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第265話 真相⑤(武史)

充電してたスマホが鳴った。 たぶん待ち侘びてた人からだと思い2人っきりにするのは気になるが、和樹と拓真の側を離れスマホの画面を見て脱衣所に行き電話に出た。 「はい。今、どちらですか?」 電話の相手はやはり朝倉さんからだった。 「会社に居る。会議が終わった所なんだが、携帯に和樹君から着信あったのに気が付いて、電話したが出ないんだが?」 「和樹なら、俺の所に居ます」 「そうか、何かあったのか?」 俺は朝倉さんに和樹から聞いた事や今の和樹の状態と拓真が来てる事を掻い摘んで話した。 「かなり熱は出てるの?」 「ゼェゼェ…と息も荒いですし顔も赤く体も熱いですから、かなり熱は出てると思います」 「解った。今から武史君のアパートに行く。悪いが住所をLineで送って欲しい。知合いの医者に見て貰うよう手筈しておく。あと、彼には何とか言って帰って貰ってくれ。私も怒りで何をするか自分でも解らないから」 「解ります! 俺も堪えるのに必死ですから。じゃあ、そう言う事で待ってます」 「私が行くまで、和樹君の事頼む!」 「はい」 電話を切って、どうするか?考えた。 取り敢えず、あいつには帰って貰おう。 その後は朝倉さんが来るまで待ってるしか無い。 和樹のベット脇に拓真が跪き涙を流し手を握ってひたすら謝って居たが、和樹は熱の所為で聞こえて無いだろう。 拓真の態度に ‘今更だ’ と思った。 そんなに謝るなら.後悔するなら、なぜ浮気したんだ? 寂しさ?イラつき?そんなのは、拓真の我儘で自分勝手な言い草だ! 和樹が許しても俺は許さない!! 「拓真、もういいだろ?帰ってくれないか?」 怒りを抑え冷静に話したつもりだ。 「和樹が目を覚ますまで、ここに居させてくれ! 頼む!」 必死に俺に頼み込む拓真の姿は後悔の念に駆られてるのが解ったが、俺は騙されない! 「熱もだいぶ出てるし、今日は目を覚ます事は無いと思う。それに和樹が目を覚ました所で、お前の顔を見た時に動揺するかも知れない。和樹は女ならまだしも男と寝た事は耐えられないって言ってた。それでも、お前の良い所を俺に話し庇うような事も言ってた。和樹はお前の事……それでも好きだって言ってた。今後どうするか?は、和樹が決める事だ。その為にも時間が必要だと思う。先に、体を癒さないと……かなり弱ってる」 和樹の手を握り締めて離さない拓真。 「和樹…和樹……ごめん。こんな事今更言っても信じて貰えないかも知れないけど…俺には和樹だけだ。和樹が好きなんだ。頼む! 俺の側から離れないでくれ!」 朦朧としてる和樹には聞こえないと思うが、拓真は必死に自分の気持ちを話し和樹の側を離れ無い。 「お前知ってた?和樹、お前が女と浮気してるって知ってから食欲無くなって痩せたの?無理して食べるとトイレで吐いてるんだよ! そのくらい体も心も傷ついて弱ってるんだ! お前の顔を見て、和樹がどう思うか……また無理して何でも無い顔を作るんじゃねぇ~の。少しでも和樹の事を考えてるなら、今日は帰ってくれ! 後は和樹の気持ち次第だ!」 俺の話しを聞いて驚いた顔をし青ざめた。 「痩せたとは思った。けど、それは卒論やバイトが忙しい所為で……と思ってた」 「もういいだろ?帰ってくれ!」 これ以上話しても無駄だし、俺も怒りでどうにかなりそうだった。 「……和樹、ごめん」 そう言って和樹の頬に手を当て、暫く見つめて立ち上がり肩を落とし玄関に向かった。 俺も拓真の後を着いて玄関に向かった。 玄関で靴を履き部屋の奥を見つめ俺に話す。 「和樹の事頼む! また来る」 「…………」 俺は無言で居た。 そう言って和樹と離れるのが心残りにし玄関から出て行った。 玄関の鍵を締め和樹の元に戻り、和樹の頬や首筋を触って確認する。 「また熱が上がってるようだ。朝倉さん、早く来てくれ」 苦しそうな顔と荒い息遣いと熱い体。 和樹の手を握り熱が下がるように祈った。 拓真が出て行ってから30分は経った頃にチャイムが鳴った。 「やっと来たか」 急いで玄関を開けると、やはり朝倉さんが立って居た 「和樹君の様子は?」 「意識も朦朧として熱がかなり上がってます。今はベットで寝かせてます。どうぞ入って下さい」 「すまない」 朝倉さんを和樹の元に連れてくると、直ぐに頬や首筋を触り確認してた。 「マズイな。相当、熱が出てる。下に車を待たせてるから、このまま連れて直ぐに知合いの医者に見せる。武史君もついて来て欲しい」 「解りました」 朝倉さんは自分のコ-トを脱ぎ、和樹に被せ横抱きで部屋を出て行く。 俺は部屋の戸締りをし、スマホを持ち玄関に置きっ放しの和樹のリュックを持ち部屋を出た。 あの土砂降り雨が……殆ど止んでいた。

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