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第268話(海都)
武史君を駅まで送り、会社への道のりで並木が何か言いたそうにチラチラ…と、バックミラー越しに見ていた。
「何だ?」
「いいえ……デジャブだと思いまして」
はあ?何を言ってるか?始めは解らなかったが、前に和樹君を泊めて同じ様に駅まで送った事を話してると気が付いた。
「何を勘違いしてるか?解らないが、武史君とはそんなんじゃ無い」
「解ってますよ。本命はあの子でしょ?昨日の社長の慌て振りと動揺を見れば解ります。どうするんですか?」
理由は言えないが、今後、俺の部屋に和樹君を預かる事になると、並木とも少なからず顔を合わせる事になるだろうと、並木には預かる事を話しておいた方が良いと判断した。
「29日まで川田の所に入院させて貰う、30日からは私の所で暫く預かるつもりだ。並木も色々頼む」
「そんな事だと思いましたよ。何か訳ありっぽいけど……まあ、あの子のお陰でセフレとも全て別れてくれたみたいだし、社長も落ち着くなら私も協力しましょう」
「ん、助かる」
「その代わり仕事は29日までバリバリ働いて貰いますよ。良いですね」
「解った.解った。やり手の秘書で私も頭が上がらない」
「社長がだらし無いからですよ。まあ、そっち方面が綺麗になったし、良しとしましょう」
「……。そうだ、今日の昼休みにちょっと抜けて川田の所に入院手続きしに行くからな」
「私がやって置きますから、仕事して下さい」
「昼休みぐらい休ませろ」
「30日から休みたければ頑張って下さいね。昼休みの僅かな時間に会いに行かなくとも、仕事をその分早く終わらせて会いに行けばゆっくりできるでしょ?まあ、今日は会議がありますけどね」
「………解った。昼休み無しで働いて会議も早めに終わらせよう」
「頑張って下さい。昼休みに手続きしながら様子は見て来ますから、ご心配なく」
できた秘書で助かるが手厳しい。
でも、力強い協力者を得た。
和樹君に会う為にも仕事を頑張らないとな。
昨日より少しでも熱が下がってくれてれば良いが……。
早く回復する様に心で願った。
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