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第267話 真相⑦(海都)
タクシーで帰り部屋に着き武史君をソファに座らせ、俺は部屋着に着替えコ-ヒ-を入れ近くのソファに座った。
武史君がコ-ヒ-に口をつけるのを待って、俺は武史君から今日の経緯を詳しく聞いた。
武史君は話してて怒りが振り返したのか?かなり腹を立てて居た。
余り感情を表さない武史君が……と思ってたが、話を聞いて俺も怒りが治らない。
何とかギュッと両手を握り締め怒りをやり過ごす。
詳細を全て聞き、冷静に今後の事を話さなければと自分に言い聞かせた。
「そんな事があったのか。クリスマスを2人で過ごすと楽しみにしてたのに……どんな気持ちで話を聞いてたんだろうな。辛かっただろう。……私にも電話してくれたのに……打合せが長引いて携帯は電源を切ってた……辛い時に何もしてやれなかった……和樹君に申し訳ない!」
自分の不甲斐なさを痛感して居た。
「俺もバイトの残業頼まれて、スマホの充電切れてた……俺も朝倉さんと一緒で、和樹が頼ってきた時に何も力になれなかった。……和樹に悪いけど、運が無かった……こればっかりは、どうにもならない」
今度は武史君が俺を励ましてくれた。
「そうだね。運が無かったのかも知れないね。クリスマス前に浮気相手に会ったり土砂降りの雨だったり、私と武史君に連絡つかなかった事も……でも、どうして和樹君が……と思うと切ない」
「全て拓真が悪い! あいつの所為だ!」
怒りで震える武史君の気持ちが痛い程解る。
「その気持ちは同感だが……これからの事を話そう」
「俺…腹が立って仕方無い! あいつの性格解ってたのに、もっと和樹にこんな事になる前に、強く言えば良かったって後悔してる。拓真にも自分にも腹が立つ!」
「そんなに自分を責めるな! 私は武史君が和樹君の親友で良かったと思ってる」
「………朝倉さん」
「さっきも言ったが今後の事を話そう。私の考えを話して良いかな?」
飽くまで冷静で居ようと努めた。
「……はい」
「私は30~4日まで正月休みになる。29日まで川田の所に入院させて貰うように頼む。私が休みに入ったら退院させて、そのまま私の所に預かるよ」
俺の提案に驚く顔を見せた。
「でも、ご迷惑じゃ……和樹の気持ちもあるし」
「私は1人暮らしだし、誰にも遠慮は要らない。それに私は和樹君の事が好きだし側に居たいんだ! 和樹君の気持ちもあるのは解ってるが……物理的に、彼とは離れた方が良いと思う。アパートに帰れば会う事になるだろうし、武史君の所に居ても会いに来るだろ?実家に……と言っても、今の和樹君の状態を何て説明するんだ?やはり私の所が1番良いだろ?」
武史君は暫く考えたようだが納得してくれた。
「そうですね。朝倉さんがご迷惑じゃ無ければ、それが1番良いかも」
「ありがとう。和樹君の回復状態を見て判断したいが、それに心の回復もだが…体の回復が先だと思ってる。1月いっぱいは預かろうかと。和樹君が良ければ期限は決めなくっても構わないし。もし、その間に戻りたいと言うなら、和樹君の意思を尊重しようと思ってる」
「ありがとうございます」
「和樹君がここに居る間は、私は和樹君を無理矢理に私の者にしようとは思って無いし、私の和樹君への気持ちも話すつもりも無い。飽くまでも和樹君の回復を優先に側に居るだけに徹する。これは約束する!」
「朝倉さん、そこまで……和樹の事……ありがとうございます。和樹があいつを忘れて、朝倉さんを好きになってくれれば……」
「武史君、そればかりは和樹君の気持ちだ。願わくは私も同じ気持ちだが……。私はね、和樹君の彼を一途に想う気持ちも好きな所の1つなんだ。その気持ちが私に向けてくれたら……と、何度も思った。でも、和樹君が幸せになる事が1番だ」
武史君が聞こうか聞くまいか悩んでる顔をした。
「何?」
少し躊躇ってから意を決して話してきた。
「和樹に朝倉さんの気持ちは、この先もずっと話さないんですか?」
「………そうだねぇ。取り敢えずは、和樹君が元気になるまでは話さない。和樹君が彼とどうするか自分で判断するまでは……。彼の元に戻ると決めた時に初めて話すかも知れないし1人になると決めたら話すかも知れない。それでも私の気持ちはタイミングを見て、いずれ話すつもりだ! それで和樹君との縁も切れてしまうかも知れないが……それまでは私の所に預からせて欲しい。あの状態の和樹君を彼には任せられない!」
「それを聞いて安心しました。……朝倉さんの気持ちが余りにも可哀想だと思ったので」
武史君は大人だと思った。
「ありがとう。今日、話せて良かった」
「俺もです。改めて、和樹の事宜しくお願いします」
ソファから立ち上がり俺に向けて1礼した。
「そんな改まらないで、私の好きでやってる事だ」
今後の事を決め少しホッと胸を撫で下ろした武史君はそのまま和樹君のリュックから財布を出し、中から保険証を出し俺に渡した。
「すみません。これで入院手続きお願いします。入院費は俺が払いますから。何もかも朝倉さんにお願いして申し訳無いですけど、宜しくお願いします」
また、頭を下げる武史君。
本当に和樹君の事が好きなんだろうな、もちろん親友として。
「頭を上げて。入院手続きも明日やっておくし費用も私が出すから……。一応、これでも社長してるからねそれくらいは出せるから武史君は心配しないで良い」
「……すみません」
それから少し話し武史君を客間に案内し、俺はシャワー浴びて寝室に行きベットに横になった。
今日一日だけで色々あり過ぎて眠れぬ夜を過ごした。
武史君も同じだろう。
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