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第253話 クリスマス間近③(和樹)
ドトールで一休みして外に出ると、店内の暖かさに慣れた体に外気の冷たさが伝わってくる。
「さむっ」
「だな」
そう言って、俺の手を握り拓真のコ-トのポケットに握ったままの手を突っ込んで歩き出した。
すっごい嬉しい~んだけど♪
嬉しさの余りニコニコと顔に出てしまう。
「和樹、寒いから映画でも見る?」
「うん♪」
「何、やってるかな?」
「調べる?」
「いや、映画館行って1番早い上映を見る事にしようぜ」
「え~。もし、つまんないのだったら?」
「それはそれで面白いじゃん」
「拓真~、適当~。ま、良いかっ。俺、アクション系か推理物が良いなぁ~」
「俺はホラー系が良い。和樹が隣で怖がってんの見るの楽しみ~♪」
「え~やだよぉ~。ホラーなら別のにしよう」
「だめ~。行って早い上映映画に決めたんだからな」
「拓真のケチ~」
くっくっくっ……
そんな事を決め歩き映画館に向かった。
2人で上映時間と映画を確認すると……全然考えても無かった映画だ。
「拓真~、どうする?これだと後10分位で始まるけど……」
「……ここに来る時に決めたんだから、これを見る」
「俺は別に構わないけど……拓真、興味無いでしょ?無理に見なくっても」
「興味は全然無い! ……今まで、この系統は見た事ないからなぁ~。案外、見たら面白いかもな」
俺には拓真が寝る事は目に見えていたけど……なぜか?決めた事だからと、拘る拓真の意地っ張りな所が子供っぽくって笑えた。
「拓真が良いなら行こう。時間無くなるぅ」
「よし」
映画のチケットを買い上映室に向かった。
まさかの……ディズニーの実写版だった。
俺も拓真も特にディズニーに思い入れがある訳でも無く…子供の頃に1度は読んだ事がある物語りの実写版で内容を知ってるだけに期待はして無かった。
これがパイレーツ.オブ.カリビアンとかだったらなぁ~。
周りには、彼女に付き合ってなのか?カップルが結構居た。
やっぱ女の子は好きなんだなぁ~と思ってる内に、館内が暗くなり映画が始まった。
拓真から手を繋いできたから俺は体を拓真の方に寄せ映画を見ていた。
映画が始まって30分もしたら拓真の頭が俺の肩に凭れてきた。
あ~やっぱり寝たか~。
これからが盛り上がってくるのに~。
映画館の暖かさに眠気がきたんだろうな。
たぶん外を歩き周るのは寒いと、拓真なりに気を使ってくれたんだと思う。
本当に解り難い優しさなんだから~。
気持ち良さそうに寝てる拓真をそのままにして、俺は折角の映画だからと見ていた。
内容が解ってる物語りでも佳境に入ると、やはり面白くなり結局最後まで見た。
へえ~興味無かったけど、拓真の言う通り案外面白かったなぁ~。
言った当の本人は熟睡してるけど…。
映画が終わり、段々と館内が明るくなってきた。
「拓真……拓真」
「ん、あ~映画終わった?」
「もう、終わったよぉ~。直ぐに寝ちゃうんだもん。結構、山場ありで面白かったよ」
「へえ~、そりゃ良かったな。本と内容は変わんねぇ~だろ」
「まあ、そうだけどね」
「ふあ~、飯食いに行こう」
「うん♪」
映画館を出て夕飯食べる前に1番初めに入った店に行き、拓真が買おうとしたチェスターコ-トを買った。
「良かったね。売れて無くって」
「そうだな。コ-ト買うのが目的だったからな。色もグレージュが後1つだったから、危なかった~」
「売れてたら売れてたで構わないみたいな事を言ってだけど……心配だったんだ?」
「売れてたら仕方ねぇ~とは思うけど、やっぱ気に入ってたからな」
強気に言ってたけど……可愛い~。
「さて、コ-トも無事買ったし、飯食って帰ろうぜ」
「うん♪」
手を繋いで何軒か飲食店を回り混んでたりで、結局ファミレスになった。
拓真はハンバーグステ-キセットを頼み、俺はココアを飲んだから、お腹空いて無いって言ってパンケーキにした。
拓真に「夕飯にパンケーキって、腹の足しになんねぇ~じゃん。和樹って本当に甘いの好きな」って言われた
「だってぇ~甘くって美味しいじゃん」
ハンバーグステ-キセットとパンケーキが届き食べ始めた。
「うわぁ~甘そう。何、その生クリームの量」
「美味しい~よ。拓真もほら食べてみなよ」
生クリームたっぷりつけてフォークに乗せ拓真の口元に持っていくとパクッと食べてくれた。
「ゲッ! あまっ。もういらねぇ~」
しかめっ面で話すから笑えた。
「美味しい~のに」
楽しい夕飯を食べ、外に出ると暗くなっていた。
駅までの道のりを歩く。
昼には点いて無い街路樹のイルミネ-ションが点いていて凄く綺麗だった。
これだけでも、外でデ-トした甲斐があると思っていた。
「拓真、綺麗だね」
「ああ、昼は解ん無かったけど、ライトが点灯すると綺麗だな」
「クリスマスが近いって感じ~」
何気無く言った一言だったけど……。
「後、1週間でクリスマスだな?和樹の予定は?」
「……拓真と過ごそうと思って24.25日空けてるけど……拓真は?予定あるの?」
どうか一緒に過ごせる様に!
心の中で祈ってた。
拓真の返事が怖い!
「俺も和樹と過ごそうと思ってた! つ-か、和樹のバイトのシフト解んねぇ~し、和樹から言ってくると思ってた」
「そうなの?俺も拓真から話してくれると思って待ってた。24.25日休み取ったから、今週の土日はバイトになっちゃうけど…」
「クリスマス一緒に過ごせるなら良いよ。じゃあ、24日にまたドイツ村に行ってイルミネ-ションみようぜ」
「拓真……覚えてたの?」
クリスマスを一緒に過ごせる事も嬉しかったけど、イルミネ-ションを見に行く事を覚えてくれてたのが、凄~く嬉しくって涙が出そうになった。
俺の頭を撫で笑って話す拓真も何となく嬉しそうだ。
「当たり前だろ! 毎年行こうって約束したよな。夏の花火大会と冬のイルミネ-ションは、俺達の思い出の場所だろ?」
「うん.うん」
拓真もそう思ってくれてたんだ。
「街のイルミネ-ションも綺麗だけど、やっぱ和樹とあの場所に行きてぇ~」
「うん.うん」
それからゆっくりと街路樹のイルミネ-ションを見ながら駅に向かった。
拓真、覚えてくれてありがとう。
俺、色々あったけど……拓真を信じる!
この日一緒に見たイルミネ-ションも絶対忘れない!
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