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第273話 守りたい④(海都)
「和樹君、腕に捕まりなさい」
「………はい」
まだフラフラする体が心配で話すと、和樹君もおずおずと腕を掴んで来た。
ゆっくりと和樹君のペ-スに合わせてマンション近くの道を歩く。
出掛ける前に寒いだろうと、俺のダウンジャケットを羽織らせたが、ぶかぶかで和樹君の体には大きかったがそれを着て散歩に出掛けた。
「寒く無い?」
「……大丈夫」
特に目的がある訳でも無く道を歩く。
犬の散歩をしてる人に出会い、犬が和樹君の足元にクウン.クウン…と戯れて来た。
飼い主は「すみません」と話すと、和樹君は「可愛い……」と屈んで頭を撫でて居た。
やはり外に連れ出して良かった。
直ぐ飼い主が犬を連れて行ってしまったが、和樹君には良い刺激になったと思う。
こうやって世間はあり1人じゃ無いと解って欲しい。
ゆっくり散歩して30分程で部屋に帰る事にした。
帰りにコンビニに行き俺は弁当を買った。
無理しない程度で、明日も散歩しようと思った。
それから和樹君は寝室には行かずにリビングのソファで何もしないが過ごしていた。
一応、テレビを点けてたが……たぶん耳に入って無いだろう。
変化があったのは、その夜だった。
シャワーも浴びて和樹君も寝室に行き、俺もソファで横になりその内眠って居た。
夜中に人の気配がすると思い目を開けると、和樹君が立って居た。
一瞬驚いたが平然とした顔をした。
「どうしたの?」
「……朝倉さん……眠れ…ない」
「じゃあ、少し話しでもする?」
頭を横に振り「1人じゃ……寝れない」と話す。
「じゃあ、添い寝してあげようか?」
冗談で話すと、和樹君の頭が縦に振った。
えっ、マジか~。
気持ち的には嬉しいやら困った事になったと思うが、それも顔には出さなかった。
「ん、解った。一緒に寝よう」
和樹君の肩を抱いて寝室に向かう。
ベットに2人で横になると直ぐに和樹君は俺にピタッとくっついてきた。
「あったか……い」
「…………」
俺は何も言わずに、和樹君の頭を寝るまで撫でて居た
その内にス-ス-……寝息が聞こえた。
寝顔を覗くと安心したような顔をしていた。
もしかして意識が戻ってからずっと寝れて無かったのか?
眠りが浅かったのかも……。
俺と寝る事で安心できたと思ってくれたり頼られて嬉しいが……和樹君を好きな俺は正直凄く困った。
隣で添い寝したら……下半身が…反応するかも…
セックスフレンドとも全て解消してからは1人で処理してるが、和樹君が入院してからはその気にならずに居た。
溜まってんだよなぁ~。
こんなに体を密着されると……。
それに……このベットで2人で一緒に寝ると、あの1度っきりの2人のセックスを思い出してしまう。
和樹君が辛い時に……不謹慎だ!
その日はひたすら違う事を考え悶々とし、やっと眠り着いた。
それからは昼には散歩に行き、夜には2人で一緒に眠る事が恒例になった。
嬉しいのと辛いのとで複雑だった。
俺はシャワーを浴びてる時に、隠れて処理スルようになった。
そうしなければ、いつか和樹君を襲いそうな気がした
この日もシャワーを出しっ放しにし
シュッシュッシュッ…ヌチャヌチャヌチャ…シュッシュ…
「ぁあ…かず…き…くん…」
和樹君を想い描き右手で扱いていた。
シュッシュッシュ……シュッシュッ…ヌチャヌチャ…
扱く手が早まり終わりが近い。
「うっ…かずき…うう…あぐっ…好きだ」
ドビュッ…ピュッドビュッ…ドクンドクン……
大量の白濁を浴室の壁に放つ。
「はぁはぁ……はぁはぁ」
シャワーで壁に放った大量の白濁を洗い流した。
いつも終わった後は自己嫌悪に陥る。
和樹君が辛い時に……俺は……。
それでも何も無かった顔で、いつも和樹君の隣で眠る日々だ。
最後の正月休みに、和樹君を車で外に連れ出した。
ここ何日か30分~1時間弱の散歩で筋力も回復してきたと判断し、俺は気分転換も兼ねて水族館に連れて行った。
筋力は回復してきたし食事も以前よりは食べてくれるが、それでもまだまだだ。
精神的な回復はまだのようで、部屋でもボ-ッとして壊れたスマホをジッと見続ける時が多い。
そこで俺は生き物に触れさせようと思った。
水族館に着くと少しだけ笑った気がした。
力強く泳ぐ魚や見た事も無い魚を見て周り、和樹君も声には出さないが、ゆったりと泳ぐ魚をジッと見て居た。
いつもの無表情の顔が少し明るいと、俺には感じた。
1番興味を引いたのは、やはりイルカのショ-だった。
ずっと無言の和樹君の口から「可愛い…」と声が漏れた。
連れて来て良かった。
ゆっくりだが確実に良くなってきてると確信した。
その日の帰り道の車の中で、ずっと考えてた事を俺は提案し、和樹君に辛い選択をさせた。
どうするか?は、和樹君次第だ。
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