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第260話 後悔(拓真)

「拓真!」 「莉久、何しに来た?もう、会わないって言ったはずだ!」 「だって~、この間偶然に会ったら、やっぱ拓真カッコいい~と改めて思って~。会いたくなっちゃった~♪」 「何、勝手な事言ってんだ?この間の男はどうした?遊び相手なら、他にもたくさん居るだろう?」 「あの人は別にそんなんじゃ無いよ。あっちが僕に熱上げてるだけ~。拓真、妬きもち?」 こいつ、何か勘違いしてるのか? 「はあ?誰が妬きもち焼いてるって?俺はお前が誰と何しようがどうでも良い。関係無いからな」 「んもう、そんな事言って~。ねえ、拓真。こんな所で話すの?ずっと、待ってて寒いんだけど」 「はあ?帰れよ!」 鍵を開けて中に入ろうとしたら、ドアをグイッと開け無理矢理入ってきた。 「お前、勝手に入るな! 解った、ここで話そう」 部屋の中には入れずに玄関で話す事にした。 部屋には入れない! と言う意思表示だが、こいつに通じるか?疑問だ。 「玄関なんて嫌だよ。部屋に入れてよ~」 俺の首に手を回し、見上げる顔が如何にも作ったような顔で嫌悪感が湧く。 図々しい奴だ! こいつには、はっきり言わないと解んねぇ~か。 首に回した手を乱暴に外して、はっきり言おうと口を開いた時に、莉久から予想外の事を言われた。 「何?そんなに、あの和樹って子が良いわけ?あんな子、大した事無いじゃん。拓真が相手にするような子じゃないじゃん!」 和樹? 莉久の口から和樹の名前が出て驚いた。 会ったのか?いつ?どこで? 「莉久! 和樹と会ったのか?どこで?」 クスクスクス……バカにした笑いをした莉久を見て、嫌な予感がする。 「ここで拓真を待ってたら、あの子が来たよ。全然、大した事無いし僕の方が可愛い~し」 和樹がここに…来たのか? 「何、言ったんだ?」 声が低くなり睨みつけたが、それでも俺は怒りを抑えて居た。 「やだぁ~、拓真~怖いよ~」 「そんなのはどうでも良い! 何、言った?早く、言え!」 「別に、大した事言って無いよ。和樹かどうか確認して~、拓真とは友達なのか?って聞かれたから、色んな意味で友達~♪って言っちゃった~♪」 楽しそうに話す莉久にムカつき腹の底から怒りが湧いて、手を出したくなるのをグッと握り締め堪えた。 「あとは?」 「あの子、拓真が女の子としか浮気して無いと思ってたみたいだからね。可哀想だから、本当の事を教えてあげたよ。拓真とは何度もセックスして、相性が良い~って。僕の他にも浮気してるけど本命は僕だから、もうあんたは必要無いって教えてあげたんだ。そう言ったら、あの子真っ青になって顔面蒼白って感じで逃げちゃった。キャハハハ……。拓真~、やっぱ時々で良いからセックスフレンドなろうよ~。僕達、セックスの相性バッチリじゃん」 莉久の話をグッと堪えて黙って聞いてたが、もう無理だった。 莉久の体を玄関ドアにドンッ!と押し「黙れ!」怒鳴り、莉久の頬スレスレに拳を叩き付けた。 「ヒィ~! 何~すんの!」 「黙れ! この際だからはっきり言ってやる! お前も他の奴らも全部和樹の代わりなんだよ! 誰と誰がセックスの相性バッチリだって?はん! お前の誰が突っ込んだ穴か解んねぇ~の何か、もう反吐が出そうでヤル気も起きねぇ~んだよ! だから、会わないって優しく言ってやったのに、解んねぇ~のか?バカな奴! お前、自分が可愛いとか思ってんのか?お前位のレベルなら、そこら辺にゴロゴロ居るつっーの! お前は遊んでると思ってるかも知んねぇ~けど、バカじゃねぇ~遊ばれてんだよ! 彼氏が浮気?それで浮気するお前に呆れてんじゃねぇ。勝手にやってろよ! 俺には関係ねぇ! ウザいんだよ! 2度と顔見せるな! 今度は、本当にボコボコにして、2度と見られ無くなるくらいブサイクな顔にしてやるからな! 解ったら、サッサと帰れ!」 ドンッとまた拳をドアに叩き付けた。 「ヒィ~、怖い! 酷い事ばっかり言って、もう2度と来ない!」 そう言って、バンッ!とドアを閉め、俺の部屋から逃げるように出て行った。 閉まったドアを暫く見つめ、頭の中は怒りで何も考えられなかった。 それからフラフラと部屋に入り、一気に疲れが出てソファにドサッと座った。 とうとう何もかも和樹にバレた! 莉久の口振りから言って、女との浮気はとっくにバレてたみたいだった。 それでも俺には一言も何も言わずに我慢してたのか? ずっと我慢して耐えてたのか? 知らない振りして……それでも俺と一緒に居ようとしてくれてた? 上手く隠してたと思ってた俺はバカだ! いや、和樹なら女との噂位は知ってると思ってたが、何も言わない事を良い事に憂さ晴らしと寂しいからと言って、浮気した俺がバカだ! 和樹、どんな気持ちだったのか?逆の立場なら…俺なら耐えられない。 その上、男とも……和樹、ショックだっただろうな。 どうすれば良いんだ! 頭を抱え、自分のバカさ加減を今更ながら後悔した。 暗い部屋で、ずっと考え悩んだ。 1時間程経った頃に、このままではだめだと後悔ばかりしてた頭を切り替え、これからの事を考えた。 謝って許してくれるか? 浮気は2度としないと誓って、何度も謝って土下座したって良い。 許してくれるまで謝ろう! 覚悟を決め、車の鍵を持ち部屋を出ると、外は土砂降りの雨だった。 傘を持ち部屋を出た。 急いで、車の置いてあるパ-キングに向かった。

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