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第247話 酷い男(拓真)

「ヤバい! 遅刻しちゃう~」 女が起き上がり独り言を話す声で、俺も目を覚ましたが、まだ眠かった。 「どうしようかな?1回、家戻って大急ぎで着替えれば間に合うかな~」 話しながら服を身に付けていくのが見えたが、煩え~と思って背中を向け眠る体勢になった。 「伝線してるぅ~。あ~もう!」 布団の中に居てもブツブツ…何か文句を言ってるのが籠もって聞こえたが無視してた。 早く帰れよ~! 煩え~な! こっちは、眠いっつ-の! 着替え終わったのか?無視して狸寝入りしてる体を揺り動かされた。 「ねえねえ。道解んないから駅まで送ってよ~」 面倒で、そのままの体勢で駅までの道順を話す。 「口頭で言われても解らないから。早く起きてよ~遅れちゃう!」 顔だけ振り返り機嫌悪く話す。 「ったく、煩え~な。スマホで調べて帰れよ! こっちは眠いんだよ!」 俺の暴言に怒りの形相になり捨て台詞を吐く。 「最低! 送りもしないで帰れって何よ! バカにして! あんた何か当てにしないわよ。ヤルだけヤッテ優しく無いなんて! 最低男! 帰ればいいんでしょ、帰れば! ふん!」 バックを持ち玄関のドアをバタンッ!っと、勢い良く締め出てった。 「ったく、朝から煩え~し迷惑だっつ-の」 部屋の時計を見るとまだ6時だった。 トイレ行って、もう一眠りしよう。 裸のままトイレ行き済ませ、ベットの脇に脱ぎ捨てた服を端に纏めて置き、パンツだけ履いてベットに潜り込んだ。 直ぐに眠気が襲ってきて、俺はそのまま眠ってしまった。 どの位寝てたのか?体を揺り動かされた。 「拓真…拓真って~」 ん、和樹の声が聞こえる。 そこでハッとし目覚めた。 俺の顔を覗き込むように和樹の顔があった。 ガバッと体を起こし、部屋を見渡し時間を見た。 13時? あのまま午前中寝てたのか。 あれ、何で和樹居るんだ? 女は? 寝起きでパニックになって居た所に、和樹が話し始めてやっと理解した。 「拓真~、玄関ドア開いてたよ~。鍵閉め無いで寝ちゃったの?不用心だよ」 女が朝早く出てってそのままだ。 そこでまたハッとした。 裸だ。 布団の中で手探りし、パンツを履いてる事にホッとした。 「昨日、飲みに誘われてそのまま寝た。鍵閉めたつもりだった……」 「そう。飲み過ぎ?気を付け無いと危ないよ。ずっと寝てたんならお昼まだでしょ?Lineしたけど…その分じゃ見てないよね?」 「悪い」 「お昼作るから一緒に食べよう」 寝室を出てキッチンに向かう和樹に声を掛けた。 「じゃあ、作ってる間にシャワー浴びてくる。昨日、そのまま寝たから気持ち悪い」 「ん、解った」 シャワー浴びに浴室に向かい昨日の服を洗濯槽の中に入れた。 ザァ-ザァ-……シャワー浴びながらヤバかったと心で思ってた。 今日が平日で良かった~。 そのお陰で、女が早く部屋を出て行ってくれた。 この間もヤバかったのに……もう部屋に連れて来るのは止めよう。 和樹……気付かない?よな。 あの様子なら大丈夫そうだな。 バイトは? 休みだから来たのか? 余り時間を掛けるのもマズイか。 シャワー浴びて新しい部屋着に着替え髪を拭きながら和樹の待ってる部屋に行く。 テ-ブルにはチャ-飯と野菜炒めが並んでた。 「早いじゃん。和樹、料理上手くなったよな」 「そう。チャ-飯と野菜炒めなら誰でも出来るよ。早く、食べよう」 「うん。いただきます」 「いただきます」 チャ-飯を口に入れると、ネギとベ-コンの味がして絶妙な塩加減がマジ美味かった。 「マジ、うまっ」 「本当、良かった~」 喜ぶ和樹の様子は、いつも通りで安心した。 野菜炒めも美味かったから褒めると、それも嬉しそうに笑っていた。 昼飯を食べ、和樹が片付けをしてる間にスマホを手にしLineを開くと、和樹と他にも何件かあった。 和樹からのLineを開く。 “拓真~、明日バイト夕方からだから昼御飯一緒に食べよう” 今日の11時にもあった。 “寝てる?昼頃行くね” スマホを見てると、和樹がジュ-スを2つ持って戻ってきて隣に座った。 「Line見て無かったんでしょう?既読ならないから待ってたけど来ちゃった」 「悪い。飲んでそのまま寝たからな。和樹が起こすまで熟睡。ごめん」 「どんだけ飲んだの?」 「ん~解んねえ~。和樹、夕方からバイト?」 「うん。また拓真とゲ-ムしようと思って。この間はゲ-センで負けたからね。リベンジ~」 くっくっくっ…… 「ゲ-ムだけはムキになるんだよなぁ~。また、懲りずに負けるのに。ま、受けて立ってやるよ」 「そんな事無いよ~。前の俺とは違うからね」 「はい.はい」 それからゲ-ムで白熱し、負けて悔しがったり勝って喜んだりと、和樹はいつも通りだった。 俺も楽しかったし、女の事は忘れていた。 ゴミ箱の中に、女が伝線したパンストを脱ぎ捨てた事は知らなかった。 それを和樹が見てた事も。

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