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第263話 真相③(武史)
「それで?」
「……拓真の部屋の前に……」
また、女か?
そう思ったが黙っていた、和樹も言いたく無いのか?暫く無言で目の前の電気ストーブをジッと見つめていた。
俺は和樹から話すまで待った。
「……部屋の前に、男の人が……居て」
男?まさか?
拓真が和樹以外の男を相手にするはず無い!
大学でも女と歩いてたとか、和樹からも女と浮気してるとは聞いてた……まさかな。
「俺は見た事無いけど……大学の友達か?と思った……俺より、ちょっと背が高いけど可愛い系の……男の子で………その子が俺に……」
その時の事を思い出したのか?また、ポロポロ…涙を流す。
まさか…だろ?
嘘だよな?
もし……そうなら和樹が余りにも可哀想だ!
拓真に対して腹が立って仕方無い!
「……その子が……拓真…浮気してるよって。俺の事もなぜか知ってた……女とだけだと思ってるのか?って……その子は何度も拓真と……寝たって……自分の他にも何人かセックスしてるけど……本命は自分だから……俺は用無しだって……拓真……別れたいけど…話すタイミング……」
大体の事が解った。
もうこれ以上、和樹の口から辛い話しはさせたくなかった。
「もう良い! もう辛い話しはしなくて良い!」
マグカップを床に置きポロポロ…涙を流し、顔はグヂャグヂャだった。
「武史ぃ……俺…どうしたらいい?……俺…拓真が浮気してるの知ってたけど…………女の子だと思ってた……拓真は元々女の子しか相手して無かった…から……女の子なら……我慢も……できた…耐えられた…けど…………男は……どうしたら……俺、どうすれば……」
そんな奴なんか別れろ!って言いたかった。
けど……和樹が決める事だ。
未練を残したままだと後悔すると思った。
「和樹が決める事だが……少し距離を置いて、後悔しないように色々考えても良いんじゃないか?側に居たら、冷静に考えられないだろ?」
怒りを表さずに、こうアドバイスするのが精一杯だった。
「そう…かもね。……俺……別れたくないけど……どうしても、浮気の相手が男なのが耐えられない!……でも…でも……拓真…拓真って……我儘とか言われるけど……言い方が悪いだけで正直過ぎるんだよ……あとね……解り難いけど優しいんだ……上手く世渡りしてるようだけど…不器用なんだ………俺…俺……そんな拓真が好きなんだ………どうしたら良いか……」
涙を流し、拓真の良い所を話し庇う。
興奮して話す和樹の顔が赤くなっていた。
「解ったから、興奮するな!」
宥めようと和樹の肩を触ると熱い。
もしや……あの土砂降りの中を歩いた所為で熱が出たか?
直ぐに和樹の額と頬を触った。
熱ッ! ヤバイな。
興奮もあり、熱が上がってきたようだ。
「武史ぃ……俺…俺…」
まだ話そうとする和樹を制し、和樹を抱えベットに連れて行き寝かせ布団を掛けてやる。
「……武史」
「興奮するから熱が出てきてる。寝て待ってろよ」
キッチンに行き冷凍庫からアイスノンを持ち、棚から冷えピタを持ち和樹の元に戻り、アイスノンを枕にし額に冷えピタを貼ってやる。
「冷たい。……冷たくって気持ち良い」
そう言って涙が頬を伝うのを拭ってやった。
「熱が出てる。今は何も考えずに眠ってしまえ」
「ありがと…武史」
涙がどんどん流れ、その内に熱もどんどん上がり泣き疲れ意識が朦朧としてきたようだ。
熱で朦朧とし魘(うな)されて「拓真…拓真」「どう…して拓真」「熱い……熱い」と時折譫言(うわごと)を発し見ていてこっちが辛くなる。
ベットの横に跪き和樹の熱い手を握ると、少し落ち着いたようで、暫くすると眠に就いたようだ。
ずっと我慢してただろうに、それなのに拓真の奴!
女だけじゃなく男もなんて……和樹が可哀想だ!
どこまで、和樹の心を傷付ければ済むんだ!
腹が立って仕方無かった。
ゼェゼェ……ゼェゼェ…苦しそうな息遣い。
暫く和樹の手を握り側を離れなかった。
それから20分程経った頃に、部屋のチャイムが鳴った
俺は熱で辛そうな和樹の顔を見て、それから玄関に向かった。
俺は怒りで震えて爪が食い込む程握り締めていた。
相手は誰か?俺には予想がついていた。
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