244 / 379
第245話 正直な想い②(海都)
コ-ラをグビッと飲み「はあ~」と息を吐き、俺の目を見て話す武史君の顔は真剣だ。
「朝倉さんの気持ちは解りました。和樹の側に居たいと言う気持ちも好きだと言う気持ちも。でも、朝倉さんにはセックスフレンド居ますよね?それだと好きだと言う気持ちは解りますが、庇護欲を勘違いしてそう思ってるんじゃないんですか?そんな相手が何人か居る人が言う言葉に、説得力が感じられないし信じられません。本当に、真剣なのかどうか?」
口数が少ない武史君が話すくらいだ、相当気掛かりなんだろう。
「確かに、私には男女共に何人か大人の付き合いをしてる人が居た。その事は、和樹君にも正直に話してる私はね、恋愛事に時間を費やしたり情熱を傾ける気が無かったからね。和樹君に会うまではそう考えてた」
「そう言う考えなら、和樹の事を任せられません!」
武史君の拒絶に焦った。
「ちょっと待ってくれ! 話しを最後まで聞いて欲しい」
「……続けて下さい」
「和樹君には話して無いが、実は私は1度結婚してたが生活のすれ違いで別れた。彼女とは社会人になって知り合った。女性ながら野心もあり優秀な所に惹かれたお互い仕事優先で燃え上がる恋ではなく大人の恋人同士だった。結婚を決め、直ぐに私は自分の会社を設立し起動に乗せるまで.成功させようと奮闘し仕事優先だった。彼女もそう言うタイプだから気にして無いと思ってた。数年夫婦と言う形だったが、彼女の方から殆ど一緒に居ないし夫婦で居る意味が無いと離婚を切り出された。実際、私もそう思ってたし、一応気にして毎日遅くとも家に帰らなきゃと義務感もあった。彼女から切り出された時にはホッとしたんだ。これで何も気にせず会社に集中できるってね。それからは恋だ愛だとか言うものは重荷にしかならないと、割り切った関係を求めた」
「そのままで居た方が良いんじゃないですか?和樹の想いは朝倉さんの言葉を借りると重いですよ?」
「そうだね。確かに、和樹君の一途な想いは重いと思う。けどね、私も年齢を重ねて一途に想われてみたいと、和樹君を見てそう思い始めた。和樹君を抱いた次の日から、大人の付き合いの人とは全員と別れたよ。
1人1人と会って食事して、きちんと私の気持ちを話した。ちょっと時間掛かった人も中には居たが、後腐れ無い様に根気強く解って貰えるまで話した。和樹君には別れた事は言って無いから、今でも続いてると思ってる。大体、和樹君への気持ちは、和樹君には話して無いからね。和樹君は精神的に参ってるのに、これ以上の負担は掛けたく無いと思って。私が勝手に身辺整理して、和樹君と真っ新な気持ちで向き合いたいと思っただけだ」
「……本当に…そこまでするって事は、真剣なんですね?」
やっと解って貰えたか?
「ああ、真剣に和樹君を好きだし愛おしいと思ってるただ和樹君の負担にはなりたく無いから、側に居て守っていたい。和樹君の心の支え位にはなりたい。和樹君が幸せになるのを見守る、そう言う愛でも良いかと思ってる」
「和樹の恋人にはなりたいと思わない?拓真から奪う事は考え無い?」
「正直言えば、和樹君のあの一途な想いが私に向けられたら……と何度も思うよ。奪う事は考えた事は無い和樹君が悲しむ事はしたくない、飽くまでも和樹君の気持ちが優先だ」
「俺は朝倉さんにあんな奴から和樹を奪って欲しいけどね」
「武史君の気持ちも解るけどね。和樹君が彼を好きなら仕方無いよ。私は和樹君を影ながら見守り.側に居て話しを聞く事でも充分だと思ってる。全てを解った上で、武史君にも協力して欲しいと思ってね。私と連絡取れない時には武史君を頼ると思うからね」
「それで俺を頼ってきた時には、朝倉さんにも連絡すれば良いんでしょ?」
「悪いが頼むよ。どうしても会議や接待とか、そう言う時は連絡直ぐには取れないからね。一応、社長業をやってるからね」
「朝倉さんの気持ちや真剣さも解りましたし、俺も和樹には幸せになって欲しいって言う気持ちは朝倉さんと一緒です。朝倉さんに協力します。色々、和樹の為に考えてくれて、ありがとうございます。これからも宜しくお願いします」
和樹君の為に、俺に頭を下げる武史君は素晴らしい青年だと思った。
この子なら大丈夫だ。
信用できると思った。
「色々、暴露したけど、今日話した事は全て和樹君には内緒にしてくれ。さっきも言ったが、和樹君にこれ以上色々抱え込ませたく無いからね」
「解りました。俺にも和樹の事で、何か合ったら遠慮なく連絡下さい」
「ありがとう、そう言って貰えると連絡し易いし頼もしい」
武史君に和樹君には言えない自分の正直な気持ちを全て話した。
和樹君に惹かれてる事は本人には言えない。
言ってしまったら、和樹君は離れていく気がするからだ。
今の関係を崩したく無い。
唯一できる事は、私1人だけじゃなく武史君と一緒に和樹君を見守っていく事だと考えた。
武史君とこうして連絡し易い環境を整え強力な協力者を得た。
ともだちにシェアしよう!