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第274話 守りたい⑤(海都)

今日から、正月休みも終わり会社に出勤だ。 並木がそろそろ迎えに来る。 出掛ける前に、和樹君に声を掛けておこう。 まだ寝てるか? 寝室のドアを開けると、和樹君は目を覚ましていた。 「和樹君、私は仕事に出掛けるからね。部屋の物は、何でも好きに使って良いからね。後、引越しの件は本当に良いんだね?」 「………はい」 「解った。ここには遠慮せずに、いつまでも居て良いから。取り敢えず、体の回復を先にして。それから、今後の事をゆっくり考えれば良い。じゃあ、行って来る」 「……はい」 和樹君を1人で部屋に置いて行くのは心残りだが……仕事を休む訳にはいかない。 いつまでも和樹君にべったり付き添ってるのも、社会的には無理だ。 責めて、昼休みに顔を出し夜は早めに帰ろう。 マンションの駐車場には、並木が運転席で待って居た 車の後部座席に乗り込む。 「おはようございます。今年も宜しくお願いします」 「ああ、おはよう。こちらこそ宜しく頼む」 年始の挨拶も兼ねて挨拶し、車を発進させた。 「どうですか?和樹君は?」 「ああ、以前よりは少し食べるようになったが、まだまだだな。体はいずれ回復すると思うが……精神面が心配だ。いつも壊れたスマホを握り締めて真っ暗な画面を見てるか.首元に手を当て俯いて居る」 「そうですか。まだ、そんなに日にち経ってませんからね、仕方無いですよ。その内時間が解決してくれます」 並木の言う通りだと良いんだが……。 「並木、1つ頼まれてくれないか?」 「はい、何でしょう?」 「和樹君のアパートの引越しを頼む。引越し業者の手配と不動産屋に話して欲しい」 「引越しの手配は構いませんが、不動産屋には、何と話します?それと、和樹君は了承してるのですか?」 「和樹君には話した。どちらにせよ、和樹君を1人であの部屋に帰す訳にはいかないし、和樹君には距離を置いてゆっくり体と心を治す事に専念した方が良いと言った」 「それで納得したんですか?」 「納得したか?は、解らない。もしかして、何も考えて無いのかも知れないって言うか、考えられないって事だと思う。私を信用して頷いただけかもな」 「解りました。どうであれ和樹君に話してるなら良いでしょう。それで不動産屋には?」 「そうだな。入院して長期になりそうだとでも話すかどちらにしても2月末までの契約らしいから、そんなに問題にはならないと思う」 「解りました。早速手配します」 「ん、頼む」 こうして和樹君のアパートは引き払う事にした。 必要な物は私の部屋に移動し、大きな電化製品やベットなどは処分する事にした。 客間に洋服やパソコンなどを入れておくか。 今の和樹君に彼を近づけたく無かった。 責めて、和樹君が冷静に考えられるようになり結論を出すまでは、そっとして欲しいと思った。 少し強引か?とも思うが、和樹君の為に早い決断をした。 それからは、和樹君の食欲も少しずつ戻り体は回復の兆しを見せ始めていたが、精神面の方は心の傷が深いのか?相変わらずだった。 昼休みに部屋に入って様子を見に行くと、窓際で椅子に座り胸に手を当て外をずっと眺めてたりする事が殆どだ。 胸に手を当ててたのは、彼からもらったネックレスを服越しに触ってると思うと、武史君が後に教えくれた ‘お守りにしてた’ と、後々、和樹君も話してくれた。 早く帰れる日は夜の散歩に連れ出したり、土日はドライブに行ったり、なるべく外部との接触をさせようと試みると、その時には少し笑顔を見せるようになってきた。 少しずつだが、心も回復してきてると思う。 俺は武史君に和樹君の変化や日常生活をマメにLineして居た。 武史君からもLineで、何度も彼がアパートに訪ねて来て、和樹君の事を聞いてきて困ったと、彼の行動を教えてくれた。 後悔してるんだろうな。 でも……決めるのは、和樹君だ。 それに……もう少しだけ側に居たい。 俺の本心だ! その日の帰りに、新しいスマホを買って和樹君に渡した。 俺と武史君と並木の電話番号とLineを登録しておいた たが、その新しいスマホは暫く使われる事は無かった

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