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第239話(海都)

あのバイト先で約束した通りに、和樹君とは、その後もLineの遣り取りが主だが連絡は取り合っていた。 直ぐには既読出来ないが、必ず返事は返していた。 "仕事、大丈夫ですか?” 気遣いのLine。 "拓真にLineしても既読が無い” 彼氏の事。 "今日、教授に卒論提出してきました” 報告。 "バイト行く前に拓真と会って楽しかった~。会うとやっぱり好き” 和樹君の気持ち。 "来週の水曜日だったら空いてます” 俺が食事を誘った返事。 ここ数日の間の和樹君とのLineの遣り取りだ。 励ましたり勇気付けたり喜んだりと、俺からも返事を返していた。 仕事終わりの今日は、和樹君と前から約束してた食事をする日だ。 間に合う様に仕事を終わらせ、マンションに並木に送って貰い部屋に寄らずにプライベート用の車に乗り、駅に既に着いてるとLineがあった和樹君の元に向かった。 駅のロ-タリ-で待ってた和樹君を見つけ、横につけ窓を開け話す。 「和樹君、乗って」 「はい」 助手席に座ったのを確認して車を発進させる。 「待ったかな?」 「全然」 「お腹の空き具合は?」 自分のお腹を押さえ空き具合を確かめてる。 可愛い~な。 「ん~どうかなぁ~」 「じゃあ鍋とかどう?すき焼の美味しい店があるんだ」 「お任せします」 「じゃあ、決まり!」 俺が知ってるすき焼の美味しい店に向かった。 たぶん、まだ食欲が無いのだろうと野菜も取れるし鍋が良いかと考え決めた。 店に入りすき焼き鍋を注文し、他にサラダやポテトフライを頼んだ。 ここなら半個室で、ある程度周りには会話が聞こえないし和樹君もゆっくりできるだろう。 直ぐに、すき焼き鍋が用意され店員が目の前で肉や野菜を入れ作ってくれた。 「これで暫くお待ち下さい。それではごゆっくり」 店員が去ったのを確認し話し始めた。 「卒論良かったね。無事提出できて」 「就活終わってホッとしたのも束の間で焦りました。早い人は夏休みから卒論に手を付けてる人も居るし……。何とか終わってホッとしてます」 「バイトと卒論と頑張ってたからね。これで少し楽になるね。それで提出日ギリギリだったのかな?」 グツグツ煮えてきたすき焼き鍋から良い匂いがし始めた。 「提出期限の1週間前になんとか出せました。教授の反応もまずまずですから大丈夫だと思います」 「良かった。これで私も食事を誘い易くなった」 「気にしなくって良かったのに」 「学生は勉学を優先にしてあげなきゃ。そろそろ鍋も良さそうだ」 蓋を開け良い匂いが立ち込める。 和樹君の器に肉や野菜を入れ渡し、自分の分もよそう 「食べなさい。熱いから気を付けて」 「はい。美味しそう~♪ こんな良いお肉なかなか食べられないから嬉しい~♪」 「足りなかったら、また追加すれば良い」 「たぶん大丈夫です」 ふ~ふ~と息を吹き掛け食べる姿が、何とも可愛らしい サラダやポテトも並び食事をしながら話した。 和樹君はバイト先での面白かった話しを聞かせてくれ俺も日常のたわいも無い話しをした。 和樹君は彼氏の話しはしなかった。 たぶん、楽しく食事をしたいと思ったのか?俺に気を使ったのかも知れない。 食事も終盤になり、和樹君がトイレに立った。 和樹君は俺が気付いて無いと思ってるのかも知れないが、鍋の殆どを俺が食べ、和樹君は少しだけ食べたが後はサラダとポテトが少しだ。 ポテトもサラダもまだ残ってる。 無理矢理食べさせても……と思い黙って居た。 少しでも食べてくれれば身になるだろうと細やかな俺の願いもあり食事に誘ったが……。 時間掛かってるな。 混んでるのか? まさか……吐いてるのか? 気になりトイレに向かい扉を開けようとして隙間から和樹君が洗面台でうがいをしていたのが見えた。 そっと静かに扉を閉め足早に席に戻った。 やはり……吐いてたのか。 いつから?……たぶん…食欲が無くなり食べ物を受け付けなくなったのだろう。 全て彼氏の事が原因か? 精神的に参って体にも異常をきたしてる。 本人は気付いて無いのか? 食べ過ぎと思ってるのか? そう考え込んでる所に、さっぱりした顔をして和樹君が現れた。 「混んでたのかな?」 「トイレの場所が解らなかったのと混んでました」 「そう」 それから少し話しをして、今日話そうと思った事を切り出した。 「和樹君、お願いがあるんだが」 サラダを箸で突っつく和樹君を見て、箸だけは動かしているから食べてるように見えるが、実際は殆ど食べて無いのは明らかだ。 「はい。何ですか?朝倉さんが俺にお願い事なんて」 「前に、和樹君の親友の話しをしてくれたよね?」 「武史?前に話しましたっけ?」 「和樹君の親友だって。何でも話せるって」 「武史は高校の時からずっと一緒で親友ですけど……」 「今度、和樹君の親友の武史君も一緒に食事しない?」 「良いですけど……武史、凄い人見知りなんですけど……態度が悪いとかじゃなくって、余計な事は話さないって言うか、そこが信用出来る所何ですけど…誤解されがちなんです。でも、付き合うと凄く良い奴です」 「和樹君がそう言うならぜひ会ってみたい」 「でも、何で?武史と会うんですか?」 「和樹君の高校生の時の話しとか大学生活とか聞きたいと思って。本人より友達に聞く方が真実を語ってくれるからね。それに若い子と食事するのは楽しいし。武史君と和樹君と相談して都合良い時に連絡欲しい」 「解りました。武史に聞いてみます。武史もバイトしてるから」 「じゃあ宜しくね。来週中には食事に行きたいが……連絡待ってるよ。また、これで和樹君と一緒に食事が出来る」 「別に、武史を連れて行かなくっても、俺1人でも食事行きますよ?」 「2人も良いが、たまには良いだろう。武史君に和樹君の事を聞きたいのもあるし」 「武史に変な事言わない様に言わなきゃ」 「それは狡い」 また、こうして次に会う約束を取り付けた。 今度は和樹君の親友も含めて。

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