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第272話 守りたい③(海都)

和樹君は相変わらず昼はベットに座り、ボーッと壊れたスマホを両手で握り真っ暗な画面をジッと見て過ごす。 食事の方はみかんの缶詰が10粒から15粒…20粒と、少しずつ増やして食べ昼にはお粥を茶碗1杯持って行くが半分程残す。 桃缶も2切れを一口大に切って持って行ったりと、少しずつだが食べてくれるようになった。 表情は無表情に近いが、俺が声を掛けると反応してくれるようになった。 ゆっくりだが、確実に良くなってると信じている。 俺も特にする事も無いので、リビングで仕事をしたりして居た。 並木は大喜びだろうな。 その日は年末で和樹君が俺の部屋に来てから2日経った 「もう、年越しだな」 1人で呟き、テレビでは年末の放送をしていた。 ピンポン♪♪ピンポン♪♪… 「来たか?」 金を持ち玄関に向かった。 2人分の年越し蕎麦を出前で頼んでいた。 ダイニングテ-ブルに並べて、和樹君を呼びに寝室に向かった。 寝室のドアを開けると、真っ暗な部屋でまた壊れたスマホを見ていた。 その姿を見ると辛くなる。 寝室の明かりを点けると一瞬眩しそうにした。 「和樹君、夕飯は年越し蕎麦にした。リビングで食べよう」 「………はい」 ベットの住人になってる和樹君はベットから立ち上がるのもフラフラし、慌てて手を貸しリビングの椅子に座らせた。 「ちょっと早いが、今年はお世話になりました。来年も宜しく」 「……朝倉さん。……俺こそ…お世話になって……すみ…ません」 「さて、冷めない内に食べよう。和樹君はゆっくりで良いからね。食べられるだけでいいから」 「……はい。……いただきます」 箸を持ち一口食べたのを確認して、俺は豪快に口に入れた。 ズルズルズル…… 「美味い」 「……美味しい」 良かった、缶詰やお粥以外にも食べらる物ができた。 蕎麦やうどんも少しずつ食べさせよう。 和樹君は箸に2~3本ずつ取り口に入れてる。 直ぐに俺は食べ終わったが、和樹君の食べる姿を見ていた。 「和樹君、食べたらシャワー浴びるかい?」 ここに来てから、まだシャワーも浴びて無かった。 体が気持ち悪いだろうと思い口にした。 和樹君は頭を縦に振り「……入りたい」と言った。 「1人で入れる?」 「……はい」 変な意味で聞いた訳じゃなく、さっきベットから立ち上がった時にフラフラしてたからだ。 筋力が弱ってると思った。 「解った。シャワー浴びて着替えたら呼んで。まだ、フラフラして危ないから」 「……すみま…せん」 少しずつゆっくり食べるが、半分程食べ箸を置いた。 半分食べてくれたのか、良かった。 それから和樹君を浴室に連れて行き、俺はダイニングを片付け洗った丼を玄関の外に置き、リビングのソファでテレビを見て待機して居た。 20分程で、和樹君の声が聞こえた。 髪は濡れていたからドライヤーで乾かし、寝室じゃなくリビングのソファに座らせた。 温めたココアを和樹君に手渡した。 「ありがと……甘い」 大好きなココアに少し笑みが溢れた。 少しリビングでゆっくりして欲しいと、敢えて俺はシャワーを浴びに行った。 シャワーを浴びてる時に思った。 あんな暗くした寝室に1人で……筋力も弱ってるし……このままじゃいけない! どうするか? キュッとシャワーを止めバスタオルで拭き着替え、髪を乾かし和樹君の居るリビングに向かった。 コ-ヒ-を入れ隣に座らず近くのソファに座った。 和樹君はテレビを眺めてたが、その目には何も写って無いようだった。 「和樹君」 「…はい」 「明日、少しその辺散歩しないか?」 「…………はい」 「良かった」 気が進まないかも知れないが、俺は少し無理してでも外に連れ出すつもりだった。 部屋に篭っていても何の刺激も無い、外に出て殻に閉じ籠ってる目を他に向けさせようと思った。 「そうだな。暖かい内に散歩しよう。昼飯食べたら行こうか」 「……はい」 「じゃあ、今日はもう休みなさい」 「……はい」 和樹君を寝室に連れて行き、寝かせ部屋を出た。 俺もソファに横になりテレビを点けたまま眠りに着いた。

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