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第250話 (武史)

和樹に内緒で会いたいと言う朝倉さんと会い、俺は部屋に帰って来た。 「ふう~、緊張して疲れた~」 キッチンで水を一気飲みして、ソファに行きドサッと座った。 和樹は朝倉さんの事を信用して頼りにしてるようだけど、初めて会ったばかりで俺は不安だった。 和樹は人が良いから直ぐに信用する所があるから俺が見定めてやろうと思ったけど、話してる内容に嘘は無さそうだし和樹に対しても本気のようだ。 朝倉さんも濁してたが、和樹が辛い想いをしてるのは拓真の浮気なんだろう。 前々から女の子と遊び始めたと、噂が立ち始めていたのは疎い俺の所まで聞こえてくるくらいだ。 和樹の耳にも届いてるんだろう。 拓真の奴、何してんだよ! あいつの考えてる事が、全く俺には解らないし理解もしたくない! あんな奴の事より和樹の体が心配だ。 昨日、久し振りに会った和樹は元々細かったが、益々痩せていた……まさか?そうなってるとは思わなかった。 それは今日の朝倉さんの話しで1番驚いた事だった。 和樹が少しでも無理して食べると、内緒で吐きに行ってると言う事だ。 自分で自覚があるのか?それとも無意識なのか? そこまで追い込んだ拓真が本当に憎い! 前から自分勝手で我儘で横暴な拓真が俺は好きにはなれなかった。 いや、はっきり言って嫌いだ! そんな俺の気持ちを薄々気付いて居たんだろうな。 拓真の事に関しては、俺には何も言わなくなっていった。 拓真と付き合い出して暫くは俺と遊ばなくなり、久し振りに俺のアパートに夜遅くに唐揚げを持って来た事があった。 あの時に何かあったと思ってたし、拓真の噂話も聞こえ始めてた時だったから、和樹の気持ちを察してそぉっとしておいた。 和樹から話してくるのを待ったが……あの時に俺から聞くべきだった。 そしたらそこまで追い込まれる前に何とか出来たんじゃないか?と今は後悔してる。 俺にも話せず、ずっと1人で悩んでたんだろう。 朝倉さんに悩みを言えるようになったのは和樹の為になるとは思ってる……けど、親友の俺としては少し寂しい。 今までは、俺に一番に何でも話してくれてたから…。 拓真を嫌ってる俺より朝倉さんを頼る可能性の方が高いとは思うが、それでも朝倉さんは和樹の為に ‘何か合ったら必ず連絡をして欲しい’ と俺に頼んできた。 それを聞いて、朝倉さんなら和樹の事を頼めると確信した。 それに和樹を抱いて好きだと気付いて直ぐにセックスフレンド達とは切ったと話す朝倉さんの和樹への気持ちの本気度が解った。 あの目は嘘じゃ無いと思った。 俺の思いとしては、あんな拓真なんか忘れて朝倉さんの気持ちに気付いて応えて欲しいが……和樹の性格では最後の最後まで自分が後悔しないと思うまで頑張るんだろうな。 責めて和樹の一途な想いに、あのバカが早く気付いて更生して浮気はやめて欲しい。 俺も朝倉さんも和樹の笑ってる顔を見るのが好きだ。 和樹の笑顔には周りの人間を明るくする力がある。 どうか幸せになって欲しい。 俺が辛い時に側に居てくれた優しい和樹の為に、何をしてやれるだろうか?考えた日だった。 そして、和樹が辛い時に気付いても何もしなかった自分を後悔する日でもあった。

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