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第243話 3人での食事会②(海都)

高校生の時の話しを主にたくさん聞き、肉も粗方無くなってきた。 殆どが、俺と武史君の胃袋に消えた。 和樹君も少しは食べたが、コムタンス-プとサラダを口にしてる方が多かった。 後は、お喋りに夢中で箸が止まってしまう。 武史君が話す方じゃないから、尚更、和樹君が話していたのもある。 「肉、無くなってきたな?もう少し入る?」 「俺はもうお腹いっぱい~」 「俺もたくさん頂きました」 「そうか。じゃあ、口直しにデザートでも頼む?」 「わぁ~い♪ 俺、バニラアイス♪」 「俺も」 和樹君の子供っぽさに笑いが漏れ、そのまま店員を呼び追加注文した。 「バニラアイス3つ頼む」 「畏まりました」 店員が出て行き、和樹君が「ちょっと、トイレ~」そう言って席を外した。  武史君と話すチャンスだと思った。 「気を付けて行っておいで」 「朝倉さん……子供じゃないんで」 頬を膨らませて部屋を出て行った。 和樹君が居なくなると静寂が漂う。 どれだけ和樹君が話をし、賑やかにしてくれていたのかが解る。 意を決して武史君に話掛けた。 「武史君」 「はい」 「今日、君を呼んだのは和樹君の親友だと言う事で会いたかったのは本当だが、それとは別に武史君に和樹君の事で話しがあった」 「はあ?何ですか?」 「和樹君の前では話せない事なんだ。それで、明日でも明後日でも、武史君の都合の良い日に私と2人で会って欲しい。その時に詳しい話をしたい」 俺をジッと見つめ品定めする様に結構眼光がきつかったが、直ぐに返事をくれた。 「解りました。和樹の事なら……明日でも良いですか?気になるから、早く聞きたい」 「ありがとう。それで良い。待合せ場所と時間は今日と一緒で良いかな?それと連絡先交換させて欲しい」 「解りました。都合悪くなったら連絡下さい」 2人で携帯の電話番号とLine交換した。 「ありがとう」 「いいえ、和樹がお世話になってますし。そう言えば、和樹遅いなぁ?」 「混んでるんだろう」 そこに店員が現れバニラアイスが届いた。 それから少し経って和樹君が現れた。 「わぁ~バニラアイス解け掛かってる~」 「遅かったなぁ」 「トイレ混んでたんだよぉ~」 スッキリした顔を見せる和樹君はやはりトイレで吐いてきたんだろうと思った。 少しは食べられる様になったと思ったが、やはりまだ無理は出来ない様だ。 武史君に悟られない様に間に入った。 「まあ良いから、早く食べなさい」 「は~い♪ ん~冷たくって美味しい♪」 「ほんと、和樹は甘い物が別腹だよな」 「女子じゃないけどね~。美味しいものは美味しいから仕方無いよ~」 「本当に美味しそうに食べるね。話し変わるけど、2人共そんなにバイトして何か欲しい物でもあるのかな?」 「欲しい物は特に無いです。俺は暇だし本も好きなんで。雑用が多いですけど、少しずつ仕事できる様になるのが嬉しいです。4月から本格的に働くなら、今のうちに色々覚えて置いた方が良いと思ってバイト続けてます」 「武史、2月位になったら、公務員試験も終わって中島も内田も就職先決まってると思うから、そしたらサ-クルの皆んなで卒業旅行に行こうって、拓真と話してるからね。一緒に行こう」 「そうなのか?聞いて無いけど」 「まだ、皆んなには話して無いけど。来年に皆んな顔合わせた時にでも話そうと思ってる」 「そうか。和樹が行くなら」 「うん。一緒に行こう」 今まで避けていた彼氏の名前が出て少し焦ったが、和樹君の様子は大丈夫そうだ。 「卒業旅行か~、良いね。学生最後だから楽しまなきゃ。和樹君はその為にバイトしてるのかな?」 「俺は一人暮らししたら、今の電化製品とかも古いから新しいのを買いたいし卒業旅行もしたい。あとね、クリスマスプレゼントを拓真にあげようと思って。この前ビジネスバックの良いのを見つけたんだ~。就職したら使って貰おうと思って。少し高いけど良い品だったから長く使えると思って」 「そうか、卒業後の事まで考えて偉いね。クリスマスプレゼントきっと喜ぶよ」 「そうだと良いなぁ~」 嬉しそうに話す和樹君。 こんなに尽くしてるのに……健気だと思った。 クリスマスは彼氏と過ごすのか? そりゃそうだろうな。 「武史君はクリスマスは?誰か居るのかな?」 「俺はそんな人居ないです。クリスマスとか関係無い」 「そうか。なら、クリスマス終わったら、また3人で食事でもしよう。私もクリスマスは関係無いからね」 「……誰か、一緒に過ごす人居ないんですか?」 武史君が聞き辛そうに聞いてきた。 「特定の相手は作らないんだ。1人が寂しい時もあるが、楽な時の方が多いからね」 「複雑ですね」 「大人になると色々複雑になるんだよ。社会人になると解ってくるよ」 「朝倉さん、寂しかったら連絡下さいね。俺、いつも話し聞いて貰ってるから、話し相手になってあげますよ?」 「和樹君は優しいね。寂しい時には頼むよ」 そんな感じで、初めて武史君と和樹君と3人での食事会も和やかに終わった。 会計を済ませ「「ご馳走様です」」と、きちんと挨拶する2人を偉いなと思った。 それから車で最寄り駅まで送って、駅に歩く2人の笑って話してる後ろ姿を車の中から見送った。 和樹君も気心知れてる武史君と一緒で楽しそうにしてたし良く笑っていた。 いつも泣顔ばかり見てたから、やはり笑ってる顔の方が可愛いらしい。

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