょっと遅れた~、もう上がって良いよ。ごめんな」 「思ったより早かったですね」 「出掛けてたんだけど、思ったより時間かかちゃって~。間に合うか焦った~けど、結局遅刻~」 「でも20分位だから大丈夫ですよ」 「悪かったな」 「じゃあ、お先に上がらせて貰います」 「「「「お疲れ~」」」 厨房からもホ-ルの方からも声が掛かって、休憩室に行き着替えた。 「遅れちゃったな~。もう待ってないかも……その方が良い」 やっと、少しずつ朝倉さんの連絡を待つ事を諦め始めていた所だった。 店を出て、朝倉さんが待ってると言った駐車場に行くかどうか迷った。 けど……待ってたら申し訳無いし……。 行ってみて、車が無かったら帰ろう。 そう思っていたけど、足は既に駐車場に向かっていた

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