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第264話 真相④(拓真)

土砂降りの雨の中を走り借りてきた車に乗り込み、和樹のアパートを目指し走らせていた。 和樹、ごめん。 俺がバカだった。 今頃になって気付くなんて……本当にバカだ! 謝って許してくれるだろうか? 何度も何度も和樹が許してくれるまで謝る! 俺は和樹無しでは………どうか許してくれ。 もう浮気なんかしない! 今まで和樹が俺から離れる事など考えた事無かった。 そうなるかも……と思うと怖い! 俺には和樹が必要なんだ! 和樹への謝罪を考えてると、和樹のアパートが見えてきた。 アパート前の道路に車を駐車し、直ぐに和樹の部屋に走った。 和樹…和樹…和樹……どうか居てくれ! ピンポン♪♪~……ピンポン♪♪~ピンポン♪♪ピンポン♪♪…… 何度鳴らしても応答が無い。 居ないのか? 和樹の部屋の合鍵を出し玄関ドアを開けると、部屋の中は暗かった。 「和樹?……居ないのか?」 応答が無い、やはり居ない? 部屋の電気を点けてみるが、どこを探しても和樹の姿は見当たらない。 居ない……どこに行った? 暫くボ-然と立ち竦んでいたが……和樹が行くとしたら……武史の所か? 俺は明かりを消し鍵を掛け急いで車に乗り、今度は武史のアパートを目指し車を走らせた。 自分の部屋に居なきゃ武史の所だろう。 1度だけ和樹の用事で、武史のアパートに行った事があった。 俺は外で待ってたが……俺と武史は気が合わないからな、いやお互い嫌ってるんだと思う。 サ-クルでは内田や中嶋.山瀬達が居るし、別に2人で話す事も無かった。 武史……か。 普段は無愛想なのに、和樹の事になると珍しく感情を露わにする。 和樹の高校時代からの親友だからだと思ってるが……武史が知ったら怒ってるだろう。 殴られるかも知れない……けど、そうされる事をしたんだ。 覚悟を決め、武史のアパート近くのコンビニに車を置き武史のアパートに走った。 部屋の前で一呼吸し、意を決して部屋のチャイムを鳴らした。 ピンポン♪♪~ピンポン♪♪~… ガチャッ! 「何しに来た?」 ドアを開けて直ぐに威嚇する様な低い声で、眉間には皺が寄り目が怒ってるのが丸解りだ。 「和樹、来てないか?」 部屋には上げて貰えないのか? 和樹が居るからか? 玄関ドアを少しだけ開けて話す武史の行動で、そう思った。 「来てたら、どうだって言うんだ?お前、和樹に顔を合わせる資格あるのか?」 「………和樹に謝りたい」 「何を今更! 散々浮気しておいて、その上男ともしてたなんてな。最低だな! お前が女と浮気してたのは和樹はずっと知ってたんだ、それでもお前と別れたくないって、女の子なら我慢できるって、ずっと耐えて我慢してたんだ! それなのに、お前は……もう帰ってくれ!」 玄関のドアを閉めようするのを阻止し、無理矢理玄関に押し入った。 バタンッ! ドアを閉め帰らないと意思表示した。 玄関には和樹のリュックと靴があった。 「和樹、居るんだろ?会わせてくれ! 頼む!」 「自分がした事を考えろ!」 凄い形相で俺を睨む武史の怒りがひしひしと感じる。 そんな武史にも怯まずに、俺は自分の事を話した。 「……和樹が就活するまでは上手くいってたんだ。和樹が就活頑張ってるのも解ってた……でも大学でも就活一色になり俺は就職先も決まってて……何だか自分だけが蚊帳の外みたいな取り残されたような気がしてた。和樹が就活頑張れば.頑張る程一緒に過ごす時間が無くなって……寂しかったんだ。就活.バイトと忙しい和樹にイライラしてた。その鬱憤を晴らすように合コン行ったり飲みに行ってた。始めは憂さ晴らしだけだったが……女に誘われて浮気した。1度したら2度も3度も同じだと和樹にバレなきゃ良いって感覚が麻痺してた。でも、俺からは1度も誘ってない! これは本当だ!」 「そんなのお前の勝手な言い分だろ! 和樹は社会人になっても、お前と一緒に居たいから頑張ってたんだろ?就活だってお前の近くでって……就職先を狭めて就活頑張ったのはお前の為だろうが。もっと広い範囲で就活すれば和樹だって楽だったはずだ! 」 武史に言われて、その通りだと思った。 和樹は俺の為に頑張ってたのに……それなのに俺は……自分勝手な事を考えてた。 「武史の言う通りだ。あの時の俺は自分の事しか考えてなかった」 「今更だな。浮気は女だけじゃないんだろ?和樹が今日お前の部屋の前で、お前の浮気相手に色々言われたらしい」 「……就活終わって、やっと一緒に残りの大学生活を過ごせると思ってたのに……今度は卒論だ。バイトも相変わらず辞めないし…で、イライラして。その時はしこたま飲んで酔って和樹と勘違いして抱いた。そいつに店の名刺渡されて、興味本位で行ったら物珍しさもあって面白かった。それから和樹に似た奴に誘われると何人か抱いたのは本当だ。全部、和樹の代わりだった。こんな事を言っても信じて貰えないかも知れないが、俺は……ずっと和樹だけを好きだ!」 「そんな言い分を信じる訳無いだろ! 全部、お前の勝手な言い訳だ! 呆れて物が言えない! 本当に勝手な奴だな! もう、いいから帰れ!」 俺の肩をダンッ!と押しドアに体がぶつかった。 「和樹に会うまで帰らない! 謝りたい! 会わせてくれ!」 俺と武史が言い合いをし押し問答してると、部屋の中から和樹の小さな声が聞こえた。 「……拓真」 俺は武史の体を押し、勝手に部屋の中に入った。 「おい!」 武史の静止の声も聞かずに部屋に入ると、1Kの部屋では和樹の姿は直ぐに見つかった。 ベットの中に居る和樹の側にいくと、冷えピタを貼り熱が出てるんだろう?顔が赤く、苦しいのか?ゼェゼェ…と息も荒かった。 「和樹……」 辛そうな和樹を前に名前だけ呟いた。 武史が俺の背後で俺に聞かせるように話す。 「お前の所から、土砂降りの雨の中を傘も刺さず歩いて俺の所に来た。部屋の前で、ブルブル震えて歯もカチカチ鳴って辛そうだった。急いで温めたが熱が出てきたからベットに寝かせた。ずっと譫言でお前の名前読んでた。どんなに辛かったか?和樹の気持ち解るか?」 さっき俺の名前を呼んだのも譫言だったのか? 俺はその場で跪き和樹の顔を覗き込んだ。 「和樹、ごめん。俺が悪い! 本当に、ごめん。俺…俺…自分の事しか考えてなかった。和樹はどんな事があっても俺から離れないって思って……和樹に甘えてた。和樹、目を覚ましてくれ! 俺を見てくれ! 謝らせてくれ!」 聞こえてないだろう和樹に涙を流しながら想いの丈を話す。 こんな目に合わせた自分の不甲斐なさに腹が立つ。 その時に武史のスマホが鳴り、武史はその場を離れた時だった。 「ゼェゼェ……拓真?ゼェゼェ…」 「和樹!」 本の少しだけ虚ろ気に目が開き、和樹の手を握り名前を呼んだ。 「ゼェゼェゼェ…拓真…の声が…ありがと…ゼェゼェゼェ……」 意識が混濁してるんだろう?そのまま、また意識をなくした。 「和樹…和樹……ごめん.ごめん」 辛そうな和樹の姿に俺は涙が出た。 手を握り締めずっと名前を呼び聞こえてないだろうけど謝って居た。

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